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Chapter5(Pleasure&Pain編)
Chapter5-⑧【Run to You】
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「大丈夫か?」
帰り道、定まらない足元をケンゴが気遣う。
「ああ、平気…。」
タカユキは夢見心地で歩いていた。
『こんな凄い世界があるんだ。
ケンゴと一緒にいれば、いつでもこの世界に連れて行ってくれるんだ!』
沸き上がる衝動に頭がカッとなる。
殴られた腹筋が疼く。
更なる痛みを欲していた。
また足が縺れ、転びそうになる。
咄嗟にケンゴが肩を支えてくれた。
「今日はありがとな。
マジ助かったぜ。
でもお前と撮影出来て、俺も凄く嬉しんだ。」
はにかんだ顔が耳元に寄った。
吐息が耳に当たり、顔が更に赤くなる。
「礼がしたいんだ。
何でも言ってくれ。
飯かセックスか?」
大好きな顔が覗き込む。
二人の時間が止まった。
『だったら、殴ってくれないか?』
その言葉を何とか飲み込む。
旅行まで我慢しなくてはならない。
頭では理解している。
「だったら、さっきのネットのウェアを旅行に持って来て。」
悩んだ挙げ句の答だ。
それが可能な望みだった。
「それでいいのか?
寿司の食い放題でも、焼肉でもいいんだぞ。」
ケンゴがキョトンとして聞き返す。
「ああ、それでいい。
俺もケンゴに着て欲しい水着を持って行くから。」
南の島を想像し、無邪気に笑う。
「どんなエロい水着でも着てやるぞ。
あっちはゲイビーチだからな。
羞恥心なんて日本に置いて行くぜ!」
撮影が成功して、ケンゴも気分が高ぶっている様子だ。
「なら約束だよ。」
小指を立てた右手を差し出す。
「子供じみた事すんなよ。」
文句を言いながらも、小指を絡めてきた。
「指切り拳万、嘘ついたら…。」
手を大きく振る。
「嘘ついたら、どうするんだ?」
ケンゴがニヤリと笑う。
「殺す…かも。」
消え入りそうな声で言う。
そんな事は微塵も考えた事がない。
だが開いた口は勝手に答えていた。
その回答をどこに用意しておいたのか、自分でも分からない。
「詰まらん冗談、言うなよ。」
解けた手で小突かれた。
おどけたケンゴが両手を大きく振って、先を歩く。
しかしタカユキは笑えなかった。
止まっていた時間が動き出す。
「旅行楽しみだなぁ!
プライベートプール付きのコテージをリクエストしたと、ジャニが言ってたぜ。」
ケンゴは顔を合わせる度に、旅行の話を振ってきた。
「インフィニティプールかな?」
プールの先に続く水平線を想像する。
タカユキも目を輝かす。
卒業旅行で行ったプーケットのホテルはビーチ沿いの古い建物だった。
アクセスは良かったが、部屋自体は最悪だ。
部屋の隅には蟻が行列を作って行進していた。
夜になると蛙の合唱が始まり、辟易とした思い出しかない。
ノンケと行った事もあり、楽しさも半減だった。
今回はケンゴと一緒で、しかも旅費はタダだ。
弥が上にも気分は盛り上がる。
自動ドアが開き、岩佐が入って来た。
「来週のイベントの内容を決めました。
早速、衣装合わせをしましょう!
今回はボディスーツを用意します。」
珍しく機嫌よさ気に口を開いていた。
「ちょ、ちょっと、待ってください。
な、何にしたんですか?」
タカユキは一抹の不安を覚える。
岩佐の事だから、単なる記録会や飲み会ではない筈だ。
「オイルプロレス大会を行います。
オイルを吸ったスーツは凄く透けるので、会員様も喜ぶことでしょう。」
岩佐が笑いを堪えて言う。
「オイル…、プロレス!」
ケンゴが素っ頓狂な声をあげた。
(つづく)
帰り道、定まらない足元をケンゴが気遣う。
「ああ、平気…。」
タカユキは夢見心地で歩いていた。
『こんな凄い世界があるんだ。
ケンゴと一緒にいれば、いつでもこの世界に連れて行ってくれるんだ!』
沸き上がる衝動に頭がカッとなる。
殴られた腹筋が疼く。
更なる痛みを欲していた。
また足が縺れ、転びそうになる。
咄嗟にケンゴが肩を支えてくれた。
「今日はありがとな。
マジ助かったぜ。
でもお前と撮影出来て、俺も凄く嬉しんだ。」
はにかんだ顔が耳元に寄った。
吐息が耳に当たり、顔が更に赤くなる。
「礼がしたいんだ。
何でも言ってくれ。
飯かセックスか?」
大好きな顔が覗き込む。
二人の時間が止まった。
『だったら、殴ってくれないか?』
その言葉を何とか飲み込む。
旅行まで我慢しなくてはならない。
頭では理解している。
「だったら、さっきのネットのウェアを旅行に持って来て。」
悩んだ挙げ句の答だ。
それが可能な望みだった。
「それでいいのか?
寿司の食い放題でも、焼肉でもいいんだぞ。」
ケンゴがキョトンとして聞き返す。
「ああ、それでいい。
俺もケンゴに着て欲しい水着を持って行くから。」
南の島を想像し、無邪気に笑う。
「どんなエロい水着でも着てやるぞ。
あっちはゲイビーチだからな。
羞恥心なんて日本に置いて行くぜ!」
撮影が成功して、ケンゴも気分が高ぶっている様子だ。
「なら約束だよ。」
小指を立てた右手を差し出す。
「子供じみた事すんなよ。」
文句を言いながらも、小指を絡めてきた。
「指切り拳万、嘘ついたら…。」
手を大きく振る。
「嘘ついたら、どうするんだ?」
ケンゴがニヤリと笑う。
「殺す…かも。」
消え入りそうな声で言う。
そんな事は微塵も考えた事がない。
だが開いた口は勝手に答えていた。
その回答をどこに用意しておいたのか、自分でも分からない。
「詰まらん冗談、言うなよ。」
解けた手で小突かれた。
おどけたケンゴが両手を大きく振って、先を歩く。
しかしタカユキは笑えなかった。
止まっていた時間が動き出す。
「旅行楽しみだなぁ!
プライベートプール付きのコテージをリクエストしたと、ジャニが言ってたぜ。」
ケンゴは顔を合わせる度に、旅行の話を振ってきた。
「インフィニティプールかな?」
プールの先に続く水平線を想像する。
タカユキも目を輝かす。
卒業旅行で行ったプーケットのホテルはビーチ沿いの古い建物だった。
アクセスは良かったが、部屋自体は最悪だ。
部屋の隅には蟻が行列を作って行進していた。
夜になると蛙の合唱が始まり、辟易とした思い出しかない。
ノンケと行った事もあり、楽しさも半減だった。
今回はケンゴと一緒で、しかも旅費はタダだ。
弥が上にも気分は盛り上がる。
自動ドアが開き、岩佐が入って来た。
「来週のイベントの内容を決めました。
早速、衣装合わせをしましょう!
今回はボディスーツを用意します。」
珍しく機嫌よさ気に口を開いていた。
「ちょ、ちょっと、待ってください。
な、何にしたんですか?」
タカユキは一抹の不安を覚える。
岩佐の事だから、単なる記録会や飲み会ではない筈だ。
「オイルプロレス大会を行います。
オイルを吸ったスーツは凄く透けるので、会員様も喜ぶことでしょう。」
岩佐が笑いを堪えて言う。
「オイル…、プロレス!」
ケンゴが素っ頓狂な声をあげた。
(つづく)
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