妄想日記3<<RISING>>

YAMATO

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Chapter6(Ko Samui編)

Chapter6-②【レモネードの夏】

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ビーチハウス前でカートを降りる。
建物の脇を通り抜けると、エメラルドグリーンの海が広がっていた。
「うわぁ!タイに来たって実感すんな!」
ケンゴが伸びをする。
タカユキも海の青さに目を奪われた。
空いているデッキチェアーに腰を下ろす。
レモンの浮かんだ水を運んで来たスタッフが、チェアーにビーチタオルを敷いてくれ
た。
「冷てぇ!早く脱げよ。」
ケンゴはグラスの水を一気に飲み干す。
ランニングパンツに手を掛けるが、二の足を踏む。
まだスタッフが隣にいたからだ。
「早くしろよ!」
苛立ち気味な怒鳴り声に瞳をギュッと閉じる。
覚悟を決め、一気にパンツを下ろす。
波の音以外、何も聞こえない。
恐る恐る薄目を開けてみる。
日光の下、最小限のポーチは中が透けていた。
慌てて、背中を向ける。
オレンジ色の紐が尻の割れ目に食い込む。
手を止めたスタッフの視線が尻に突き刺さる。
「さあ、折角敷いてくれたんだ。
横になって焼くぞ。」
ケンゴはタンクトップを脱ぐと、素早く仰向けになった。
スタッフの視線を無視して、横たわる。
持ち上げられた小さなポーチの隙間からコックリングが覗く。
スタッフの唾を飲み込む音が、やけに大きく聞こえた。
隣でケンゴが日焼けオイルを塗りだす。
何かを隠しているという考えは、どうも勘ぐり過ぎた様だ。
悩んだ挙げ句、日焼け止めを手にする。
熱を持った肌は悲鳴をあげていた。
「何だよ、日焼け止めか!
根性ねぇな!」
ケンゴはサイドが紐ながらも尻を覆い隠すビキニを穿いている。
オイルでテカテカに光った大胸筋に陽射しが反射した。
溢れる太陽に目が眩んだ。
勃起したマラは一向に収まる気配がない。
隣を盗み見るが、軽く鼾を掻いていた。
風はなく、陽射しが容赦なく照り付ける。
日焼けを通り越して、火傷にならなければいいがと懸念した。
 
影が顔で止まった。
視線を上げると、スタッフがトレイを差し出す。
上にはメロンが乗っていた。
それを受け取ると、スタッフはウインクをして去って行く。
口に入れた冷たいメロンが、清涼感を与えてくれる。
「何でお前だけメロン食ってんだよ!」
寝ていると思っていた汗だくの顔が睨んでいた。
「半分あげるよ。」
苦笑しながら皿を渡す。
「美味いな!あれに乗ってみないか?」
指差す先にカヌーがあった。
「いいよ。スタッフに言ってくる。」
立ち上がり、ランニングパンツを手にする。
「んなもん穿くな。
そのまんまの格好で行け。」
ケンゴは最後の一切れを口に放り込んだ。
 
仕方なく、Tバックのままビーチハウスへ向かう。
降り注ぐ陽光で肌がジリジリ焼けているのが分かる。
ポーチの中でケンゴに貰ったリングが輝く。
前方から金髪の親子が歩いて来た。
5歳位のビキニの女の子はタカユキに興味津々だ。
母親と手を繋ぎ、じっと前を見たまま近付いて来る。
母親も歩いてくる男の異様な格好に気付いた様子だ。
女の子を抱き上げると、視線を後方へ向けさせた。
足早な親子とすれ違う。
「Hello!」
小声で挨拶するのがやっとだった。
 
「Excuse me.」
カウンターにいたスタッフに声を掛ける。
先程のスタッフが顔を上げ、微笑みを浮かべた。
「日本人デスカ?」
日本語で聞いてきた。
「ええ。日本語を話せるんですか?」
安心したタカユキも安堵の笑みを浮かべる。
英語を話す時はどうしても緊張してしまう。
「ハイ。日本ノ学校デ勉強シマシタ。
私ハ、ノイ、デス。」
スタッフが手を差し出す。
「ノイさんですね。
私はタカユキです。
タ、カ、ユ、キ。」
握られた手から大きな安心感を得た。
 
 
(つづく)
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