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女王陛下と王婿の寝室
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王太子コクトーのいらんひと言がキッカケで、王太子妃であるナナが傷ついて、男の子同士の夫婦仲に亀裂が生じそうであったが、コクトーの弟で第2王子であるリデル・ミケロットの仲裁が功を奏した。
そして、なによりコクトーがナナを花嫁として大切に想っている旨を勇気を出してナナに告白したことでコクトーとナナの絆は以前より深まったのである。
「雨降って地固まる、とはよく云ったものですね? 姉上」
王太子コクトーと妃殿下ナナは、仲睦まじく東宮で暮らしているとの報告をうけ、コクトーの父であるミモザ殿下は優しい笑みを湛え、妻である女王ダイアナに話し掛けた。
「コクトーとナナには秘密ですが、ナナは重要な外交カードです。こんな程度で2人の仲が破綻されたら困りますから。姉上もそうお思いでしょう?」
ミモザ殿下が少し悪戯っぽく声を潜めると、女王ダイアナは唇を少し尖らせた。
「もう! ミモザは夫婦みずいらずの時も仕事のお話ばかりして! 王婿なら多忙な女王陛下を癒すような話題をしてちょうだい?」
女王ダイアナと王婿ミモザ殿下は、父方の従姉弟という関係であり、幼い時分から姉弟のように育った仲である。お互いに国家運営をする上でのパートナーという関係性でもあるが、子供を結婚して、約15年で6人も成していることから分かるように、単なる政略結婚を越えた夫婦の絆でもかたく結ばれていた。
ダイアナ女王陛下は、2歳下の王婿ミモザ殿下を心から愛しており、女王の特権として浮気や愛人を持つことも可能だが、他の男なんて見向きもせず、伴侶であるミモザを大切にしている。そんな愛する夫君との貴重な夫婦の時間にまで仕事な話題をされたら妻として拗ねたくもなる。
「ミモザ、わたくしは、まだ32歳よ? 貴方との子を、あと2人くらい欲しいわ。作ってちょうだい」
「おそれながら姉上、クッキーを焼いてくれの如く、夫婦の営みを要求するのは如何かと? 僕は孕ませるだけですが、妊娠出産は姉上の御体に相当な負担をお掛けします。過度な出産は健康を損ねますゆえ」
自分のことは度外視して、本気で女王陛下であるダイアナの身体を心配しているミモザの真剣な表情がたまらず愛しくてダイアナは微笑みながら、この可愛らしい王婿に抱きつき、唇にキスをした。
「相変わらず、ミモザは理屈っぽいわね。貴方のそういうところが好きだけれど、少しは妻の気持ちをお考えになって? わたくしはミモザと寝たいの。ここ数日、忙しくて同じベッドで寝ていないわ」
「申し訳ございません。そういう意味でしたか。僕もリデルがラブレターをピンクに染めたのが心配でしたのと、コクトーがナナを怒らせたり、ファナに初潮がきたと告げられたり、モニエ&ルクレールから子供の作り方を訊かれたり、リラに絵本100冊読み聞かせをしたり、色々とありまして」
子供6人の養育の責任者はミモザなので、ミモザの生活の殆どは、我が子に関することに忙殺されている。王太子コクトーの花嫁となったナナも事実上はミモザの子とカウントされているので、6人が7人に増え、ミモザはその子供たち全員に気を配る義務と必要性があるのだ。
単なるイクメンという次元を越えた、マルチタスク・アラサーイクメンの面目躍如である。女王陛下のように、我が子より国家と国民の安泰を優先せねばならぬ為政者からすれば、ミモザほど優れた王婿はいない。
ダイアナは王位継承前の王女だった頃から、そんなミモザを見込んで、自らの伴侶になるよう指名したのだが、実際に結婚してみると気持ちは変化してくる。
