ヘタレ王太子と人質花嫁

寿里~kotori ~

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元美少年トリオとモモの苦労

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 王太子コクトーと妃殿下ナナが新婚生活をおくる東宮に客人がやって来た。

 コクトーの教育係であるモモの弟分であり、マックスの幼馴染みでもあるステフとヒナリザである。

「一介の官吏の身分の僕が東宮なんて畏れ多いです」

 ヒナリザはモモと同い年で王宮の高官だが、とても控えめでおとなしい。王太子夫妻が住まう東の宮殿――――東宮に私的な用事で自分が罷り越すなんて身のほど知らずだと遠慮したが、他でもない東宮の主人である王太子コクトーがヒナリザの来訪を歓迎した。

「ステフなんて頻繁に東宮にサボりに来ているから今更だよ」

 モモの大切な弟分で、護衛をしてくれているマックスの幼馴染みならば歓迎すると王太子妃であるナナも賛成した。

 そんな訳でコクトーとナナが新婚生活をおくる東宮に2人の客人が来訪したのである。

「ヒナリザ・ケリー・シルバーと申します。えっと、あの……! 平凡なイチ官吏である僕を東宮に招いてくださり。きょ、きょ、きょ! も、も、申し訳ございません!」

 おそらくは、恐悦至極と伝えたいらしいヒナリザが緊張のあまりモジモジしているので、ナナは思わず心でツッコミを入れた。

(コイツ、こんな調子でよく出世できたな!? 控えめとか以前に緊張し過ぎだろ!)

 やはり名門大貴族シルバー家の縁者という後ろ楯が大きいのかとナナは思っていたが、コクトーは優しくヒナリザに声を掛ける。

「いつも王室の財務を管理してくれてありがとう。ヒナリザが発案した「王室経費を不正に使用した者に対して罰則を課す」制度を導入したお陰で、経費の不正使用がパタッと無くなったって、母上……女王陛下もとても感謝しているよ」
 
 ヒナリザは控えめだが、仕事は相当に出きるらしいとナナは驚愕したが、その前に、コクトーが王太子として、王宮と国家の運営をキチンと学んで完璧に把握していることに驚かされた。

 王太子なので当然なのだが、ヘタレなようでモモの厳しい教育が完璧に行き届いている。

「コクトー。ヒナリザが考えた罰則ってなんだ? 王室の経費を不正に使えば厳罰なのはわかるが?」

 我が身の不勉強さを恥ながらナナが問いかけると、コクトーの代わりにモモが答えてくれた。

「ヒナリザが発案した王室経費不正使用の罰則はシンプルだ。罰則は、マックスにぶん殴られる。それだけ」

「単純に物理的な制裁かよ! たしかにマックスに殴られたらダメージは大きいと思うが、私生活が色々と乱れきってるヤツが殴っても説得力ない!」

 近衛隊の隊長でもあるマックスは、イケメンで基本的に性格も優しく、毅然とした雰囲気から部下にもたいへん慕われているが、プライベートでは乱れており、クズ思考であった。

 ナナの言いたいことを察したヒナリザは控えめに微笑むと、一緒にいたステフと顔を見合せ、こう言ったのだ。

「ナナ王太子妃殿下。マックスは潔癖な性格なので頻繁に性病検査を受けており、感染対策もしています。だからご安心ください」

「そこが潔癖でも意味ない! 真に潔癖なら頻繁にセフレ作んな!」

 ヒナリザは細身で、淡い香色の髪の毛が特徴的で繊細そうな美青年だが、おとなしそうで何かがズレている。幼馴染みで親友ならばマックスの奔放な男性関係を止めろと、ナナは言いたいが、ヒナリザのとなりにいたステフが笑顔で告げる。

