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居酒屋
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リンの異母兄の1人エドガーは孤高のイケメン貴公子である。
そう言うとカッコいいが実際はボッチ。
例外は王家の近衛兵エロシェンコさんだが、彼は基本的に誰にでも親切なのでお友達でも親友ではない。
庶子として育ったリンも表舞台に立たないので友達といえる存在はモモくらいだがエドガーはガチで友達がいない。
内向的な変態のクセに無駄にイケメンなので孤立してても、どこか崇高に映ってしまう。
ユーリはシルバー家令嬢シンシアの願いでエドガーと親しくしようと奮闘したが、所詮は勝ち目のない戦いであった。
だって、不意打ちで「28歳の未亡人とセックスしたい」なんて朝食で言い出す奴と仲良くなれる猛者の方が稀である。
28歳になんか深い意味でも持つのかと変に悩んでしまう。
エドガーの変態発言に真面目に返答するのは弟のリンくらいだ。
「エドガー兄様。ラン・ヤスミカ領で現在28歳の未亡人は存在しません。48歳でしたら居酒屋を経営するシュザンヌ婦人がいますよ」
シュザンヌ婦人はラン・ヤスミカ領でも数少ない居酒屋を繁盛させている女性で年齢より20歳近く若く見られる美魔女だ。
占いも得意でガチ魔女との噂もあるが、そんな胡散臭い人とはエドガーも流石に関わらないと思っていたら秒で会いに行くと返答した。
「48歳でも構わん。見かけは美女で頭脳は熟女な婦人なんて都でもそうそういない。ユーリ殿。案内を頼む」
ユーリは実はシュザンヌ婦人に占いをしてもらい、すべて的中しているので逆に怖かった。
父ラクロワが赤ちゃんだったユーリをシュザンヌ婦人の居酒屋に連れていったら、シュザンヌ婦人はユーリを視るなり、こう告げたらしい。
「ご子息は黒髪で黒い瞳の美しい人と良縁がある」
美人と結婚できる可能性がユーリにはあると言われたが、父ラクロワは本気にしていなかった。
しかし、嫁いできたリンはまさしく黒髪に黒い瞳の美少年なので占いは当たっている。
さらにユーリの兄エセルを占ったシュザンヌ婦人はズバリ当てたのだ。
「御嫡男は同時期に男児と女児を得る」
これも甥っ子のジャンと姪っ子のクレールが産まれて的中していた。
極めつけはリンとの縁談が決まって間もなく、シュザンヌ婦人は言ったのだ。
「花嫁が来るとラン・ヤスミカ家に金色の髪の男が現れる。彼らはラン・ヤスミカ領に幸福をもたらす」
リンが嫁いでほどなくしてミシェルが色々と事情があってラン・ヤスミカ領に流れてきた。
彼の出現によりラン・ヤスミカ領の教育はとても発展したことは事実である。
ミシェルが教育者として非常に優れているのはユーリにもわかる。
しかし、エドガーに限ってはそうでもないのだ。
彼が滞在してるということでラン・ヤスミカ領全域に「女性の下着と靴下とパンストを干すとき厳重警戒」という意味不明な御触れを発布する羽目に陥った。
そこだけシュザンヌ婦人の占いは外れている。
エドガーが幸福要素をもたらす可能性はいまのところは無いのだ。
だが、シュザンヌ婦人の居酒屋にエドガーを案内したユーリは驚くことになる。
シュザンヌ婦人はエドガーを視るなり告げたのだ。
「貴方は…アタシの元彼にそっくり!!ワイン好きなだけ飲んでいきな!ツマミも出すよ!!」
「ありがとう。レディ…シュザンヌ」
エドガーはシュザンヌ婦人の好みのタイプだったらしい。
「ユーリ様。領主の息子でもアンタは酒代払いな!」
こうして、エドガーはレディ・シュザンヌの居酒屋の常連となり、暇さえあると入り浸っている。
