異世界ぎきょうだい不仁義~異世界にダークエルフとして転生したら、再会した弟分がハイエルフの令嬢になっていた~

呉万層

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17 後手からの一撃

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 カタリンへの反撃を決意したが、なにか機会がなけれ、ば数の暴力で押し切られてしまう。今の流れを切るきっかけが欲しいところだ。


 何かないかと、政信は眼だけを動かして、周囲を探る。すると、枯れた噴水の近くで立ち尽くす影が目についた。
影は、黒いオーラをまとっていなかった。


 深くかぶった黒いフードから、褐色の肌と黒髪がのぞいている。ダークエルフの悪霊らしい。同胞ながら、ダークエルフは罪人の種族だ。信用の置けない者は多い。話に巻き込んでしまっていいのだろうか? ヤブ蛇になったらバカバカしい。

 いや、ためらう時間は過ぎた。
 どうせこれ以上流れが悪くはならないだろう。政信は、ダークエルフの悪霊に声をかけた。


「よう、あんたはどう思う。同胞の意見も聞きたいんだ」


「あら、私に言っているの?」


 ダークエルフの悪霊が顔を上げると、フードが取れて褐色の顔が現れた。


 肩までの黒髪、険のある切れ長の目と両端の吊り上がった口が露わになった。


 ダークエルフな上に悪霊とあって、陰はあるし意地の悪そうな顔をしているが、顔は美しく肢体は豊満としか言いようがなかった。


 美女の顔を正面から見た政信は、思わず絶句してしまう。


「……」


「答えてくださらない?」


「ああそうだ。アンタに尋ねてるんだ。俺ってそんなに悪いか?」


「そうね。悪いというよりも、極悪、ね」


 声をかけたのは、失敗だったか? いや、結論を出すにはまだ早い。


「どの辺りが」


「女の子を、泣かせ過ぎだからよ」


「あいつは、泣いてないぞ」


 政信に指を突き受けられると、カタリンは鬱陶しい表情を消して、顔を俯かせた。


「……泣くと、もっと酷いことをされてしまいますの」


 カタリンは、極めて効果的なウソをついた。


 肺がなかったり、機能していなかったりしているはずの悪霊たちから、ため息が漏れた。


 ムーナと、死者であるはずの悪霊たちのため息には、生者の世に必ずある暗い部分を嘆くような重さがあった。


 強い感情を伴った視線が政信に集まり、カタリンの顔に、再び邪悪で淫靡な笑みが浮かぶ。政信にだけ見えるようにする口パクは、しょうぶあったすねと、読めた。


 余計な手を打ってしまったのだろうか。政信の焦りが募る中、ダークエルフの悪霊は発言を続ける。


「それに、その子。可愛いハイエルフの娘は三回、妊娠と堕胎をさせられているようね。もちろんその男に」


「なんですのそれ!」


 政信も、カタリン同様抗議の叫びを出しかけたが、何とかこらえた。


 ひっかきまわせるなら、望むところだ。


「死ぬのも悪くないんだな」


「ええ、こんな恐ろしい現世に生きなくて、済むのだものね」


 周囲が、より強い感情を示す声で満たされる中、政信は冷静だった。
 反撃に転じるなら今だと、理解していた。
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