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第一章 『歪んだ刃先』
十話 『夢想した少年』
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そこはある大きな一軒家。
ここでは仲睦まじい夫婦とその子供二人が暮らしていた。温かな家庭に毎日のように笑顔が咲き、安泰な人生を楽しんでいた。
愛らしい子供に仲の良い夫婦、ご近所からは理想的な家族だと謳われ、それに顔を見合わせ仲の良い家族は幸せを口にする。
そんな口元が緩んでしまいそうな物語も悲劇を迎え、ある晩——————。
「おま、お前何をやってッ!」
口から血を吐きながらのた打ち回る父親は家の花瓶や水槽などを叩き割り、その痛みを表現して見せた。裂かれた喉からはくぱくぱと呼吸をするように血が溢れだし、やがて息の根が止まる。
「あ、あなた! あなた助け————ッ」
両足の付け根を切断された母親は這いつくばりながら助けを求め、そして断頭された。鮮やかに花が散るように、血飛沫は空を舞いながら主犯の顔を汚していく。
「なんだよお前、俺に何しようってんだ‼ この俺にぃぃッ!」
胸を刺された長男は犯人に怒号を飛ばすと、冷静な刃先が心臓を一気に貫いた。零れ出る命の液を床に零し、そのまま縦に腹は裂かれた。散乱する臓器に足を滑らせる犯人は優雅に血溜まりで踊っている。
「僕は‥‥」
取り残された末っ子の少年は涙を流すこともなく、ただ血濡れた手を眼下に震えている。一体何が起きているのか、見当がつかないなか目の前では家族が惨殺されている。道路で轢かれている猫のように、無造作に散らばった臓器は幼き少年にとって理解し難いものであった。
これは一体なんなのか。基本的知識に欠けている少年は記憶を探る。
床に転がっている母親の頭部、腸を出しながら倒れる兄の姿、息を吹き返すことを忘れた父親。今だ無理解が連続して続いており、膠着した足には失禁した尿が沿って流れている。
「違う‥‥、僕は、違う‥‥」
崩れ落ちる様に座り、そのまま血液の海に足を浸す。
月光が差す部屋で、外から聞こえるサイレンに煩悩を奪われる。
無になった少年の瞳に映ったのは最愛の家族、母親だったものの頭部だ。
不意に口が開き、無意識に声は漏れていた。
「——————母さん」
「だーから! 秋根はお前のママじゃないのだっ!」
記憶の片隅に保存してあった聞き覚えのある甲高い声。それは自分の真横から鼓膜を破る勢いで脳内に鳴り響き、突然のことに驚く。
勢いよく起き上がったせいで体は震えており、心拍数は一気に跳ね上がった。体中に汗を掻いており、起き上がると同時に髪の先端部分から雫となり布に垂れる。
状況整理に意識が行く中、慌てた愛斗は辺りを見渡しベットの中に居るのだと理解する。カーテンで仕切られた部屋は謎の安心感があり、心が落ち着いていく。
溜息を吐き、胸を撫でおろ——————。
「じゃねぇーよッ! お、お前なんで僕のベットの中に居るんだよ⁉」
「お前じゃなくて秋根なのだ! それにその言い方は酷いのだ! せっかく看病もしてあげたのに、酷い男なのだ! この恩知らず!」
布団を捲った瞬間、その姿に頬を赤らめたのは愛斗ただ一人だけだった。
「何が看病だ! 人の布団の中に入る様な淫乱女は看病を勘違いしてんじゃないのか⁉」
「いっ、淫乱女とは! お前は人肌で温めるという看病を知らないからそういうことが言えるのだ! こんな男だとは思っていなかったのだ。わざわざ運んで善意を尽くした秋根が馬鹿だったのだ!」
体重が少女より明らかに重い愛斗を保健室まで運んだ。そんな事実に関心し、善意に満ちた少女に表情が和らいだ。
だがそれと同時に自分が倒れた時の記憶が蘇った。赤で汚されたその記憶は再度、愛斗に嗚咽を齎し、不意にこみ上げたそれを片手で抑える。
