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愛の薔薇とピンクのラブレター
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前回は王太子コクトーの父であるミモザ殿下の機転でマックスは第2王子リデルという執拗に付きまとうストーカーを回避できたが、これで終わるほどリデル王子は甘くないことは重々承知している。
「手紙の数が今までの2倍になりました。しかも内容が更にヤバい」
律儀に大量の自分宛の恋文に目を通しているマックスのとなりで王太子コクトーも手紙をチェックしていた。弟王子リデルがあまりにもマックスをドン引かせる恋文を書き送っていたら王太子として、リデルの兄として、母ダイアナや父ミモザに報告する必要性があるからだ。
「コクトーだって王太子として勉強とかあるのに弟王子がストーカー気質なせいで大変だな」
マックスとコクトーが黙々と手紙を読んでいるそばでモモとチェスをしていたナナが同情したように声を掛けると、コクトーは手紙からナナに視線を移して苦笑いした。
「マックスはモモの大切な弟分だからね。モモの弟分に精神的負担は掛けられないよ」
コクトーはそう告げて微笑むと、弟リデルの手紙の内容のほんの抜粋を読んで聞かせてくれる。
「私の愛おしいマックス。いま私は宮殿の居室を出て東宮に向かってます。待っていてください」
初っ端から雲行きが怪しい内容の手紙をコクトーが読み終えると、次にマックスが2通目の手紙を声に出して読み始めた。
「私の愛おしいマックス。いま宮殿を出たので供を連れずに東宮へ続く庭園を歩いています。庭園の薔薇を早く君に贈りたい」
この後の手紙の展開を容易に想像できたナナは背筋がゾゾッとして、チェスをする手を止めたが、手紙を読んでいないハズのモモが続きというより、恐れている展開のネタバレをしてくれた。
「たまらなく愛おしいマックス。いま東宮が見えてきました。君に母上が大切にしている薔薇を1輪贈ります。東宮の門前に恋文と一緒に添えるので出てきてください。君の愛のしもべである王子リデルより」
もう恋文というよりは立派な怪文書である第2王子リデルが記したマックス宛の恋文のオチをスラスラと語ったモモは息を吐くとチェスの駒をいじりながら言ったのだ。
「リデル王子が勝手に取ってきた庭園の薔薇は女王陛下がミモザ殿下に贈るための薔薇だから王太子のコクトーでも切るのは禁止だ。こりゃ女王陛下が怒るぞ?」
女王陛下が夫君であるミモザ殿下に贈るための薔薇で、何人たりとも取ってはダメな禁断の薔薇を普通にマックスに贈ると記したリデル王子はガチのストーカーであり恐いもの知らずである。
「ホラー展開な恋文は怖いが、所詮はマックスへの恋心アピールな手紙だろ? 第2王子ともあろうヤツが母王の大切な薔薇を窃盗はしないよな?」
14歳の少年が歳上の想い人に対して背伸びして書いただけと信じたかったナナだが、そんな希望を打ち砕くように部屋に従者が静かに入ってきた。
「失礼いたします。門兵より東宮の門前に不審物が……。いえ、大輪の薔薇とピンク色の封筒に入った手紙が発見されたと聞かされ、お持ちしました。マックス様宛でございます」
愕然とするナナを他所に、従者は大輪の薔薇とピンク色に染められた封筒をマックスに手渡すと一礼して出ていってしまう。薔薇は美しい深紅で、芳しい香りが室内に漂ったが、ピンクのラブレターには青いインクで、「愛しいマックスへ」とバッチリ宛名が記載されている。
「ヤバイだろ? 女王陛下の大切な薔薇を第2王子が本当にパクってピンクのラブレターと一緒に贈るって」
夫君のミモザ殿下にだけ贈るための女王陛下の薔薇を贈られたマックスは表情を変えずに静かに立ち上がり、薔薇は花瓶にいけたが、ピンクのラブレターは躊躇なく暖炉で燃やした。
「コクトー、女王陛下とミモザ殿下に至急手紙を書け。庭園の薔薇とピンクのラブレターの件を」
モモが命じると王太子コクトーは素直に頷いて部屋を出ていったのである。
「ナナ、この事は他言無用。とは言っても東宮で働いてるヤツは全員、リデル王子の奇行を知っててスルーしてるけどな」
モモに釘を刺されたナナだったが、弟王子の不始末のせいで両親に手紙を書く羽目になった王太子コクトーが気の毒であり、毎度こんな奇行をするリデルを非難しないコクトーのことを改めて、偉いと見直した。
そして、ピンクのラブレターを躊躇いもなく燃やしたマックスの表情に感情が抜け落ちていて、ある意味、リデル王子のピンクのラブレター以上に、マックスの静かな怒りがナナには恐かったという。
