決闘で死んだ俺が凶悪なロリ令嬢として転生してしまったので、二度と負けないために最強を目指して妖魔との戦いに身を投じることにした

呉万層

文字の大きさ
18 / 42

18:対決

しおりを挟む
 前に出てきたのは、黒髪をおかっぱ風にした、美人だが顔に余裕のない表情を浮かべた護衛女だった。



 偏った思想に染まった女教師を思わせる表情から、こいつは嫌な奴に違いないと、ミオは決めつけた。



 軍刀の柄を握る護衛女の声は、自然、硬質なものとなる。



「ミオ・オスロン。栄えある魔法学校の校長にして侯爵であるオスカ・ノ・グリンヒル閣下に下種な軽口。処分は覚悟の上だろうな」



 護衛女は、わざわざ校長の本名を教えてくれたが、ミオに感謝の気持ちは湧かなかった。



「意味が分からないな。俺は魔法学校への入校を志望するか否かを問われ、志望していないので志望していなと答えた。それだけだ。それに処分というが、何をするつもりだ。入校前に停学なり退学なりにするつもりか? だとするなら、貴校は中々独創的な制度を設けているようだな」



 ミオから反論されるや、護衛女はさらに噛みついてくる。



「っ……き、貴様は、校長に向かって頭を下げろと言った! 無礼ではないか!」



「俺は入学したくて来たのではない。入学して欲しいと言われたからきてやったのだ。御足労というやつだ。そちらが希望し、俺は希望していない。なら頭の一つも下げるのが礼儀というものだろう。違うか?」



 ミオの度重なる反撃に怯みつつ、護衛女は食い下がる。



「女性なのに、俺などというな!」



「俺の家族でもないし、恐らく教師でもない者が、差し出口を挟むな。傲慢だぞ」



「子供のくせに、減らず口を」



 護衛女の放つ怒気と殺気が増していく。そろそろか。ミオは、腰のステッキに手を伸ばし、傲然と言い放つ。



「先に抜け。遠慮はいらん」



「舐めるな!」



 ミオがステッキを握るのと、護衛の女が軍刀を放ったのは、同時だった。



 勝負は、一瞬でついた。



 ステッキと軍刀が交差するや、軍刀だけが宙を舞っていた。



 相手の斬撃を、自身の得物を用いていなす動作は、ミオの得意技だ。


 
 なにせ、ミオの前世では、何千回と反復した技だ。
 それも、様々な相手の、多種多様な武器に対してだ。
 加えて、実戦形式の試合や、野試合での経験もあった。



 護衛女は、恐らく実戦経験に乏しい。鋭くも綺麗な動作から、ミオには読み取れた。
 しかし、鍛錬を積んでいても、フィジカルで優っていても、真っ正直な攻撃では、ミオの敵ではなかった。




 ミオを、小娘未満の少女と侮った護衛女はたじろいだ。



 護衛女は、痛めた手首をつかみ、歯噛みしたまま目を剥いた。



「ぐぬぬ」



「勝負アリだ」



 油断なく目の端で他者を警戒しつつ、ミオは勝ち誇った。



 護衛男と執事とメイドたちが、得物を手にしたまま校長を見やる。



 校長が片手を振ると、ミオ以外は得物を降ろした。



「オスロン家の女だけはある。子どもとは言え、ただの嬢ちゃんではないようだな」



「とうぜんだ」



 校長は、手元に視線を移す。書類に目を通しているようだ。



「十二歳、しかも魔法学校入学前に、家伝の者とはいえ魔法のステッキを使いこなすとはな。ワシの護衛を退けるのに、毒や神経に作用する魔法は使わなかったな。オスロン家の者が、戦いの常道にこだわるとは思えぬ。何を企んでおる」



 校長の表情を厳しく、護衛男や執事、メイドたちの顔は、さらに険しかった。



 どうやら、オスロン家の評判は、芳しくないようだ。



 ミオは、気にせずに解説してやる。



「毒も魔法も、使う必要がなかったからだ。この女のようなイノシシ相手なら、間合いの把握しやすからな。歩法だけでどうとでもなる」



「くっ、小娘のくせに」



 回収した軍刀の柄に手をかけた護衛女が、再びミオに向きなおってきた。



 それほど年が離れているわけでもないだろうに。小娘扱いが不満なミオは、挑戦を受けて立つべく、護衛女へ向け人差し指を手前に動かす。かかってこいの合図だ。



「もう油断しない。今度こそ痛い目に合わせてやる!」



 軍刀の刃を床と水平にして、護衛女は腰を落とした。



 獲物を前にした、ネコ科の動物を思わせる、しなやかな姿勢をとっていた。



 今度こその言葉に、偽りはなさそうだ。



 早くも再戦かと思われたが――



「下がれ」



 直後に校長の叱責が飛んだ。



 護衛女は、失態を犯した秘密結社の幹部のように、食い下がった。



「しかし校長、このままでは教師や職員が舐められてしまいます。次は油断はいたしません。わたくしめに、もう一度機会を!」



「「愚かな」」



 ミオと校長の声が、重なった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...