経験値袋と呼ばれたミニドラは今

みやんて

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1章 最弱のドラゴン

リラン

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それは前触れもなく飛んできた。ヒュンっというかすかな風切り音のあと 。



「ぐあっ!」 

 

「あなたのその魔法、久々に見ました。僕をそこまで評価してくれるなんて嬉しいですね。 」

 

――ちょっと、どうしたの!大丈夫?―― 

 

 

 

男の意識の外から放たれた探検は男の肩に突き刺さっていた。短剣の飛んできた方向を見ると、男にとっては見慣れた、だがもう見ることはないと思っていた青年の姿が見えた。 

 

 

「ぐう…すでに見つかっていたというのか…?リラン。いつの間にそれほど腕を上げた」。 

 

「あれ、僕の実力に気づいてその魔法を使っていたのではないのですか。念のためってやつですかね。相変わらず慎重なことで、だーんちょ。 」

 

 

リランと呼ばれた青年は笑いながら話しかけてくる。彼からは、子供が輪投げに成功してはしゃいでいるような、そんな無邪気な喜びを感じた。男は怪我のせいだけではない冷汗が噴出してくるのを感じていた。 

 

 

「団長、僕強くなったんですよ。 」

 

「私はもう団長ではない。 」

 

「そうだ、そのことで来たんだった。団長駄目じゃないですか。僕たちは陛下に仕えているのにその陛下を殺そうなんて。怒っていましたよ? 」

 

「逆だ、陛下が私を殺そうとしたのだ。 」

 

「またまた。まぁその辺はどうでもいいんです。僕は団長を連れ戻しに来ただけですから。――逃げるな。 」

 

 

男が飛びのいて逃げようとした瞬間、ナイフが投擲される。投げられたナイフは、もし男が直前で踏みとどまっていなければ直撃したであろう位置に突き刺さった。 

 

 

「別に殺すつもりはないのでおとなしくついてきてほしいのですけれど。もしあくまでも逃げるというなら…殺してでも連れ帰ります。僕らを捨てて逃げようだなんて絶対に許さない。 」

 

「リラン…。」 

 

「ほらほら団長、姉さんも待っていますし帰りましょう?今ならビンタ一発で許してくれるって言ってましたよー?」 

 

 

 

笑いながら依然と全く変わらない調子で話しかけてくる青年に対し、男は警戒からか瞬きもせずに注視する。青年も無理に男を拘束するつもりはないのかニコニコと笑いかけ、時折思い出話のようなことをするのみだ。 

 

 

――あれ、あなたの知り合い?――

 

 

「……。」 

 

 

――大丈夫?顔色悪い。――

 

 

 

心配そうに語りかけてくる声に対し、男には応える余裕はない。何とかして逃げ切れないか、相手の力量はどのくらいか見極めるのに必死だ。 

 

 

(1か月もないうちにどうやってそこまでの力をつけた……。私を追いながら訓練などありえない。それにこれは技術が上がったというよりはもっとこう根本的なものが変わったような…。 )

 

「どうなっているんだ…?」


あと少し。あと少しで国外にいけるといったところでの望まぬ再会。焦りや混乱で思うように考えがまとまらない。さすがの男もここまでの道のりで少しばかり消耗している。その影響もあるのかもしれない。


(少しまずいな…。)


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