「なんだか、子供たちにミモザを取られたようで複雑だわ。ファナったら初潮をミモザに告げるなんて! 普通はお母様である、わたくしに報告するものではないの?」
「姉上はお忙しいので仕方ありません。ファナの体調管理と周辺警護は徹底しますのでご安心を」
チャラい貴族に手を出されぬよう、厳重警戒すると語るミモザは可愛い娘の身を心配する父親の顔になっている。ダイアナとしてはミモザが分け隔てなく6人の子を愛してくれて嬉しいが、「わたくしのことも少しは構いなさいよ」、と矛盾した想いが心によぎる。
「ミモザ! 子供たちのお話はもういいから。わたくしのことも相手してくださらない?」
「承知しました。愛おしいダイアナ姉上……」
こんな調子で、女王ダイアナと王婿ミモザは同じベッドで夫婦として営み、夜は更けていく。ダイアナを抱きながら眠るミモザの寝顔を眺めながら、ダイアナは、この少し歳下の夫の寝顔にキスをして呟いた。
「わたくしだって同じよ。愛しているわミモザ」
妊娠はしたいが、ミモザを心配させるし、子が産まれたら、新しい我が子にミモザを取られると察知したダイアナは、愛する夫をこれ以上、我が子に独占されるのを防ぐため、こう結論付けた。
「妥協してあと1人くらい子が欲しいけれど、ナナがいるからそれでよしとしましょう」
ミモザを抱きしめて再び眠ろうとした女王ダイアナは、愛する夫の濃い金髪を撫でながら、ミモザに容姿だけはよく似たコクトーが果たしてナナとこのようにベッドで夫婦として愛する日が来るのかと案じたが、引きこもり王子だと宮廷で揶揄されてきたミモザが、こうして6人もダイアナに子を孕ます立派な王婿となったのだからきっと大丈夫だろうと楽観視することとした。
「そういえば……。モニエ&ルクレールから子供の作り方を質問されて、ミモザはなんて答えたのかしら? 起きたら1番に訊いておかないと」
9歳でそれを父親に訊けてしまう双子王子のモニエ&ルクレールもやはりミモザの息子だけあり、ただ者ではない。
女王ダイアナは、立派に王婿の務めを果たしているミモザ殿下を頼りにしているが、それ以上に、かけがえのない伴侶として心底いっとうミモザを愛しているのである。
【続く】
そして、なによりコクトーがナナを花嫁として大切に想っている旨を勇気を出してナナに告白したことでコクトーとナナの絆は以前より深まったのである。
「雨降って地固まる、とはよく云ったものですね? 姉上」
王太子コクトーと妃殿下ナナは、仲睦まじく東宮で暮らしているとの報告をうけ、コクトーの父であるミモザ殿下は優しい笑みを湛え、妻である女王ダイアナに話し掛けた。
「コクトーとナナには秘密ですが、ナナは重要な外交カードです。こんな程度で2人の仲が破綻されたら困りますから。姉上もそうお思いでしょう?」
ミモザ殿下が少し悪戯っぽく声を潜めると、女王ダイアナは唇を少し尖らせた。
「もう! ミモザは夫婦みずいらずの時も仕事のお話ばかりして! 王婿なら多忙な女王陛下を癒すような話題をしてちょうだい?」
女王ダイアナと王婿ミモザ殿下は、父方の従姉弟という関係であり、幼い時分から姉弟のように育った仲である。お互いに国家運営をする上でのパートナーという関係性でもあるが、子供を結婚して、約15年で6人も成していることから分かるように、単なる政略結婚を越えた夫婦の絆でもかたく結ばれていた。
ダイアナ女王陛下は、2歳下の王婿ミモザ殿下を心から愛しており、女王の特権として浮気や愛人を持つことも可能だが、他の男なんて見向きもせず、伴侶であるミモザを大切にしている。そんな愛する夫君との貴重な夫婦の時間にまで仕事な話題をされたら妻として拗ねたくもなる。
「ミモザ、わたくしは、まだ32歳よ? 貴方との子を、あと2人くらい欲しいわ。作ってちょうだい」
「おそれながら姉上、クッキーを焼いてくれの如く、夫婦の営みを要求するのは如何かと? 僕は孕ませるだけですが、妊娠出産は姉上の御体に相当な負担をお掛けします。過度な出産は健康を損ねますゆえ」
