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第80話 なんでもいいから温めろ
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ついに、シャルトル教皇に会うために、中央の大聖堂に行く日が来た。
フランスは、魔王イギリスの姿で、フランスの私室のベッドに腰かけていた。
目の前で、イギリスが苦しみ果てながら、出かける用意をしている。
「ねえ、無理じゃない?」
フランスがおそるおそる言うと、アミアンが答える。
「これは、馬車でとんでもない苦しみを味わいそうですね」
イギリスはおそらく今、眠気、腰のだるさ、腹痛、冷え、その他もろもろすべての体調不良と闘いながら、鏡台の前の椅子に座っている。
お腹を両手でおさえて、つっぷすようにしている。
ほんと、かわいそう。
二日目だから……。
イギリスが、腹をおさえながら言う。
「馬車は、わたしが用意する」
「わたしって、わたしですか?」
フランスは魔王イギリスの姿をしている自分を指さした。
イギリスが苦しそうに言う。
「そうだ。一番大きくて、良いやつを、用意させろ」
「誰に言えば分かります?」
「そこらへんにいるやつ」
そ、そこらへんにいるやつ。
「帝国の騎士でも、使用人でもかまわないってことです?」
「そうだ」
そう言って、イギリスがまた「うぅっ」と言いながら、腹をおさえた。
うわぁ、こわい。
二日目の威力、こわいわね。
でも、やっぱり、大げさな気がするのよね。
昨日も入れかわった後は、普通に動けたし。そんな、寝込むほどじゃなかったわ。一体どういうことなのかしら。
イギリスがわざと大げさに言っているようには見えなかった。
そんなことをするタイプには見えない。どちらかというと、隠せるなら隠してやせ我慢しそうなタイプに見える。
心配ね……。
フランスは馬車を手配して、支度の済んだイギリスを抱き上げ、私室から馬車まで運んだ。
かけ布で頭までぐるぐる巻きにして運ぶ。
まるで、帝国の皇帝が、何か死体でも運んでいるみたいで、目にした者がみんなおそれるようにする。
フランスは思わず笑った。
面白いわ。
いつも乗る馬車よりも、はるかに豪華な馬車にイギリスをのせて、かけ布をとる。
完全にぐったりして元気のないイギリスがそこにいた。
もうほとんど死体ね。
アミアンが乗り込んできて、イギリスの向かいに座る。
フランスは、イギリスを座席に座らせて、かけ布をしっかりとかけてやってから、アミアンに向かって言った。
「じゃあ、アミアンお願いね」
「はい、お嬢様」
「待て」
フランスが馬車から出ていこうとすると、イギリスがフランスの袖をつかんで止めた。フランスは首をかしげて聞く。
「何か、しておくことでもありますか?」
「いや、ここにいろ」
ここに?
「馬車に一緒に乗れってことですか?」
「そうだ」
「なぜまた?」
イギリスか、腹が痛んだのか、顔をしかめてから、かすれるような声で言った。
「あたためろ」
あたためろ?
あ、なるほど。身体が冷えるから、こっちの身体を側においておけってことね。
フランスは、しばし悩んで言った。
「でも、座席はベッドほどの幅がないから並んでは寝ころべないし……」
フランスが、うーんと考えていると、アミアンが「こうすればいいですよ!」と言って、立ち上がった。
そこらに置いてある、座席とそろいの柄の手ざわりの良いクッションを座席の片側にあつめる。
「お嬢様、ここにもたれるように寝ころんでください」
「靴は?」
「脱いでください」
「はい」
フランスは靴を脱いで、座席に寝転がるみたいにした。
快適~。
アミアンがてきぱきと指示する。
「はい、じゃあ、足をひろげて、陛下がその間で、寝ころびます」
「なるほど! 足ではさむのね」
フランスは両手をひろげて、おいで、をするような恰好をした。
イギリスは、しなしなの状態で、何も言わずに、ちょうど良い場所におさまる。
完全にフランスの身体に背をあずけてもたれ、フランスの手をとり、自ら腹に当てた。
うーん……、これはよっぽどね。
アミアンが、上からくるむようにして、かけ布をかけてくれる。
イギリスが冷えた手を、腹の上にあるフランスの手にぴとっとくっつけるようにする。フランスは、その手を上からはさむようにして、反対の手をのせて、イギリスの冷えた手を温めた。
フランスは満足して言った。
「完璧じゃない? この恰好なら、酔いにくそうだし、腰も背中も手もあったまるわ」
イギリスが、弱弱しい声で言う。
「足がひえる」
ちょっと足の先までは届かないわ。
「アミアン、足側に座ってあげてよ。足はわたしのじゃ届かないから、アミアンの膝の上であたためればいいわ」
「いいですね」
アミアンも並んで、同じ側の席にすわる。
アミアンがイギリスの足を膝にのせて、両手であたためた。
フランスは笑った。
「せっかく、こんなに大きな馬車なのに、三人とも同じ座席でぎゅーぎゅーになっているの、なんか変よね」
「仲良しさんです」
「ほんとね」
「うぅっ」
