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第8話
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こちらの世界の常識をいい加減覚えろ。そう言いたいのをどうにか我慢して、別の言葉を口にした。
「......わざわざ弁当持ってきてくれてありがとう、助かったよ」
僕はさっさと用件を済ませることで母さんの帰宅を促すルートを選択。帰り道で警察に捕まらないかは心配だけど僕にはどうしようもない。
「はい、どういたしまして~。もうこんなことないように気をつけるのよ~?辰子ちゃんにも迷惑だし~、せっかく作ったお弁当を食べてもらえないのは悲しいんだから~。大体俊也ったらいつも......」
「わかった、わかったから。長話しちゃうと昼休みなくなって、届けて貰ったお弁当も食べる時間なくなっちゃうからさ……」
母さんの手作り弁当をありがたく受け取りながら、お説教を始まらないように止める。届けてくれたのはいいんだけれど、何故それだけのことでこんなに疲れないといけないんだろうか......。まぁ、この大騒動も自業自得か。
「守屋先生~、どうもお騒がせしてしまったようで~すいませんでしたね~。どうかこの子の事よろしくお願いしますね~」
「あー、大丈夫ですよ、これも仕事の内なんで。ところで鈴木さん、春になって暖かくなって来たとはいえ、まだその格好では寒いでしょう。私のコートでよければお貸ししますんで、それを羽織ってお帰りになってはどうですかね?」
余計な事をいいつつ頭を下げる母さんに、気にしなくて良いと伝えて頭を上げさせた守屋先生は唐突に自分の上着を貸すと言い始めた。
「え、でも~そんな、迷惑じゃ~……」
「ご遠慮なさらなくていいんですよ。さ、ついて来てください」
言われた側の母さんは戸惑いながら固辞しようとしたが、守屋先生は素早く母さんの肩に腕を回して優しくホールドして逃がさない。そのまま職員用の更衣室の方に母さんを誘導していく。
「別に寒くないから必要ないのに~」
「いいじゃん、僕が学校に来る時に返しにくればいいんだからさ。ここは素直に先生の好意に甘えるべきだと思うな」
母さんが助けを求めるようにこちらに視線を送って来たが、僕は僕で先生の意図をなんとなく読み取っていたので助け舟は出さない。先生の判断と対応は僕にとっても良い判断なので。
万が一学校からこんな変質者が出てくる所を目撃されれば、各方面からの怒涛の問い合わせと風評被害が学校に押し寄せるに決まっている。そんな事になれば対応に追われるのは先生方だ。最低限通報されないようにしてくれるつもりだろう。こんな格好の人に往来を歩かせられないという普通の感覚も勿論あるだろうが。
「それじゃあね、母さん!まっすぐ家に帰るんだよ!」
守屋先生によって連行されていく母さんにそう声をかけてから、僕は職員室の入り口に目をやる。
「あの人、あいつの母親みたいだぞ?」
「すげー、あんな綺麗でエロい人が家にいるのか......」
「あれ?あいつ一年の規定生だろ?サキュバスから生まれる子供って全部女になるはずだぞ?」
「まさか男装......?でも規定生なら純血の人間だろ?」
「そもそもサキュバスの子供にしては冴えない顔だな……美人が多いことでも有名な種族では?」
母さんを見る為に集まっていた集団の注目がそのままこちらに集まっていた。新聞部まで来てる......。どうやら僕の平穏な学校生活は無事天に召されたらしい。チクショウ。淫魔ことサキュバス絡みの事件である、ヤハウェにでも祈ればなかったことにしてくれないだろうかと、母さん手製の弁当を手に考える僕であった。
後、最後の奴、冴えない顔で悪かったな、こっちにも色々あんだよ。
「......わざわざ弁当持ってきてくれてありがとう、助かったよ」
僕はさっさと用件を済ませることで母さんの帰宅を促すルートを選択。帰り道で警察に捕まらないかは心配だけど僕にはどうしようもない。
「はい、どういたしまして~。もうこんなことないように気をつけるのよ~?辰子ちゃんにも迷惑だし~、せっかく作ったお弁当を食べてもらえないのは悲しいんだから~。大体俊也ったらいつも......」
「わかった、わかったから。長話しちゃうと昼休みなくなって、届けて貰ったお弁当も食べる時間なくなっちゃうからさ……」
母さんの手作り弁当をありがたく受け取りながら、お説教を始まらないように止める。届けてくれたのはいいんだけれど、何故それだけのことでこんなに疲れないといけないんだろうか......。まぁ、この大騒動も自業自得か。
「守屋先生~、どうもお騒がせしてしまったようで~すいませんでしたね~。どうかこの子の事よろしくお願いしますね~」
「あー、大丈夫ですよ、これも仕事の内なんで。ところで鈴木さん、春になって暖かくなって来たとはいえ、まだその格好では寒いでしょう。私のコートでよければお貸ししますんで、それを羽織ってお帰りになってはどうですかね?」
余計な事をいいつつ頭を下げる母さんに、気にしなくて良いと伝えて頭を上げさせた守屋先生は唐突に自分の上着を貸すと言い始めた。
「え、でも~そんな、迷惑じゃ~……」
「ご遠慮なさらなくていいんですよ。さ、ついて来てください」
言われた側の母さんは戸惑いながら固辞しようとしたが、守屋先生は素早く母さんの肩に腕を回して優しくホールドして逃がさない。そのまま職員用の更衣室の方に母さんを誘導していく。
「別に寒くないから必要ないのに~」
「いいじゃん、僕が学校に来る時に返しにくればいいんだからさ。ここは素直に先生の好意に甘えるべきだと思うな」
母さんが助けを求めるようにこちらに視線を送って来たが、僕は僕で先生の意図をなんとなく読み取っていたので助け舟は出さない。先生の判断と対応は僕にとっても良い判断なので。
万が一学校からこんな変質者が出てくる所を目撃されれば、各方面からの怒涛の問い合わせと風評被害が学校に押し寄せるに決まっている。そんな事になれば対応に追われるのは先生方だ。最低限通報されないようにしてくれるつもりだろう。こんな格好の人に往来を歩かせられないという普通の感覚も勿論あるだろうが。
「それじゃあね、母さん!まっすぐ家に帰るんだよ!」
守屋先生によって連行されていく母さんにそう声をかけてから、僕は職員室の入り口に目をやる。
「あの人、あいつの母親みたいだぞ?」
「すげー、あんな綺麗でエロい人が家にいるのか......」
「あれ?あいつ一年の規定生だろ?サキュバスから生まれる子供って全部女になるはずだぞ?」
「まさか男装......?でも規定生なら純血の人間だろ?」
「そもそもサキュバスの子供にしては冴えない顔だな……美人が多いことでも有名な種族では?」
母さんを見る為に集まっていた集団の注目がそのままこちらに集まっていた。新聞部まで来てる......。どうやら僕の平穏な学校生活は無事天に召されたらしい。チクショウ。淫魔ことサキュバス絡みの事件である、ヤハウェにでも祈ればなかったことにしてくれないだろうかと、母さん手製の弁当を手に考える僕であった。
後、最後の奴、冴えない顔で悪かったな、こっちにも色々あんだよ。
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