自分のことは度外視して、本気で女王陛下であるダイアナの身体を心配しているミモザの真剣な表情がたまらず愛しくてダイアナは微笑みながら、この可愛らしい王婿に抱きつき、唇にキスをした。
「相変わらず、ミモザは理屈っぽいわね。貴方のそういうところが好きだけれど、少しは妻の気持ちをお考えになって? わたくしはミモザと寝たいの。ここ数日、忙しくて同じベッドで寝ていないわ」
「申し訳ございません。そういう意味でしたか。僕もリデルがラブレターをピンクに染めたのが心配でしたのと、コクトーがナナを怒らせたり、ファナに初潮がきたと告げられたり、モニエ&ルクレールから子供の作り方を訊かれたり、リラに絵本100冊読み聞かせをしたり、色々とありまして」
子供6人の養育の責任者はミモザなので、ミモザの生活の殆どは、我が子に関することに忙殺されている。王太子コクトーの花嫁となったナナも事実上はミモザの子とカウントされているので、6人が7人に増え、ミモザはその子供たち全員に気を配る義務と必要性があるのだ。
単なるイクメンという次元を越えた、マルチタスク・アラサーイクメンの面目躍如である。女王陛下のように、我が子より国家と国民の安泰を優先せねばならぬ為政者からすれば、ミモザほど優れた王婿はいない。
ダイアナは王位継承前の王女だった頃から、そんなミモザを見込んで、自らの伴侶になるよう指名したのだが、実際に結婚してみると気持ちは変化してくる。
「なんだか、子供たちにミモザを取られたようで複雑だわ。ファナったら初潮をミモザに告げるなんて! 普通はお母様である、わたくしに報告するものではないの?」
「姉上はお忙しいので仕方ありません。ファナの体調管理と周辺警護は徹底しますのでご安心を」
チャラい貴族に手を出されぬよう、厳重警戒すると語るミモザは可愛い娘の身を心配する父親の顔になっている。ダイアナとしてはミモザが分け隔てなく6人の子を愛してくれて嬉しいが、「わたくしのことも少しは構いなさいよ」、と矛盾した想いが心によぎる。
「ミモザ! 子供たちのお話はもういいから。わたくしのことも相手してくださらない?」
「承知しました。愛おしいダイアナ姉上……」
こんな調子で、女王ダイアナと王婿ミモザは同じベッドで夫婦として営み、夜は更けていく。ダイアナを抱きながら眠るミモザの寝顔を眺めながら、ダイアナは、この少し歳下の夫の寝顔にキスをして呟いた。
「わたくしだって同じよ。愛しているわミモザ」
妊娠はしたいが、ミモザを心配させるし、子が産まれたら、新しい我が子にミモザを取られると察知したダイアナは、愛する夫をこれ以上、我が子に独占されるのを防ぐため、こう結論付けた。
「妥協してあと1人くらい子が欲しいけれど、ナナがいるからそれでよしとしましょう」
ミモザを抱きしめて再び眠ろうとした女王ダイアナは、愛する夫の濃い金髪を撫でながら、ミモザに容姿だけはよく似たコクトーが果たしてナナとこのようにベッドで夫婦として愛する日が来るのかと案じたが、引きこもり王子だと宮廷で揶揄されてきたミモザが、こうして6人もダイアナに子を孕ます立派な王婿となったのだからきっと大丈夫だろうと楽観視することとした。
「そういえば……。モニエ&ルクレールから子供の作り方を質問されて、ミモザはなんて答えたのかしら? 起きたら1番に訊いておかないと」
9歳でそれを父親に訊けてしまう双子王子のモニエ&ルクレールもやはりミモザの息子だけあり、ただ者ではない。
女王ダイアナは、立派に王婿の務めを果たしているミモザ殿下を頼りにしているが、それ以上に、かけがえのない伴侶として心底いっとうミモザを愛しているのである。
【続く】
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