ドラゴンな幼なじみがお節介やきで困っています

生コン樽

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第4話

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「さっきは大丈夫だったのか?守屋先生に他人に見せられないような酷い体罰を頂戴してたんじゃないだろうな」
 3限の体育、ペアでストレッチをしている最中に倉田くんに話しかけられた。背中を押してもらっていた僕はその雑談に応じる。
「もしそうだって言ったら?」
「羨ましい」
「ハハッ、変態め」
 何時だったか何かの本で、天才なんて所詮狂人の別称でしかない、なんて極端な一文を見たことがあるが、倉田くんを見ているとある程度真実の含まれた表現だと思わざるを得ない。
「やめろ、ムラムラする」
 背中合わせで腕を組んだ状態でそういう事を言われると寒気に襲われる。真性のマゾヒストであることを除けば優秀で頼りになる学級委員なのだが、如何せん唯一の欠点が致命的すぎる。性癖をこじらせて自分で自分を虐めた結果が成績優秀・文武両道の真面目な模範生徒だというから笑えない。
「......別に何もなかったよ、ちょっと注意受けただけ」
「そうか、それは良かった。特対持ちのお仕置きなんて想像しただけで......俺みたいのでもない限り拷問だ」
 何を想像したのか、アキレス健を伸ばしながら良い笑顔を浮かべる倉田くん。整った顔をしているので変態でなければモテると思うのだが、本人が自覚した上で改善する気皆無なので意味がない。
「特対持ちの授業中に私語とは良い度胸だな。お望み通り体罰をくれてやろうか?」
 少し離れた場所で他の生徒を指導していた筈の守屋先生がいつの間にか僕らの背後に来ていた。特対とは特殊対応教員免許の略称だ。多種族の留学生の受け入れに際し、人間の指導・教育とは別の技術が求められた為設置された新しい免許だ。この特対、高い学力だけでなく、体力・ある程度の武力、加えて科学世界の顔として美麗な容姿まで求められるとんでもなく取得の難しい免許なのだ。
「やだなぁ先生。友人との積極的なコミュニケーションは規定生の示すべき規範行動ですよ?授業中でもこうした余裕のある場合は推奨の行動です」
 怒気を漏らしながらこちらを睨みつけている守屋先生に、僕は手首と足首をほぐしながら返答する。実際、規定生には不適切な場面でなければ、積極的に会話をする姿勢が求められている。授業中というのはなかなかグレーなゾーンではあるが、この程度なら邪魔にならない筈なので許される範囲だろう。
「ま、確かにそれ程目くじらをたてるようなことでもない」
 想定していたよりもあっさり退いてくれた守屋先生に、僕は安心よりも先に不信に思う。不必要に整った先生の顔を疑り深く見つめていると、次の瞬間嫌な感じの笑顔が浮かび上がったので、それを見て僕は逃げる準備をする。
「それじゃあ校庭3周行って......」
「まぁそう慌てるな鈴木」
 設定された課題をこなす為に走り出そうとした僕の肩を守屋先生がガッチリ掴む。ナニコレ全く動けないんですけど。
「だが、こうも熱心な生徒を誤解したとあっては教師失格だ。お詫びとしてお前らの期待に応えてやろうじゃないか」
「あの、僕は別に、」
「遠慮しなくて良いぞ。というわけで鈴木と倉田は3周じゃなくて5周だ。その場で回ってやりました、は通用せんからな」
 僕は守屋先生の絶妙に嫌らしい課題設定に絶句した。ウチの校庭は広い、今から全力で走らなければ授業終了までにゴールできない設定。裏を返せば全力でやれば終わるということだ。これで100周とか言われたのなら、3周目以降はゆっくり走ればいいだけだったのに。
「ハイ、ありがとうございます先生!」
 隣で元気に返事をした倉田はそのまま走り出した。
「......そーゆうひん曲がった性格してるからいつまでも嫁の貰い手がないんですよ」
「なっ!」
「じゃあ5周行ってきますね!」
 ボソリと捨て台詞を吐いた僕は、守屋先生(35歳・独身・彼氏いない歴30年とか言ってる辺り往生際が悪い)に背を向け先にスタートした倉田を追いかける。
「鈴木、貴様ぁっ!!待ちやがれタップリ折檻してくれるわぁ!」
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