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孤立
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精子まみれのペニスをティッシュで拭き取る。現実に帰る瞬間だ。
ディスプレイにはスマホから取りだした綾瀬の写真が映しだされている。時計を見ると、七時だ。
そろそろ学校に行く時間だった。最近では夜だけでなく、朝もオナニーしてしまう。クラスメイトをおかずに一日に二度も三度もオナニーしてしまう自分が直冬は情けなかった。ひょっとしたら、俺はみんなの言うとおり変態なのかもしれない。
「ああ、福井に帰りたい」
思わずため息が漏れた。
父親から東京に転勤になったと聞かされたとき、めずらしく直冬は反発した。
小学校時代は父親の度重なる転勤のおかげで、友達を作る暇も無かった。
それでもそれほど寂しいと思わなかったのは、家でゲームをしたりアニメを見ている方が自分の性に合っていたからだ。
中二の時に福井の学校に転校となり、席が隣り合わせたのが野上だった。
お互いの趣味が共通しているとわかると、「なんや君もオタクやったんか。これからは仲良うしよな」そう言って、野上は屈託無く笑った。
それからは野上を通じて友達の輪が広がり、学校に行くのが楽しいとはじめて思えた。
仲間たちの大半は地元の公立高校に進学する。直冬もそのつもりで居た。それが卒業間近のこの時期になって、東京に行かなければならない。
こちらに残りたいと主張したが、親はまったく取り合ってくれなかった。
結局、春休みに東京に引っ越しすることになった。
引っ越しを前に、仲間達がカラオケで送別会を開いてくれた。
皆がそれぞれ十八番のアニソンを直冬のために歌ってくれた。シャイな直冬もこの日ばかりは、得意の歌を熱唱した。
最後の締めに、全員で残酷な天使のテーゼを合唱したときには、直冬は仲間と別れる寂しさで、思わず嗚咽を漏らした。
「アキバはオタクの聖地。東京に行く直冬がうらやましいわ」
野上が慰めるように直冬の肩を抱いて言った。
「いや、俺はみんなと一緒の高校に行きたかったよ。東京なんていったところで誰も友達おらへんし」
正直な気持ちだった。
「心配せんでもオタクは東京にもおるって。いやむしろあっちの方が多いやろ」
野上は最初に出会ったときのように屈託無く笑う。
「そうかもしれんけど、俺はお前みたいに誰とでも仲良うなれる性格と違うからな。一から友達作りを始めるのは正直、気が重いわ」
「まあお前の気持ちもわからないでもないが、東京に行ったからといって、二度と会えんわけやない。夏休みには遊びに行くわ。そや直冬、彼女つくったらどうや?」
野上は名案でも思いついたように、直冬の肩を叩いた。
「東京にはここらじゃお目にかかれんような垢抜けた女が仰山おる」
「あのな、友達ができるかどうか心配しとるもんに、彼女とか、いくらなんでも飛躍しすぎやろ。それにそんな垢抜けた女が俺みたいなの相手にせんやろ」
「それがそうでもないんや。ほら俺、去年の夏に東京に行ったやろ」
「たしかアニメのイベントに行ったんやな」
「そうそう、その帰りにアキバに寄ったんやけど、彼女連れのオタクが仰山おったわ。微妙な女も多かったけど、なかにはこんな男にほんまかいなってほどのカワイイ子もおったで」
仲間達も二人の会話に加わりはじめた。
「東京の女は積極的やていうで。こんなかで直冬が一番初めにエッチすることになるんとちがうか」
ひとりが言うと、皆が茶化し始めた。
「直冬、彼女ができたら写メ送ってくれや。俺はそれをおかずにオナニーするさかい」
「お前は二次元の彼女がおるやろ!」
「こら直冬が勝ち組決定やな」
口々に勝手なことを言い合いながら、それぞれが沈んでいる自分に気を遣ってくれるのかと思うと、直冬は胸が熱くなった。
別に彼女ができるなんて期待をしていたわけでもないが、この高校に入学して一ヶ月もすれば自分がどれほど場違いなところにいるかを思い知らされた。
この学校は都下でも軟派な校風で知られており、直冬のような田舎のオタクが息をできる場所などどこにもなかったのだ。
話題と言えばもっぱら異性とファッションで、到底その輪に参加している自分の未来をイメージすることはできなかった。
頼みの福井の友達から来るメールも日に一度が三日に一度になり、最近では返事すら来ないことがしばしばだ。皆、新しい環境に馴染み始めているのだろう。
――彼女か……綾瀬の顔が思い浮かぶ。やっぱり沢井と付き合っているんだろうか