明らかに様子が変わった愛斗を見て、少女も少し表情を硬くさせた。
ここでは仲睦まじい夫婦とその子供二人が暮らしていた。温かな家庭に毎日のように笑顔が咲き、安泰な人生を楽しんでいた。
愛らしい子供に仲の良い夫婦、ご近所からは理想的な家族だと謳われ、それに顔を見合わせ仲の良い家族は幸せを口にする。
そんな口元が緩んでしまいそうな物語も悲劇を迎え、ある晩——————。
「おま、お前何をやってッ!」
口から血を吐きながらのた打ち回る父親は家の花瓶や水槽などを叩き割り、その痛みを表現して見せた。裂かれた喉からはくぱくぱと呼吸をするように血が溢れだし、やがて息の根が止まる。
「あ、あなた! あなた助け————ッ」
両足の付け根を切断された母親は這いつくばりながら助けを求め、そして断頭された。鮮やかに花が散るように、血飛沫は空を舞いながら主犯の顔を汚していく。
「なんだよお前、俺に何しようってんだ‼ この俺にぃぃッ!」
胸を刺された長男は犯人に怒号を飛ばすと、冷静な刃先が心臓を一気に貫いた。零れ出る命の液を床に零し、そのまま縦に腹は裂かれた。散乱する臓器に足を滑らせる犯人は優雅に血溜まりで踊っている。
「僕は‥‥」
取り残された末っ子の少年は涙を流すこともなく、ただ血濡れた手を眼下に震えている。一体何が起きているのか、見当がつかないなか目の前では家族が惨殺されている。道路で轢かれている猫のように、無造作に散らばった臓器は幼き少年にとって理解し難いものであった。
これは一体なんなのか。基本的知識に欠けている少年は記憶を探る。
床に転がっている母親の頭部、腸を出しながら倒れる兄の姿、息を吹き返すことを忘れた父親。今だ無理解が連続して続いており、膠着した足には失禁した尿が沿って流れている。
「違う‥‥、僕は、違う‥‥」
崩れ落ちる様に座り、そのまま血液の海に足を浸す。
月光が差す部屋で、外から聞こえるサイレンに煩悩を奪われる。
無になった少年の瞳に映ったのは最愛の家族、母親だったものの頭部だ。
不意に口が開き、無意識に声は漏れていた。
「——————母さん」
「だーから! 秋根はお前のママじゃないのだっ!」
記憶の片隅に保存してあった聞き覚えのある甲高い声。それは自分の真横から鼓膜を破る勢いで脳内に鳴り響き、突然のことに驚く。
勢いよく起き上がったせいで体は震えており、心拍数は一気に跳ね上がった。体中に汗を掻いており、起き上がると同時に髪の先端部分から雫となり布に垂れる。
状況整理に意識が行く中、慌てた愛斗は辺りを見渡しベットの中に居るのだと理解する。カーテンで仕切られた部屋は謎の安心感があり、心が落ち着いていく。
溜息を吐き、胸を撫でおろ——————。
「じゃねぇーよッ! お、お前なんで僕のベットの中に居るんだよ⁉」
「お前じゃなくて秋根なのだ! それにその言い方は酷いのだ! せっかく看病もしてあげたのに、酷い男なのだ! この恩知らず!」
布団を捲った瞬間、その姿に頬を赤らめたのは愛斗ただ一人だけだった。
「何が看病だ! 人の布団の中に入る様な淫乱女は看病を勘違いしてんじゃないのか⁉」
「いっ、淫乱女とは! お前は人肌で温めるという看病を知らないからそういうことが言えるのだ! こんな男だとは思っていなかったのだ。わざわざ運んで善意を尽くした秋根が馬鹿だったのだ!」
体重が少女より明らかに重い愛斗を保健室まで運んだ。そんな事実に関心し、善意に満ちた少女に表情が和らいだ。
だがそれと同時に自分が倒れた時の記憶が蘇った。赤で汚されたその記憶は再度、愛斗に嗚咽を齎し、不意にこみ上げたそれを片手で抑える。
明らかに様子が変わった愛斗を見て、少女も少し表情を硬くさせた。
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