ソッチドッチ ~魔王と聖女の入れかわり! 入れかわれば、本当の姿が見えてくる?~

櫻恭史郎

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第186話 ウリムとトンミムの行方

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 フランスとイギリスの目の前で、大きな机の上に、大量の書物が積み上げられていった。

 フランスは、うずたかく積み上げられた書物の間から、賢者たちの様子を見た。彼らは、小さい声で早口に議論したりしながら、猛然と書物をひらいては読み、ひらいては読みしていく。

 すんごい速さでめくっているけれど、読めているのかしら。
 なんだか、しばらく声はかけないほうが良さそうね。

 フランスは、ひかえめに賢者たちに声をかけた。

「あの、わたしたちも、書物を取ってきますね」

 賢者たちは「わしのおすすめは、政治経済の本棚だ」「ぼくのおすすめは、生活の知恵系の本棚だよ」「わたしのおすすめは、詩の本棚だ。わたしの詩もおいてある」なんて口にしながらも、書物から目を離さなかった。

 フランスは、イギリスの腕をちょんちょんやって言った。

「わたしたちも本をさがしに行きましょ」

「ふむ」

 フランスのうしろにイギリスがついてくる。

 それにしても、ここまで広いと、どこに何があるのやら、ね。

 フランスは、図書館の入り口を入ってすぐのところにいた、管理をしていそうな人たちのところに向かった。手の空いていそうな者をつかまえて声をかける。

「すみません。目的の本がどのあたりにあるか、教えていただきたいのですが」

 人の良さそうな男が、にっこりと微笑んで答えた。

「どんな本をお探しですか?」

「魔術書みたいな、教国では異端扱いになっていそうな本を探しています」

「ああ、それなら……」

 フランスは、わくわくしながら教えてもらった本棚に近づいた。

 うしろからイギリスが言う。

「禁書を読みたかっただけか。とんでもない不良聖女だな」

「人が禁じた書物よ。神が禁じた書物じゃない」

「きみはたまに、教国の人間らしくないな」

「そうかもね。気にならない? 魔術書!」

「帝国でも、その類は読めるからな」

「読んだことあるんだ?」

「まあ、ある」

「ここに、読んだことのあるおすすめの本はある?」

 イギリスが、本棚をしばらく眺めて一冊手に取った。
 古びた、いかめつらしい一冊だ。

 イギリスが、フランスにそれを手渡す。

「これは?」

「悪魔の召喚方法が書いてある」

 フランスは、思わずにんまりと笑顔で、イギリスを見返した。

 イギリスが、フランスの表情を見て笑う。

「そういうのが好きだと思った。召喚するなよ」

 フランスはその一冊を持って、賢者たちのもとに戻った。

 彼らは、まださっきと同じように、猛然と書物をめくりつつ議論している。邪魔をしないよう、すこし離れた場所にイギリスと並んで座る。

「あっちの調べ物を手伝おうかとも思うけれど、なんだか口出ししないほうが良いような気がするのよね。どう思う?」

「彼らなりの方法で議論しているんだろうが、話が飛びすぎて、聞いていてもまったく分からなかった。しばらく、まかせておこう」

 そうよね。
 じゃあ、やっぱり、魔術書を読んでおこう。

 フランスは、わくわくした気持ちでページをめくった。

「ふうん、悪魔の召喚だけじゃなくて、いろんな精霊の呼び出しかたとか、おびき寄せ方、みたいなものまで書いてあるのね。ほんとかしら」

「大体が、でたらめだろ」

「やっぱり、そうよね」

 竜を呼び寄せる方法とか、書いてないかな。

 フランスはどんどん本をめくっていった。
 最後のページにさしかかり、首をかしげる。

「あら?」

「どうした?」

「全部、悪魔とか精霊とか妖精に関することばっかり書いてあったけれど、最後だけ天使だわ」

 フランスは、最後のページを指さしてつづけた。

「しかも、大天使ミカエルの召喚方法が書いてある」

「ほんとに、天使が召喚されるか、見ものだな」

「召喚するために必要なのは、処女の乙女の祈り……」

「ユニコーンみたいだな」

「ほんとね。あとは……」

 そこまで言った時に、ソロンが声をかけてきた。

「フランスちゃん、ウリムとトンミムについて、探すべき場所をしぼったぞ」

 えっ、もう?

「すごいです!」

 フランスは、魔術書を閉じて、賢者たちのもとに行った。
 ソロンが、ひとつの古い書物を手にして言う。

「ここに、ヒントが書かれてある」

「それは?」

 クレオブロスが横から言った。

「これも、聖書のうちの一つだよ。エレデ書と呼ばれている」

 フランスは首をかしげて聞いた。

「聞いたことがありません」

「ははあ。フランスちゃんは今、どちらの国にお住まいかな?」

「教国です」

 ビアスがため息をつきながら、やれやれと言った。

「教国では、エレデ書を聖書とは認めていない。あの国は、自分たちが異端と決めたものは徹底的に排除しているからな。存在ごと知らなくても不思議じゃない」

 フランスは、ソロンの手元にある、古い書物に目をやって言った。

「エレデというと、アダムの系譜のエレデですか?」

 ソロンが、古い書物の表紙をなでながら答える。

「そういう説もある。アダムの子孫であり、エノクの父であるエレデが書いたとされる説もあれば、まったく別のエレデか書いたという説もある。古い書物にはありがちだか、編纂時期や著者ははっきりとしない。ただ、古くからエレデ書と呼ばれている」

「そこに、ウリムとトンミムの在りかが書かれているんですか?」

「いいや。だが、ウリムとトンミムがどんな物なのかについて言及されている」

 なぞの石、ウリムとトンミムについて書かれた書があるなんて。

 フランスはドキドキした気持ちで待った。
 クレオブロスが言う。

「ウリムとトンミムは、それを必要とするものに与えられる、特別な石だ。これを与える役割をもつ天使がいるらしい」

 ビアスもうなずきながら続ける。

「管理しているのは、力のある座天使だとか」

 なんだか、すごいわくわくする話になってきたわね!
 座天使に、与えてもらう必要があるのかしら。

 すると、ソロンが、笑顔で言った。


「というわけで、アロンの墓をあばけ」


 ……。


 え?





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