サイコな彩湖は僕を殺したがっている

たいこまる

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第一章 『歪んだ刃先』

十一話 『ロリ少女の全力看病』

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冷気が漂う保健室で、男女はベットの中で顔を見合わせた。寒い体を人肌で温められ、安定した体温を保てている。起き上がってみて外傷があるように思えなかった。
 だが、今はそれより、
 「なぁ、一つ聞いていいか?」
 「いいのだ」
 「あの後、どうなった?」
 愛斗の質問に一度は目を逸らそうとした少女だったが、真剣な眼差しに押されたのか真実を口から放った。それは掘り返すのも罰があたるような悲惨な出来事を、一部始終見届けたものとして全てを話した。
 「死体はちゃんと埋葬されるそうなのだ。遺族の方もすぐに駆け付けていたけど、その家族の生徒で息をした人は一人もいなかったのだ‥…」
 生命を軽く見るような狂った人間ら、それは意図も容易く引き金一つで人を殺めるような存在。危険だ。野放しにしてはならないと思えば思う程気持ちは焦っていく。
 同種、そう告げられたのが随分前に感じてしまう。あの言葉について何度考えたことか、自分は違うとそう繰り返すたびに、猫の惨殺死体を見て人間ぶっていた自分の皮が剥がれてしまう。
 「お前は、お前は違うのか?」
彩湖を越える狂人がこの高校に幾多といるはずだ。いや、居る。入学式の虐殺現場を見た生徒の目は正しく遊戯を楽しむ幼児のような、そんな健気な目をしていた。
だが今自分の目の前に居る少女の瞳には何一つとして汚れがなく、純な瞳に光を宿していた。それを信じ入学式の時は言うことを聞いた。結果的、無様なまま他界しずには済み、少女の決断は確かなものだと信じれた。
「もちろんなのだ! それに、名前はお前じゃなくて秋根なのだ!」
「秋根っか…。秋根、本当にありがとう」
「いいのだ! 体は安静にするといいのだ!」
「気遣いありがと。でも、もう大丈夫そうだ」
肩を回しながら不屈の心を持つ愛斗が笑う。釣られ秋根も口元に手を当てながら大きく
笑い、冷たい空気が瞬間消し飛ぶ。温かく、自分を受け入れてくれているような親近感を感じた。
 「まぁなんにせよ、保健室に長居するのもあれだ。早く保健室から出るぞ」
 「りょーかいなのだ! それにしてもあれなのだ、目から血を出したとき別人かと思ったのだ! 本当にビックリしたのだぁ!」
 それはあの惨劇が繰り広げられた入学式。愛斗が倒れる前の話だ。気が狂い、自分という人格を正常に保てていなかった愛斗は、自分が自分であるため、自分が人間であるため記憶を摩耗してまで正常を保っていた。
自分の中で激闘を繰り広げる最中、愛斗の片目からは赤い鮮血が美しいラインを引き、頬を下っていた。それだけでも驚きものだが、鮮血を流す愛斗の片目は確かに別人であった。真っ赤に血走った瞳。落ち着いた愛斗の目とは正反対で、舞台の上で死の演説を披露した紀野に瓜二つの狂人の瞳であった。
 「僕‥‥のことか?」
 記憶が危うい愛斗が確かめる様に人差し指を自分へと向けた。それに布団から出て、愛斗のために水を入れた秋根が小さく頷く。その後、秋根は愛斗にコップを渡し、愛斗は水を一気に飲み干す。冷たく透き通る水を美味と表情で伝えると、コップを近くに置いてある台に置き、秋根の反応に対する返答をする。っと言っても実際のところ愛斗は。
 「そんな記憶ないけどなぁ」
 「えぇ! なんでなのだ⁉ あ、あんなにも苦しそうにしてて、意識もはっきりしてたのに! 覚えてないのか⁉」
 「あぁ、まったく記憶にない。逆に目から血とか、僕が? ヤバくないかそれ?」
 「ヤバいのだ」
 記憶の一部が消えている愛斗は今現在手元にある情報源をありったけに活用し、秋根に真意を問う。だが冗談を言っている様子もなく、真剣そのものの立ち振る舞いにさすがの愛斗も笑顔が消えた。
 「逆に疑うけど、見間違えとかじゃないのかそれ? 僕は別に持病とかはないし、重い病気に罹ったことはない一度もない。そんな僕が急に眼から血だとか…」
 疑いの念を持った愛斗は最後の抵抗として自分が知っている限りではあるが病気に罹ったことはないと、そう自身満々に告げた。
 どうだと鼻を鳴らす愛斗にため息をつき、幼い体の少女、秋根は不満気な顔をそこに宿らせ愛斗に背を向ける。
 「信じてくれないのならいいのだ! ぷい!」
 「おいおい、待ってくれ!」
 軽く拗ねる秋根は小さな背中を愛斗に見せながら保健室のカーテンを開け、個室の空間を破壊する。それを止めようと声を掛けるが、秋根は堂々と保健室の扉まで進んでいき、ベットから倒れるように落ち、慌てて秋根の背中に追いつく愛斗。必死な姿を見ていない秋根は頬を膨らませ、愛らしい顔で愛斗の体を軽く殴る。
 「何か言うことは?」
 「疑ってすいません。これからは優しい秋根を信用します」
 「お前も中々分てるのだ! うんうん、許すのだ!」
 「おぉ、可愛い」
 保健室の扉に手を掛ける秋根は愛斗の謝罪に大変喜んでおり、扉から手を離し腕を組みながら頷いた。
可愛らしく大きく頷く秋根は正しく純な少女。優しさも十分、健気な可愛さも十分。そんな秋根に思わず口が滑り、内心で思っている感想を漏らす。それに照れたのか顔を両手で隠し、小さな指の隙間から目を見せた。その潤ったクリクリした瞳は下を向き、落ち着かない様子だった。
 「あ、当たり前なのだ。か、完璧美少女の秋根だから、と、当然なのだ!」
 「完璧美少女ねぇー」
 「な、なんなのだその目は! もういいのだ! 知らないのだ!」
 「こいつまた怒りやがった」
 照れながらの発言を遠回しにバカにされた秋根は悔しそうに拳を握り締め、その怒りを保健室の扉を強く開け発散している。っが、治まることはなく無人の廊下を音を立てながら歩いていく。夕日が差し込む廊下で、またもや秋根の後を追う愛斗は愚痴を零した。
 吐き捨てる様に言った発言を耳に挿んだ秋根は、後ろを振り返り、女性とは思えない拳で、
 「だーかーらーッ! こいつじゃなくて、秋根なのだァァァァァァァァァッ!」
 「うっぼッッッ‼」
 見事に決まったアッパーはどこかの文房具店の店員を彷彿させるような勢いだった。それを二度ももろに食らった愛斗は美しく華麗に舞い、重力に従い痛々しく落下した。
 身近に感じていた死の恐怖を忘れたように、仲睦まじくじゃれ合う二人は次第に打ち解けていった。友達として、唯一の真面な人間としていつの間にか心を許していた。
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