居酒屋に凄い美形がいると領内でも評判になり、領内の女性陣は見物に来る。
シュザンヌは見物するなら店で飲んでいけと言って客が増えて儲けは増えていく。
エドガーは招き猫よろしく黙って書物を読んでいるだけだ。
リンしかりミシェルしかりエドガーしかり…シルバー家の子息は人を惹き付ける天賦の才が備わっている。
俗にカリスマ性という奴だが、エドガーの場合は単に居酒屋の席に座っているだけで女性をとりこに出きるのだから天才バカチンである。
ユーリとしてはエドガーはマイペースに平穏に暮らせて、シュザンヌ婦人は儲かり、女性陣は喜ぶので文句はないが、解せないことがある。
「なんでエドガー義兄上は詰めかける女性やシュザンヌ婦人にも手を出さないんだろう?やはり、田舎の女にはご興味がないのか?」
寝室で訊いてみるとリンは潔く答えた。
「エドガー兄様には心に決めたお方がいるからです。でも、その方との恋は禁忌なので封印してます」
予想外に重たい回答か返ってきた。
恋愛で禁忌にも身分差、性別、近親相姦など数えれば数多に存在するがエドガーがそんな禁断の愛に苦しんでいる様子はない。
「その禁じられた恋のお相手は誰なんだ?リン…訊くのも怖いけど」
身分差は貧乏貴族のユーリが大貴族の出身のリンと男子同士でも夫婦なので、カード的には弱い。
ミシェルとモモだって相当な身分差は存在するし、残された選択肢でユーリが浮かぶ禁忌といえば近親相姦しかない。
しかし、シルバー家の兄妹仲を知る限り、そんなヤバそうな関係性はなさそうに思える。
エドガーが好意を寄せつつも、その想いを封じている相手とは果たして誰なのか?
知ったらのちのちトラウマになりそうだが、どうしても気になる。
そんなユーリの思いも知らずにリンはアッサリと暴露した。
「ルクレチアです」
「ルクレチア殿?失礼だが誰?」
初めて聞いた名前にユーリがキョトンとするとリンは平然と恐ろしいことを述べた。
「ルクレチアはエドガー兄様が愛読するNTR小説シリーズのヒロインで貴族令嬢で政略結婚で他家に嫁ぎますが裏では実の兄2名と関係がある美女です」
小説のヒロインかい!
しかも想像以上に生々しい内容だとユーリは背筋が凍った。
エドガーは架空のヒロインのエロエロに夢中でリアルな女性なんてどうでもよいらしい。
しかし、近親相姦とかガチで禁忌キッズな事情でなくてユーリはホッと安堵した。
「なんか…疲れてきた。リン、今日は寝る」
「ユーリ!私はセックスしたいので寝ないでください」
性欲と性癖が倒錯しているシルバー家の子弟たちだが、それぞれにおとしどころを見つけているあたりは凄い。
ちなみにエドガーは童貞ではなく何度か女性と寝ている。
しかし、小説のルクレチアに勝る女性はいないようだ。
後日、シュザンヌの居酒屋にエドガーが入り浸るので心配したモモが店に入ると女主人シュザンヌはモモを視るなり大声で言い放った。
「アンタ!名前は!?アタシの元彼を寝取った女にクリソツだよ!!」
「急になんだよ!?ババア!!お前の元彼なんて知るか!!居酒屋に客が入店して2秒で叫ぶ台詞か!?」
モモはなんとなく女性の敵は作るタイプらしい。
シュザンヌ婦人とモモが喧嘩していても仲裁もせずにエドガーは読書に耽る。
元彼を寝取られた恨みがよみがえったシュザンヌにモモは首を絞められて生命の危機だったが、それでもエドガーが助けてくれなかった。
幸い様子を見にきたユーリが止めたのでモモは絞殺されずにすんだが、走馬灯を視るレベルにシュザンヌの首絞め力が凄まじかった。
エドガーは目の前でモモが絞殺されそうなのに助けなかった件でミシェルに大激怒され、生まれて初めて兄に殴られたという。