女王ダイアナの大切な薔薇は、モモがミモザ殿下にこっそり返却して薔薇窃盗事件は内々のうち処理されたが、ミモザ殿下としては薔薇よりも自分の息子がラブレターをピンクに染めていることの方が深刻だと感じていた。
【続く】
「手紙の数が今までの2倍になりました。しかも内容が更にヤバい」
律儀に大量の自分宛の恋文に目を通しているマックスのとなりで王太子コクトーも手紙をチェックしていた。弟王子リデルがあまりにもマックスをドン引かせる恋文を書き送っていたら王太子として、リデルの兄として、母ダイアナや父ミモザに報告する必要性があるからだ。
「コクトーだって王太子として勉強とかあるのに弟王子がストーカー気質なせいで大変だな」
マックスとコクトーが黙々と手紙を読んでいるそばでモモとチェスをしていたナナが同情したように声を掛けると、コクトーは手紙からナナに視線を移して苦笑いした。
「マックスはモモの大切な弟分だからね。モモの弟分に精神的負担は掛けられないよ」
コクトーはそう告げて微笑むと、弟リデルの手紙の内容のほんの抜粋を読んで聞かせてくれる。
「私の愛おしいマックス。いま私は宮殿の居室を出て東宮に向かってます。待っていてください」
初っ端から雲行きが怪しい内容の手紙をコクトーが読み終えると、次にマックスが2通目の手紙を声に出して読み始めた。
「私の愛おしいマックス。いま宮殿を出たので供を連れずに東宮へ続く庭園を歩いています。庭園の薔薇を早く君に贈りたい」
この後の手紙の展開を容易に想像できたナナは背筋がゾゾッとして、チェスをする手を止めたが、手紙を読んでいないハズのモモが続きというより、恐れている展開のネタバレをしてくれた。
「たまらなく愛おしいマックス。いま東宮が見えてきました。君に母上が大切にしている薔薇を1輪贈ります。東宮の門前に恋文と一緒に添えるので出てきてください。君の愛のしもべである王子リデルより」
もう恋文というよりは立派な怪文書である第2王子リデルが記したマックス宛の恋文のオチをスラスラと語ったモモは息を吐くとチェスの駒をいじりながら言ったのだ。
「リデル王子が勝手に取ってきた庭園の薔薇は女王陛下がミモザ殿下に贈るための薔薇だから王太子のコクトーでも切るのは禁止だ。こりゃ女王陛下が怒るぞ?」
女王陛下が夫君であるミモザ殿下に贈るための薔薇で、何人たりとも取ってはダメな禁断の薔薇を普通にマックスに贈ると記したリデル王子はガチのストーカーであり恐いもの知らずである。
「ホラー展開な恋文は怖いが、所詮はマックスへの恋心アピールな手紙だろ? 第2王子ともあろうヤツが母王の大切な薔薇を窃盗はしないよな?」
14歳の少年が歳上の想い人に対して背伸びして書いただけと信じたかったナナだが、そんな希望を打ち砕くように部屋に従者が静かに入ってきた。
「失礼いたします。門兵より東宮の門前に不審物が……。いえ、大輪の薔薇とピンク色の封筒に入った手紙が発見されたと聞かされ、お持ちしました。マックス様宛でございます」
愕然とするナナを他所に、従者は大輪の薔薇とピンク色に染められた封筒をマックスに手渡すと一礼して出ていってしまう。薔薇は美しい深紅で、芳しい香りが室内に漂ったが、ピンクのラブレターには青いインクで、「愛しいマックスへ」とバッチリ宛名が記載されている。
「ヤバイだろ? 女王陛下の大切な薔薇を第2王子が本当にパクってピンクのラブレターと一緒に贈るって」
夫君のミモザ殿下にだけ贈るための女王陛下の薔薇を贈られたマックスは表情を変えずに静かに立ち上がり、薔薇は花瓶にいけたが、ピンクのラブレターは躊躇なく暖炉で燃やした。
「コクトー、女王陛下とミモザ殿下に至急手紙を書け。庭園の薔薇とピンクのラブレターの件を」
モモが命じると王太子コクトーは素直に頷いて部屋を出ていったのである。
「ナナ、この事は他言無用。とは言っても東宮で働いてるヤツは全員、リデル王子の奇行を知っててスルーしてるけどな」
モモに釘を刺されたナナだったが、弟王子の不始末のせいで両親に手紙を書く羽目になった王太子コクトーが気の毒であり、毎度こんな奇行をするリデルを非難しないコクトーのことを改めて、偉いと見直した。
そして、ピンクのラブレターを躊躇いもなく燃やしたマックスの表情に感情が抜け落ちていて、ある意味、リデル王子のピンクのラブレター以上に、マックスの静かな怒りがナナには恐かったという。
女王ダイアナの大切な薔薇は、モモがミモザ殿下にこっそり返却して薔薇窃盗事件は内々のうち処理されたが、ミモザ殿下としては薔薇よりも自分の息子がラブレターをピンクに染めていることの方が深刻だと感じていた。
【続く】
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