「ナナ王太子妃! そんなに心配しなくても大丈夫! マックスの今のセフレは僕の同僚だから!」

 ステフ改め、ステフ・ケリー・シルバーは、やはりモモの弟分であり、元美少年トリオでは最年少の27歳で著名な医学者である。

 医学を修めて、ロリコン心理の研究もしているので、医学者であり心理学者のような面もあるが、彼の特筆すべきところはそこだけではない。

 ステフは王太子コクトーのすぐ下の弟王子リデル・ミケロットの主治医でもある。

 リデル王子は幼少期からコクトーの護衛をしているマックスを熱愛して、年々ヤバい感じとなり、心配した両親――――つまり、ダイアナ女王陛下と王婿ミモザ殿下が医者に診せる選択をした。それでステフが招聘されたのである。

 ステフは医者としても心理学者としても非常に優秀なのだが、リデル王子に対して無邪気に少年期から極めて容姿端麗だったマックスの過去を話すので、マックスを猛烈に愛するリデル王子のストーカー気質に完全なる油を注いでいる。

 有能な統治者であるダイアナ女王陛下と、その治世を陰ながら補佐する鋭敏な王婿ミモザ殿下ではあるが、ステフの登用に関しては明らかに人事失敗もはなはだしい。

 そんなことをナナは実感していたが、それよりも気になるのは先ほどのステフの爆弾発言だ。

「マックスの、セフ……、そういう相手がステフの同僚ってどういうことだ!?」

「あれ~? 知らなかったの? マックスがいま遊んでる相手は、リデル王子の武術の先生だよ? マックスの王立士官学校時代の先輩で、いまは王立士官学校の主任教官でもあるんだ!」

「はぁ!? よりによってリデル王子の武術指南役がマックスのいかがわしい遊び相手かよ! 士官学校の先生が後輩に手を出すな!」

 ヒナリザがどんなに王室の財政を健全化させたところで、肝心の王室と国家の安全を司る軍隊の風紀が乱れきっている!

 そして、わざわざリデル王子の武術指南役を遊び相手に選ぶマックスは、限りなく確信犯かつ鬼畜であった。

「コクトー! 王室の経費を監督するのも大事だが、軍の風紀の乱れも正せよ!」

 たまらずナナがコクトーに詰めよっていると、ずうっと黙ってことの成り行きを聴いていたマックスが口を挟んだ。

「ナナ妃殿下。軍隊なんて基本は男ばかりなので仕方ありません。ナナ妃殿下がいちいちツッコミを入れると話が進まないのですが?」

「自分を棚に上げて、俺に文句を言うな! そもそもの発端はマックスのヤバいプライベートだからな!?」

 マックスをはじめ、元美少年トリオたちの倫理観もバグっているが、彼らの兄貴分であるモモがそれらを放任しているのが大問題である。

 ヒナリザはそれなりにマトモだが、ステフとマックスには、モモだってコクトーを教育するときと同レベルの過激な躾をすべきだと、ナナは抗議したが、当のモモの反応は冷静かつ切実であった。

「ナナ。言いたいことはわかる。俺だって、ヒナリザはマジで品行方正だから心配ねぇけど。……ステフとマックスに関してはコクトーとは別次元ですごく心配なんだよ。特にマックスはガキ頃は利発で優等生だったのに、大人になったらヤバくなった」

 可愛い弟分マックスのプライベートが淫らすぎて、モモでさえ頭を痛めているらしい。

 ミシェルが亡くなり、自分は絶対に結婚はしないし、ミシェル様以外に愛する人を作らないと、頑なに誓っていたマックスが、性的にストイックになることを案じて、遊び相手は作れと勧めたモモだったが、優等生だったマックスがここまで豹変するとは流石に想定外だった。

「ガキの頃、利発で優等生なヤツほど壊れると厄介の典型だな。ナナ……。俺はマックスが、いつ痴情のもつれで刺されないか、心配で仕方ねぇんだよ。……ある意味、コクトーの将来以上にそっちが不安なんだ!」