沢井にバックから犯される綾瀬の妄想が立ち上がってくる。
直冬はまた自分の股間に手を伸ばしてしまった。
ディスプレイにはスマホから取りだした綾瀬の写真が映しだされている。時計を見ると、七時だ。
そろそろ学校に行く時間だった。最近では夜だけでなく、朝もオナニーしてしまう。クラスメイトをおかずに一日に二度も三度もオナニーしてしまう自分が直冬は情けなかった。ひょっとしたら、俺はみんなの言うとおり変態なのかもしれない。
「ああ、福井に帰りたい」
思わずため息が漏れた。
父親から東京に転勤になったと聞かされたとき、めずらしく直冬は反発した。
小学校時代は父親の度重なる転勤のおかげで、友達を作る暇も無かった。
それでもそれほど寂しいと思わなかったのは、家でゲームをしたりアニメを見ている方が自分の性に合っていたからだ。
中二の時に福井の学校に転校となり、席が隣り合わせたのが野上だった。
お互いの趣味が共通しているとわかると、「なんや君もオタクやったんか。これからは仲良うしよな」そう言って、野上は屈託無く笑った。
それからは野上を通じて友達の輪が広がり、学校に行くのが楽しいとはじめて思えた。
仲間たちの大半は地元の公立高校に進学する。直冬もそのつもりで居た。それが卒業間近のこの時期になって、東京に行かなければならない。
こちらに残りたいと主張したが、親はまったく取り合ってくれなかった。
結局、春休みに東京に引っ越しすることになった。
引っ越しを前に、仲間達がカラオケで送別会を開いてくれた。
皆がそれぞれ十八番のアニソンを直冬のために歌ってくれた。シャイな直冬もこの日ばかりは、得意の歌を熱唱した。
最後の締めに、全員で残酷な天使のテーゼを合唱したときには、直冬は仲間と別れる寂しさで、思わず嗚咽を漏らした。
「アキバはオタクの聖地。東京に行く直冬がうらやましいわ」
野上が慰めるように直冬の肩を抱いて言った。
「いや、俺はみんなと一緒の高校に行きたかったよ。東京なんていったところで誰も友達おらへんし」
正直な気持ちだった。
「心配せんでもオタクは東京にもおるって。いやむしろあっちの方が多いやろ」
野上は最初に出会ったときのように屈託無く笑う。
「そうかもしれんけど、俺はお前みたいに誰とでも仲良うなれる性格と違うからな。一から友達作りを始めるのは正直、気が重いわ」
「まあお前の気持ちもわからないでもないが、東京に行ったからといって、二度と会えんわけやない。夏休みには遊びに行くわ。そや直冬、彼女つくったらどうや?」
野上は名案でも思いついたように、直冬の肩を叩いた。
「東京にはここらじゃお目にかかれんような垢抜けた女が仰山おる」
「あのな、友達ができるかどうか心配しとるもんに、彼女とか、いくらなんでも飛躍しすぎやろ。それにそんな垢抜けた女が俺みたいなの相手にせんやろ」
「それがそうでもないんや。ほら俺、去年の夏に東京に行ったやろ」
「たしかアニメのイベントに行ったんやな」
「そうそう、その帰りにアキバに寄ったんやけど、彼女連れのオタクが仰山おったわ。微妙な女も多かったけど、なかにはこんな男にほんまかいなってほどのカワイイ子もおったで」
仲間達も二人の会話に加わりはじめた。
「東京の女は積極的やていうで。こんなかで直冬が一番初めにエッチすることになるんとちがうか」
ひとりが言うと、皆が茶化し始めた。
「直冬、彼女ができたら写メ送ってくれや。俺はそれをおかずにオナニーするさかい」
「お前は二次元の彼女がおるやろ!」
「こら直冬が勝ち組決定やな」
口々に勝手なことを言い合いながら、それぞれが沈んでいる自分に気を遣ってくれるのかと思うと、直冬は胸が熱くなった。
別に彼女ができるなんて期待をしていたわけでもないが、この高校に入学して一ヶ月もすれば自分がどれほど場違いなところにいるかを思い知らされた。
この学校は都下でも軟派な校風で知られており、直冬のような田舎のオタクが息をできる場所などどこにもなかったのだ。
話題と言えばもっぱら異性とファッションで、到底その輪に参加している自分の未来をイメージすることはできなかった。
頼みの福井の友達から来るメールも日に一度が三日に一度になり、最近では返事すら来ないことがしばしばだ。皆、新しい環境に馴染み始めているのだろう。
――彼女か……綾瀬の顔が思い浮かぶ。やっぱり沢井と付き合っているんだろうか
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