アミアンとフランスはおしゃべりしつつ、たまにイギリスの苦しみの声を聞きながら、馬車はシャルトル教皇のいる中央の大聖堂へと向かった。
フランスは、魔王イギリスの姿で、フランスの私室のベッドに腰かけていた。
目の前で、イギリスが苦しみ果てながら、出かける用意をしている。
「ねえ、無理じゃない?」
フランスがおそるおそる言うと、アミアンが答える。
「これは、馬車でとんでもない苦しみを味わいそうですね」
イギリスはおそらく今、眠気、腰のだるさ、腹痛、冷え、その他もろもろすべての体調不良と闘いながら、鏡台の前の椅子に座っている。
お腹を両手でおさえて、つっぷすようにしている。
ほんと、かわいそう。
二日目だから……。
イギリスが、腹をおさえながら言う。
「馬車は、わたしが用意する」
「わたしって、わたしですか?」
フランスは魔王イギリスの姿をしている自分を指さした。
イギリスが苦しそうに言う。
「そうだ。一番大きくて、良いやつを、用意させろ」
「誰に言えば分かります?」
「そこらへんにいるやつ」
そ、そこらへんにいるやつ。
「帝国の騎士でも、使用人でもかまわないってことです?」
「そうだ」
そう言って、イギリスがまた「うぅっ」と言いながら、腹をおさえた。
うわぁ、こわい。
二日目の威力、こわいわね。
でも、やっぱり、大げさな気がするのよね。
昨日も入れかわった後は、普通に動けたし。そんな、寝込むほどじゃなかったわ。一体どういうことなのかしら。
イギリスがわざと大げさに言っているようには見えなかった。
そんなことをするタイプには見えない。どちらかというと、隠せるなら隠してやせ我慢しそうなタイプに見える。
心配ね……。
フランスは馬車を手配して、支度の済んだイギリスを抱き上げ、私室から馬車まで運んだ。
かけ布で頭までぐるぐる巻きにして運ぶ。
まるで、帝国の皇帝が、何か死体でも運んでいるみたいで、目にした者がみんなおそれるようにする。
フランスは思わず笑った。
面白いわ。
いつも乗る馬車よりも、はるかに豪華な馬車にイギリスをのせて、かけ布をとる。
完全にぐったりして元気のないイギリスがそこにいた。
もうほとんど死体ね。
アミアンが乗り込んできて、イギリスの向かいに座る。
フランスは、イギリスを座席に座らせて、かけ布をしっかりとかけてやってから、アミアンに向かって言った。
「じゃあ、アミアンお願いね」
「はい、お嬢様」
「待て」
フランスが馬車から出ていこうとすると、イギリスがフランスの袖をつかんで止めた。フランスは首をかしげて聞く。
「何か、しておくことでもありますか?」
「いや、ここにいろ」
ここに?
「馬車に一緒に乗れってことですか?」
「そうだ」
「なぜまた?」
イギリスか、腹が痛んだのか、顔をしかめてから、かすれるような声で言った。
「あたためろ」
あたためろ?
あ、なるほど。身体が冷えるから、こっちの身体を側においておけってことね。
フランスは、しばし悩んで言った。
「でも、座席はベッドほどの幅がないから並んでは寝ころべないし……」
フランスが、うーんと考えていると、アミアンが「こうすればいいですよ!」と言って、立ち上がった。
そこらに置いてある、座席とそろいの柄の手ざわりの良いクッションを座席の片側にあつめる。
「お嬢様、ここにもたれるように寝ころんでください」
「靴は?」
「脱いでください」
「はい」
フランスは靴を脱いで、座席に寝転がるみたいにした。
快適~。
アミアンがてきぱきと指示する。
「はい、じゃあ、足をひろげて、陛下がその間で、寝ころびます」
「なるほど! 足ではさむのね」
フランスは両手をひろげて、おいで、をするような恰好をした。
イギリスは、しなしなの状態で、何も言わずに、ちょうど良い場所におさまる。
完全にフランスの身体に背をあずけてもたれ、フランスの手をとり、自ら腹に当てた。
うーん……、これはよっぽどね。
アミアンが、上からくるむようにして、かけ布をかけてくれる。
イギリスが冷えた手を、腹の上にあるフランスの手にぴとっとくっつけるようにする。フランスは、その手を上からはさむようにして、反対の手をのせて、イギリスの冷えた手を温めた。
フランスは満足して言った。
「完璧じゃない? この恰好なら、酔いにくそうだし、腰も背中も手もあったまるわ」
イギリスが、弱弱しい声で言う。
「足がひえる」
ちょっと足の先までは届かないわ。
「アミアン、足側に座ってあげてよ。足はわたしのじゃ届かないから、アミアンの膝の上であたためればいいわ」
「いいですね」
アミアンも並んで、同じ側の席にすわる。
アミアンがイギリスの足を膝にのせて、両手であたためた。
フランスは笑った。
「せっかく、こんなに大きな馬車なのに、三人とも同じ座席でぎゅーぎゅーになっているの、なんか変よね」
「仲良しさんです」
「ほんとね」
「うぅっ」
アミアンとフランスはおしゃべりしつつ、たまにイギリスの苦しみの声を聞きながら、馬車はシャルトル教皇のいる中央の大聖堂へと向かった。
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