 モモは傍若無人で不敵なようで面倒見がとてもいい。だが、それゆえに心配の種を無数に抱え込んでいる。

 たしかに、王太子の護衛筆頭で近衛隊の隊長が痴情のもつれで刺されたら、王室の経費不正使用を越えた大スキャンダルだろう。

「……大変だな。モモがすごく苦労しているのを目の当たりにした。ミモザ殿下がモモを信頼している理由がすごく理解できる!」

 最愛のミシェルを失ったうえに、こんな爆弾な弟分たちの心配までしなきゃいけないモモは気の毒だ。そうナナは初めてモモに対して同情していた。

 コクトーは王太子としてはヘタレかもだが、倫理観はマックスやステフとは異なり、ひたすら健全である。

 モモにどう言葉を掛けるべきか思案しているナナの横からコクトーが歩みでて、モモの細い腕を優しく掴んだ。

「大丈夫。モモ、安心して! マックスが自業自得で刺されるの防止に、僕が母上とミモザ父上に進言するよ。国王軍の風紀を正すため、不純同性交遊した軍人を罰するようにって!」

 ドヘタレな王太子コクトーがすごく賢明な判断をしている!

 王太子が進言すれば、ダイアナ女王陛下も軍の風紀の乱れに大鉈を振るうだろうと、ナナは期待したが意外にもモモはコクトーの意見に反対した。

「コクトーの言葉は嬉しいし、そうしたいが、絶対に無理だ。不純同性交遊を禁止したら王立士官学校に入学するヤツが激減して、最悪は定員割れする」

「おい! この国のヤツらが王立士官学校に入りたい理由って不純同性交遊かよ! 文字通りに、志望動機が不純だな!」

 ナナが耐えられずツッコミを入れるとステフが無邪気に笑って、ヒナリザも控えめだが、クスクス笑い、口をおさえた。

「あはは! ナナ妃殿下ってマジメ~! 女王陛下だって可能ならばとっくに軍隊の風紀を正してるよ~!」

「ナナ王太子妃殿下がご心配されるのはもっともですが。その……今更、健全化は無理ですね」

 財政は健全化できるヒナリザでも、軍の風紀健全化は不可能だと断言する。そんなにこの国の軍人は不純同性交遊が大好きなのか!

 あっけにとられるナナに対してコクトーは苦笑いで言った。

「軍が解体すると困るから風紀を正すのは無理みたいだね」

「不純同性交遊が禁止されるだけで解体する国王軍なんて、いっそ派手に解体しろ!」

 ナナの叫びにそれまで涼しい顔で黙っていたマックスがまたしても口を挟んできた。

「ナナ妃殿下。俺は妃殿下と同様に抱かれる側ですが、刺されるようなヘマはしませんから。ご安心ください」

「さらっと俺を一緒にするな! お前、マジで1度ぶっ刺されてこい!」

 こんな具合で、マックスの素行は今のところ改善の見込みはなく、軍の風紀も改善はできない。

 東宮でナナがマックスたちに叫んでいた頃、コクトーの弟で第2王子のリデル・ミケロットは武術の訓練を受けていた。

 指南役はステフの同僚であり、マックスのそういう遊び相手な軍人である。

「リデル王子。マックスは目隠しをしてあげると興奮して、乱れた身体が可愛く弛緩するので試してあげてくださいね? ここ! テストに出ますよ!」

「……なるほど。マックスは目隠しされると余計に淫らになるのか。いつも情報提供を感謝する」

「いえいえ、あとですね! マックスはベッドに縛り付けられるの好きなので、ご参考にしてください」

「ふむ……。目隠しと緊縛か。意外とベタなプレイが好きなのだな。マックスは……。尊く愛おしい」

 マックスの性的な遊び相手である軍人が率先して、リデル王子にマックス攻略法を指南しているあたりで、軍の風紀以前にダイアナ女王陛下とミモザ殿下の人事が大失敗過ぎている。

 しかし、この両親の人事大失敗がリデル王子にとっては最高の教育環境となっていた。


【続く!】



 

 

 
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