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第2話
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満員電車に乗るよりもきつい10分間を乗り越えて僕と辰子は通っている学校、第二柏木高等学校に到着した。満員電車乗ったことないけど。
「し、死ぬかと思った......」
「もう、俊也ったら大袈裟なんだから。ほら、時間ギリギリなんだから急いで!」
現在科学世界ーー僕の産まれた世界のことだ。辰子のいた異世界では魔術という技術が発展していたようで、その違いに対応する形でそれぞれ科学世界、魔術世界と呼ばれているーーでは、留学生として異世界からの学生を受け入れている。この第二柏木高等学校もそんな学校のひとつだ。
体の大きな種族でも問題なく授業を受けられるよう広く作られた校庭に着陸した辰子に持ち上げてもらい、3階にある僕らのクラスの窓をノック。こちらの存在に気がついたクラスメイトが開けてくれた所から僕は教室の中に入って急いで自分の席に向かう。教壇の上に先生の姿はない。
「やった、セーフ!」
「じゃねーよ、ボケ」
間に合ったと思い、嬉しさで叫んだ僕の頭頂部が謎の衝撃に襲われる。なぜか僕の席に座っていた担任の守屋瞳先生が、その手に持った出席簿で僕の頭を叩いたからだ。体罰!
「竜宮はまだ出席を確認してなかったから良いとしても、鈴木、お前は駄目だ。遅刻扱いにしておくからな」
「そんな理不尽なぁ」
血も涙もない無慈悲な判断に、思わず抗議の声を上げた僕。その頭をもう1度叩いた守屋先生は、椅子から立ち上がって教壇へと戻って行った。痛む頭をさすりながら僕は自分の席に座る。たんこぶはできてないけれど、このダメージとストレスでハゲないかが心配だ。
「というか、何でまた叩いたんですか。僕、2回目のときは大したことしてないですよね?」
「気分だ、そんなことより出欠の確認続けるぞー、清水」
「ハーイ」
二度目の抗議も軽く流された僕は涙目になりながらも仕方なく着席した。教室内の座席は出席番号の順に並べられているので、今手を上げて返事をした清水さんは僕の目の前に座って......。
「僕まだ呼ばれてないじゃないですか!」
「次、田中ー」
「はい」
僕の文句はあっさりとスルーされ、守屋先生に名前を呼ばれた田中さんが僕の背後で返事をする。あまりの扱いに対してさらなる苦情を言おうとして立ち上がりかけた僕の額にチョークが飛来した。
綺麗に炸裂した白墨をまともに食らった僕は、その衝撃によろけて姿勢を崩しそのまま着席。守屋先生の華麗な一撃にクラス中が感心の声を上げるが、犯人は何食わぬ顔でホームルームを進行する。
「竜宮は確かめるまでもないな、見落とすなんてあり得ん。ハイ注目、静かにしろー連絡事項言うぞー」
一連のやり取りを教室の外から覗いて、ワタワタとうろたえている辰子を横目で確認した守屋先生は、手を鳴らしてざわついていた教室の空気を引き締める。
「今日の体育は女子体育館で身体測定、男子校庭で持久走だ。ミッチリしごいてやるから覚悟しておけ。あとは......倉田」
「ハイ、何でしょう」
「文化祭の企画申請はどうなった?」
「既に生徒会に提出、受理されています。」
守屋先生の問いかけにすかさず答えたのは学級委員の倉田玲雄だ。ハキハキと話す彼は僕と同じく科学世界で生活している人間だ。物静かで頭脳明晰、真面目でスポーツもできる頼れる僕の友人だ。
「流石規範呈示生徒......しっかりしているなぁ......」
「お前も規呈生だろうが、まったく」
思わず呟いた僕を守屋先生が呆れた目でみてくる。規範提示生徒、通称規呈生とは文字通り生活や学業などにおける規範を周囲に示すことを義務付けられた生徒のことだ。異世界から多種族の留学生を受け入れるには様々な困難がある。それらを解決するため、留学生の受け入れを行う学校には政府からいくつかの制度の整備・実施が条件として設けられたらしい。
その内のひとつである規呈生制度は、人類の枠組みがこちらと比べて遥かに広い魔術世界からやってくる留学生達に、科学世界で生まれ育った人間の生徒が自身の行動をもってこちらの社会のルールを示す、つまり模範的生徒を留学生のクラスメイトにしようという主旨の制度なのである。なので僕も色々ちゃんとしないといけないんだけど......。
「連絡事項は以上だ、解散。鈴木はちょっとこっち来い、説教だ。」
ウヘェ。クラスメイト達が各々授業の準備やお喋りをする中、僕は教室から出て行く守屋先生の背中を追いかけて後ろからついて行かなければならないのだった。
「し、死ぬかと思った......」
「もう、俊也ったら大袈裟なんだから。ほら、時間ギリギリなんだから急いで!」
現在科学世界ーー僕の産まれた世界のことだ。辰子のいた異世界では魔術という技術が発展していたようで、その違いに対応する形でそれぞれ科学世界、魔術世界と呼ばれているーーでは、留学生として異世界からの学生を受け入れている。この第二柏木高等学校もそんな学校のひとつだ。
体の大きな種族でも問題なく授業を受けられるよう広く作られた校庭に着陸した辰子に持ち上げてもらい、3階にある僕らのクラスの窓をノック。こちらの存在に気がついたクラスメイトが開けてくれた所から僕は教室の中に入って急いで自分の席に向かう。教壇の上に先生の姿はない。
「やった、セーフ!」
「じゃねーよ、ボケ」
間に合ったと思い、嬉しさで叫んだ僕の頭頂部が謎の衝撃に襲われる。なぜか僕の席に座っていた担任の守屋瞳先生が、その手に持った出席簿で僕の頭を叩いたからだ。体罰!
