妄想日記8<<FLOWERS>>

YAMATO

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Chapter18(寛解編)

Chapter18-⑥【海の薔薇】

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あの当時は何もかもが上手く行った。
自分は区民で一番幸せな男だと、心底思っていたのだ。
寄ってくる男達はエキストラ、主役はいつも俺だった。
舞台のセンターは定位置だ。
身体を触りたい観客はお札をちらつかせた。
そいつの目の前で腰を突き出して踊れば、札がビキニに挟まる。
皆、俺の煽りに狂喜乱舞した。
鉄柱の様なペニスに触れられれば、千円等安いものだろう。
イベント自体の報酬は安い。
ゴーゴーは過激な挑発を繰り返し、札を奪い合う。
一人の客が二枚の札を翳せば、隣の客は三枚の札を突き上げる。
イベントが終わる頃には、ビキニは札で隠れていた。 
数枚の札を握り締めた客は売りの太客になってくれる。
10枚にも満たないゴーゴー達の羨望の眼差しが心地好い。
そんな20代は永遠に続くと思っていた。
 
「ねぇ、湾岸スターダストのイベント覚えている?
すげぇ盛り上がったやつ。」
「ああ…。」
あの日がピークだった。
幾重のスポットライトが俺を追う。
29歳の誕生日と重なり、俺の為のイベントと化したのだ。
「あの日さ、めちゃくちゃ盛り上がったじゃん。
それでカネチさんが隣のゴーゴーを掘ったのを、はっきり覚えてる。」
「ああ…。」
後にも先にも舞台でやったのはあの日だけだ。
何百人のバースデーソングに高揚した。
アドレナリンが出まくる。
「掘れ、掘れ、掘れ!」
観客の煽りコールに拳を突き上げてしまった。

「その掘られたゴーゴーの事は覚えてる?」
「えっ、いや、全く…。」
単に隣にいた男を掘っただけだ。
エキストラの事等、いちいち覚えていない。
だがそれを言うのは憚れた。
ケントが言った『はっきり』に違和感を覚えたのだ。
「だよね、名もないゴーゴーなんか、覚えてないよね。
ってか、最初から覚える気もないか。
だってカネチさんはスターだったもんね。」
その言い回しには、明らかに棘がある。
表面状は華やかなケントの見えない場所には棘が溢れていた。

口に押し込まれた足の圧力が増す。
押し倒され、後頭部に砂が付く。
それでも圧は止まらない。
「あうううぅ…。」
足首を握り、引き出そうと試みる。
微動だしない足の先にケントの顔が見えた。
上がった口角とは裏腹に、瞳は見開いている。
そこに狂気が垣間見えた。

勃起していたペニスは萎えていく。
『どけてくれ!』
「うぐぅぅう!」
言葉にならない。
辺りを見渡すが、ニヤニヤした男達は見ているだけだ。
「えっ、何だって?
掘ってくれって。
相変わらず傲慢だな。
おい、誰かこいつを掘ってくれないか?
淫乱な男は口だけじゃ、満足出来ないらしいぜ。」
「だったら俺が。」
「いや、俺が先だ。」
「お前の粗チンじゃ、役に立たない。
俺に任せろ。」
前に出た三人の男がぼやけて見えた。

(つづく)
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