父上にも殴られたことないエドガーだったが、殴ると益々バカになると危惧して父上は殴らなかっただけである。
end
そう言うとカッコいいが実際はボッチ。
例外は王家の近衛兵エロシェンコさんだが、彼は基本的に誰にでも親切なのでお友達でも親友ではない。
庶子として育ったリンも表舞台に立たないので友達といえる存在はモモくらいだがエドガーはガチで友達がいない。
内向的な変態のクセに無駄にイケメンなので孤立してても、どこか崇高に映ってしまう。
ユーリはシルバー家令嬢シンシアの願いでエドガーと親しくしようと奮闘したが、所詮は勝ち目のない戦いであった。
だって、不意打ちで「28歳の未亡人とセックスしたい」なんて朝食で言い出す奴と仲良くなれる猛者の方が稀である。
28歳になんか深い意味でも持つのかと変に悩んでしまう。
エドガーの変態発言に真面目に返答するのは弟のリンくらいだ。
「エドガー兄様。ラン・ヤスミカ領で現在28歳の未亡人は存在しません。48歳でしたら居酒屋を経営するシュザンヌ婦人がいますよ」
シュザンヌ婦人はラン・ヤスミカ領でも数少ない居酒屋を繁盛させている女性で年齢より20歳近く若く見られる美魔女だ。
占いも得意でガチ魔女との噂もあるが、そんな胡散臭い人とはエドガーも流石に関わらないと思っていたら秒で会いに行くと返答した。
「48歳でも構わん。見かけは美女で頭脳は熟女な婦人なんて都でもそうそういない。ユーリ殿。案内を頼む」
ユーリは実はシュザンヌ婦人に占いをしてもらい、すべて的中しているので逆に怖かった。
父ラクロワが赤ちゃんだったユーリをシュザンヌ婦人の居酒屋に連れていったら、シュザンヌ婦人はユーリを視るなり、こう告げたらしい。
「ご子息は黒髪で黒い瞳の美しい人と良縁がある」
美人と結婚できる可能性がユーリにはあると言われたが、父ラクロワは本気にしていなかった。
しかし、嫁いできたリンはまさしく黒髪に黒い瞳の美少年なので占いは当たっている。
さらにユーリの兄エセルを占ったシュザンヌ婦人はズバリ当てたのだ。
「御嫡男は同時期に男児と女児を得る」
これも甥っ子のジャンと姪っ子のクレールが産まれて的中していた。
極めつけはリンとの縁談が決まって間もなく、シュザンヌ婦人は言ったのだ。
「花嫁が来るとラン・ヤスミカ家に金色の髪の男が現れる。彼らはラン・ヤスミカ領に幸福をもたらす」
リンが嫁いでほどなくしてミシェルが色々と事情があってラン・ヤスミカ領に流れてきた。
彼の出現によりラン・ヤスミカ領の教育はとても発展したことは事実である。
ミシェルが教育者として非常に優れているのはユーリにもわかる。
しかし、エドガーに限ってはそうでもないのだ。
彼が滞在してるということでラン・ヤスミカ領全域に「女性の下着と靴下とパンストを干すとき厳重警戒」という意味不明な御触れを発布する羽目に陥った。
そこだけシュザンヌ婦人の占いは外れている。
エドガーが幸福要素をもたらす可能性はいまのところは無いのだ。
だが、シュザンヌ婦人の居酒屋にエドガーを案内したユーリは驚くことになる。
シュザンヌ婦人はエドガーを視るなり告げたのだ。
「貴方は…アタシの元彼にそっくり!!ワイン好きなだけ飲んでいきな!ツマミも出すよ!!」
「ありがとう。レディ…シュザンヌ」
エドガーはシュザンヌ婦人の好みのタイプだったらしい。
「ユーリ様。領主の息子でもアンタは酒代払いな!」
こうして、エドガーはレディ・シュザンヌの居酒屋の常連となり、暇さえあると入り浸っている。
居酒屋に凄い美形がいると領内でも評判になり、領内の女性陣は見物に来る。
シュザンヌは見物するなら店で飲んでいけと言って客が増えて儲けは増えていく。
エドガーは招き猫よろしく黙って書物を読んでいるだけだ。