「竜宮はまだ出席を確認してなかったから良いとしても、鈴木、お前は駄目だ。遅刻扱いにしておくからな」
「そんな理不尽なぁ」
血も涙もない無慈悲な判断に、思わず抗議の声を上げた僕。その頭をもう1度叩いた守屋先生は、椅子から立ち上がって教壇へと戻って行った。痛む頭をさすりながら僕は自分の席に座る。たんこぶはできてないけれど、このダメージとストレスでハゲないかが心配だ。
「というか、何でまた叩いたんですか。僕、2回目のときは大したことしてないですよね?」
「気分だ、そんなことより出欠の確認続けるぞー、清水」
「ハーイ」
二度目の抗議も軽く流された僕は涙目になりながらも仕方なく着席した。教室内の座席は出席番号の順に並べられているので、今手を上げて返事をした清水さんは僕の目の前に座って......。
「僕まだ呼ばれてないじゃないですか!」
「次、田中ー」
「はい」
僕の文句はあっさりとスルーされ、守屋先生に名前を呼ばれた田中さんが僕の背後で返事をする。あまりの扱いに対してさらなる苦情を言おうとして立ち上がりかけた僕の額にチョークが飛来した。
綺麗に炸裂した白墨をまともに食らった僕は、その衝撃によろけて姿勢を崩しそのまま着席。守屋先生の華麗な一撃にクラス中が感心の声を上げるが、犯人は何食わぬ顔でホームルームを進行する。
「竜宮は確かめるまでもないな、見落とすなんてあり得ん。ハイ注目、静かにしろー連絡事項言うぞー」
一連のやり取りを教室の外から覗いて、ワタワタとうろたえている辰子を横目で確認した守屋先生は、手を鳴らしてざわついていた教室の空気を引き締める。
「今日の体育は女子体育館で身体測定、男子校庭で持久走だ。ミッチリしごいてやるから覚悟しておけ。あとは......倉田」
「ハイ、何でしょう」
「文化祭の企画申請はどうなった?」
「既に生徒会に提出、受理されています。」
守屋先生の問いかけにすかさず答えたのは学級委員の倉田玲雄だ。ハキハキと話す彼は僕と同じく科学世界で生活している人間だ。物静かで頭脳明晰、真面目でスポーツもできる頼れる僕の友人だ。
「流石規範呈示生徒......しっかりしているなぁ......」
「お前も規呈生だろうが、まったく」
思わず呟いた僕を守屋先生が呆れた目でみてくる。規範提示生徒、通称規呈生とは文字通り生活や学業などにおける規範を周囲に示すことを義務付けられた生徒のことだ。異世界から多種族の留学生を受け入れるには様々な困難がある。それらを解決するため、留学生の受け入れを行う学校には政府からいくつかの制度の整備・実施が条件として設けられたらしい。
その内のひとつである規呈生制度は、人類の枠組みがこちらと比べて遥かに広い魔術世界からやってくる留学生達に、科学世界で生まれ育った人間の生徒が自身の行動をもってこちらの社会のルールを示す、つまり模範的生徒を留学生のクラスメイトにしようという主旨の制度なのである。なので僕も色々ちゃんとしないといけないんだけど......。
「連絡事項は以上だ、解散。鈴木はちょっとこっち来い、説教だ。」
ウヘェ。クラスメイト達が各々授業の準備やお喋りをする中、僕は教室から出て行く守屋先生の背中を追いかけて後ろからついて行かなければならないのだった。
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