死町

雌殺し編

第三話「悲劇」

　愴璽はヨダレを垂らしながら笑った。

「ねぇ、何持ってるの？」

　何かを持った愴璽は答えた。

「えぇ？金属バットだよ…？」

　愴璽は金属バットを振り上げ、床に叩きつけた。

「……来いよぉ……楽に逝かせてやるからよぉ…」

「……来ないで、ねぇ…」

　京香はすぐ近くにあった椅子を持ち上げ、

「来ないで！」

と叫び、持ち上げた椅子を愴璽目掛けて投げた。

　投げた椅子は愴璽まで届かなかった。

「てめぇ、何しやがる？！」

　愴璽は発狂し、京香に襲いかかった。

「いゃぁぁぁぁ！来ないでぇぇぇぇ！」

　京香は教室から出て、死に物狂いで走った。

　何がなんだかわからない。京香は物陰（廊下の壁）に隠れた。

　愴璽は京香を見失った様で、京香の目線のさきには居なかった。

　京香はため息を吐いた。その時、

「居たぁ…逃げんなよぉ…」

　京香の背後には金属バッドを持った愴璽が立っていた。

「愴璽…さん……」

「死ねぇ！」

　愴璽は京香を金属バッドで殴った。血が飛び散って、壁に付着する。

「死ね！死ね！死ね！死ね！死ね！」

　死ねと言う度に、金属バッドで殴打する。

「あははははは！殺したぞ！ようやく殺せた！」

　愴璽は金属バッドを投げ、

「どうだ！殺したぞ？！」

と言って叫んだ。


　──後日。高安林三郎の部下の前沢まえさわは高安に、

「先輩。カメラの映像です」

と言い、スマートフォンに共有した監視カメラの映像を、高安に見せた。

「ご苦労様」

　高安はじっくりと映像を見た。

「なるほど。容疑者は大月愴璽だな」

「あの時の第一発見者が今度は容疑者ですか…」

「大月愴璽の身柄は？」

　すると前沢は顔の表情を変え、

「家に帰ってないそうです」

と告げた。

「行方不明なのか？！」

前沢は頷いた。

「あの事故の第一発見者は撲殺されて、もう1人は失踪か。なんなんだこの事件は」

高安はため息を吐いた。


──雌殺し編　終──