リンしかりミシェルしかりエドガーしかり…シルバー家の子息は人を惹き付ける天賦の才が備わっている。
俗にカリスマ性という奴だが、エドガーの場合は単に居酒屋の席に座っているだけで女性をとりこに出きるのだから天才バカチンである。
ユーリとしてはエドガーはマイペースに平穏に暮らせて、シュザンヌ婦人は儲かり、女性陣は喜ぶので文句はないが、解せないことがある。
「なんでエドガー義兄上は詰めかける女性やシュザンヌ婦人にも手を出さないんだろう?やはり、田舎の女にはご興味がないのか?」
寝室で訊いてみるとリンは潔く答えた。
「エドガー兄様には心に決めたお方がいるからです。でも、その方との恋は禁忌なので封印してます」
予想外に重たい回答か返ってきた。
恋愛で禁忌にも身分差、性別、近親相姦など数えれば数多に存在するがエドガーがそんな禁断の愛に苦しんでいる様子はない。
「その禁じられた恋のお相手は誰なんだ?リン…訊くのも怖いけど」
身分差は貧乏貴族のユーリが大貴族の出身のリンと男子同士でも夫婦なので、カード的には弱い。
ミシェルとモモだって相当な身分差は存在するし、残された選択肢でユーリが浮かぶ禁忌といえば近親相姦しかない。
しかし、シルバー家の兄妹仲を知る限り、そんなヤバそうな関係性はなさそうに思える。
エドガーが好意を寄せつつも、その想いを封じている相手とは果たして誰なのか?
知ったらのちのちトラウマになりそうだが、どうしても気になる。
そんなユーリの思いも知らずにリンはアッサリと暴露した。
「ルクレチアです」
「ルクレチア殿?失礼だが誰?」
初めて聞いた名前にユーリがキョトンとするとリンは平然と恐ろしいことを述べた。
「ルクレチアはエドガー兄様が愛読するNTR小説シリーズのヒロインで貴族令嬢で政略結婚で他家に嫁ぎますが裏では実の兄2名と関係がある美女です」
小説のヒロインかい!
しかも想像以上に生々しい内容だとユーリは背筋が凍った。
エドガーは架空のヒロインのエロエロに夢中でリアルな女性なんてどうでもよいらしい。
しかし、近親相姦とかガチで禁忌キッズな事情でなくてユーリはホッと安堵した。
「なんか…疲れてきた。リン、今日は寝る」
「ユーリ!私はセックスしたいので寝ないでください」
性欲と性癖が倒錯しているシルバー家の子弟たちだが、それぞれにおとしどころを見つけているあたりは凄い。
ちなみにエドガーは童貞ではなく何度か女性と寝ている。
しかし、小説のルクレチアに勝る女性はいないようだ。
後日、シュザンヌの居酒屋にエドガーが入り浸るので心配したモモが店に入ると女主人シュザンヌはモモを視るなり大声で言い放った。
「アンタ!名前は!?アタシの元彼を寝取った女にクリソツだよ!!」
「急になんだよ!?ババア!!お前の元彼なんて知るか!!居酒屋に客が入店して2秒で叫ぶ台詞か!?」
モモはなんとなく女性の敵は作るタイプらしい。
シュザンヌ婦人とモモが喧嘩していても仲裁もせずにエドガーは読書に耽る。
元彼を寝取られた恨みがよみがえったシュザンヌにモモは首を絞められて生命の危機だったが、それでもエドガーが助けてくれなかった。
幸い様子を見にきたユーリが止めたのでモモは絞殺されずにすんだが、走馬灯を視るレベルにシュザンヌの首絞め力が凄まじかった。
エドガーは目の前でモモが絞殺されそうなのに助けなかった件でミシェルに大激怒され、生まれて初めて兄に殴られたという。
父上にも殴られたことないエドガーだったが、殴ると益々バカになると危惧して父上は殴らなかっただけである。
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