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Chapter1(立志編)
Chapter1-⑧【BE WITH YOU】後編
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「あははっ、マジ傑作っ!」
カズユキが腹を抱えて笑う。
「馬鹿野郎!
笑い事じゃねぇんだ。
小便する度にびしょ濡れになるんだぞ。」
ナツキは煙をカズユキの顔に吹き掛ける。
「あー、副流煙が身体に一番悪いんだ。」
カズユキが吹き返してきた。
「だったら名古屋に行って、取ってもらえばいいじゃん。」
「金がねぇんだよ。」
「深夜バスなら安いんじゃないの?」
「深夜バスか…。」
考えもしなかった。
名古屋というと、新幹線以外思い付かなかったのだ。
「お前さ、縛られた事あるか?」
気が楽になると、邪な考えが頭を擡げた。
「縛りって、亀甲縛りとか?」
「ああ、そうだ。」
「流石にそれはないな。
そういうのって、ボク達の世代で出来る奴いないし。」
「縛ってやろうか?」
「えっ、出来るの?」
「ああ、大体覚えてきた。」
カズユキが黙って考え込む。
「お前の好きな格好で、縛り上げてやるよ。
但し、縄はお前が買えよ。」
ナツキはだめ押しする。
「何だ、それが目的か。
だったら、やってみようかな。
縛りにピッタリな衣装があるんだ。」
カズユキの瞳に好奇の光が点った。
「ホテルへ行ってみようか?
臨時収入があったんだ。」
ホームセンターで縄を買った後、カズユキが誘ってきた。
「別に構わんが、びた一文払わねぇぞ。」
ナツキはガードする。
「勿論、リョーマから金取ろうとは思ってないさ。
ボクって、特殊なバイトしてるから、金回りいいんだ。
何か恋人みたいだね。」
カズユキが腕を絡めてきた。
「うぜぇな。」
文句を口にするが、その手を振り解く事はない。
「お前、マスク持ってるか?」
ナツキは心の深層にずっと引っ掛かっている事を聞く。
沖縄で被った全頭マスクが忘れられないのだ。
あの窒息感を伴う快感を今一度味わいたい。
「モチ持ってるよ。
なら、用意して行くね。」
その返事に浮き足立つのが分かる。
「じゃあ、仕事終わったら、Wホテルに来て。」
カズユキは別れ際、頬にキスをした。
ナツキは瞬時の出来事に立ち尽くす。
「馬鹿野郎!こっ、こんな所で!」
怒声をあげた時にはカズユキの姿は改札口に消えていた。
「まあ、悪くはねぇか。」
ナツキは呟くと、頬を二発張る。
頭の中で縛り方を反芻した。
『支配者はたえず冷静でいろ。』
その言葉を頭に叩き込む。
忘れないつもりでいたが、欲情すると跡形もなく消え去っていた。
コックリングを装着された時、接着剤を使った事に気付かなかった。
その事が忌々しい。
「くっそ!」
忌々しい顔を思い出し、悪態を吐く。
口角だけを上げた太々しい笑い方は正に支配者だ。
プレイが試合と似ている事に思い当たる。
状況を俯瞰的に眺め、相手の先を行く。
試合でしていた事をするだけだ。
ナツキは一本より、相手に畳を叩かせる勝ちに拘った。
立ち上がれない相手を見下ろすのは爽快だ。
その為に必要なら、地味な反復練習も苦にならない。
『今は勉強中だ。
精々笑ってろ。
だが最後に笑うのは俺だ。』
(つづく)
カズユキが腹を抱えて笑う。
「馬鹿野郎!
笑い事じゃねぇんだ。
小便する度にびしょ濡れになるんだぞ。」
ナツキは煙をカズユキの顔に吹き掛ける。
「あー、副流煙が身体に一番悪いんだ。」
カズユキが吹き返してきた。
「だったら名古屋に行って、取ってもらえばいいじゃん。」
「金がねぇんだよ。」
「深夜バスなら安いんじゃないの?」
「深夜バスか…。」
考えもしなかった。
名古屋というと、新幹線以外思い付かなかったのだ。
「お前さ、縛られた事あるか?」
気が楽になると、邪な考えが頭を擡げた。
「縛りって、亀甲縛りとか?」
「ああ、そうだ。」
「流石にそれはないな。
そういうのって、ボク達の世代で出来る奴いないし。」
「縛ってやろうか?」
「えっ、出来るの?」
「ああ、大体覚えてきた。」
カズユキが黙って考え込む。
「お前の好きな格好で、縛り上げてやるよ。
但し、縄はお前が買えよ。」
ナツキはだめ押しする。
「何だ、それが目的か。
だったら、やってみようかな。
縛りにピッタリな衣装があるんだ。」
カズユキの瞳に好奇の光が点った。
「ホテルへ行ってみようか?
臨時収入があったんだ。」
ホームセンターで縄を買った後、カズユキが誘ってきた。
「別に構わんが、びた一文払わねぇぞ。」
ナツキはガードする。
「勿論、リョーマから金取ろうとは思ってないさ。
ボクって、特殊なバイトしてるから、金回りいいんだ。
何か恋人みたいだね。」
カズユキが腕を絡めてきた。
「うぜぇな。」
文句を口にするが、その手を振り解く事はない。
「お前、マスク持ってるか?」
ナツキは心の深層にずっと引っ掛かっている事を聞く。
沖縄で被った全頭マスクが忘れられないのだ。
あの窒息感を伴う快感を今一度味わいたい。
「モチ持ってるよ。
なら、用意して行くね。」
その返事に浮き足立つのが分かる。
「じゃあ、仕事終わったら、Wホテルに来て。」
カズユキは別れ際、頬にキスをした。
ナツキは瞬時の出来事に立ち尽くす。
「馬鹿野郎!こっ、こんな所で!」
怒声をあげた時にはカズユキの姿は改札口に消えていた。
「まあ、悪くはねぇか。」
ナツキは呟くと、頬を二発張る。
頭の中で縛り方を反芻した。
『支配者はたえず冷静でいろ。』
その言葉を頭に叩き込む。
忘れないつもりでいたが、欲情すると跡形もなく消え去っていた。
コックリングを装着された時、接着剤を使った事に気付かなかった。
その事が忌々しい。
「くっそ!」
忌々しい顔を思い出し、悪態を吐く。
口角だけを上げた太々しい笑い方は正に支配者だ。
プレイが試合と似ている事に思い当たる。
状況を俯瞰的に眺め、相手の先を行く。
試合でしていた事をするだけだ。
ナツキは一本より、相手に畳を叩かせる勝ちに拘った。
立ち上がれない相手を見下ろすのは爽快だ。
その為に必要なら、地味な反復練習も苦にならない。
『今は勉強中だ。
精々笑ってろ。
だが最後に笑うのは俺だ。』
(つづく)
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