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後編 青年と大精霊
20,理不尽な魔物
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小さくなったフレイムトルネードは勢いよく何個もの巨大な火球を勢いよく飛ばした。
そう、アーロルの豪雨は局所的であり、少し離れれば一滴の雨すら降っていないのだ。
そこに火球が撃ち込まれれば当然燃え上がる。
「そんな、おい、ふざけるな! ああ、その木は昔俺が倒木をどかして日光が当たるようにした、あの木……」
ライアと会って二度目の時に、アーロルが倒木をどかすことで日が当たるようになった小さな芽。
それが成長ししっかりとした一本の木になるまでアーロルはずっと気にかけていたのだ。
「おい、おいおい、ふざけんなよ、なんなんだよ! 何の恨みがあるんだよ! おかしいだろ!」
アーロルの目からは涙がこぼれ落ちる。
いつしか雨はやみ、彼の目から落ちる涙はすぐに乾くようになった。
アーロルの前には未だ小さな竜巻が回っていて、横にも、後ろにも至る所から火が上がっている。
山火事と何も変わらない悲惨な状況。
「おい、頼むからもうやめてくれ。別にお前は森を喰わなくたって生きていけるんだろ? 魔物を喰うのでも強くなれるんだろ? なあ、わざわざ森を相手にしなくてもいいじゃないか。」
アーロルが何を話してもフレイムトルネードはそれに答えず、次々に火球を放出する。
そして、再びフレイムトルネードは動き出した。
アーロルは急いで後退する。
しかしアーロルの行く手にもすでに火が回っているのだ。
「ははは、そうか、こいつ、俺を嵌めたんだな。まったく気づかなかったわ。」
さっきから無造作に火球を放出しているように見えたが、実際は違ったようだ。
完全にアーロルの周りだけに火が上がっている。
炎は赤いが、魔物がだす炎は温度がかなり高いのだ。
とても勢いで突っ込んで生き残れるような温度じゃない。
前から迫る竜巻。
後ろで囂々と燃え盛る炎の壁。
徐々に徐々にその内側が狭くなっていく。
熱線にやられて一寸先の枯れ木に火が付く。
その焼け焦げたにおいが彼の鼻に辿り着いた。
「ああ、ここで終わるんだな……」
もうほとんど魔力は残っていない。
しかもここまで広範囲に火を撒かれてしまっては、有効な魔法はほとんどない。
「あと少しでも魔力があったら――」
最後の手。
それを使うのにすらわずかに魔力が足りなかった。
何か、何かあと一つ。
魔力を得られる方法はないだろうか――
ふと、いつもライアからもらっている蜜を思い出した。
あの蜜はもともと森の命を凝縮したものだと言っていた。もちろん木々を生かすのに優先して使われるが、余りというのは案外あって、それをライアがアーロルにあげている、と。
あれには膨大な魔力が込められているが、しかし森の命だというのならこのあたりの木だって魔力を持っているはずだ。
そう考えて、何とかまだ緑色の葉っぱが残っている木のにぼって葉をむしり取って口に入れた。
(行けるーー!?)
わずかだが、確かに感じる魔力。
もはや味覚もなくなったアーロルは必死にその木の葉を食べ続けた。
「貴様! これですべては終わりだ!! 貴様を殺す償いとして俺の命もくれてやる!!!!!」
無我夢中に、彼は魔法を唱えた。
数分後、辺りに豪雨が降り出した。
しかし、その範囲は先ほどのものの比ではない。
森の半分もを覆う、絶大なもの。
これは人類が施した雨の中でも最も強いもののうちの一つだった。
「ははは、ほらみろ、もうほとんど火は消えかかっているぞ……俺の勝ちだ。」
史上最強の人工雨。
その代償は、本来彼の生命維持使われるはずの多大な魔力である。
そう、アーロルの豪雨は局所的であり、少し離れれば一滴の雨すら降っていないのだ。
そこに火球が撃ち込まれれば当然燃え上がる。
「そんな、おい、ふざけるな! ああ、その木は昔俺が倒木をどかして日光が当たるようにした、あの木……」
ライアと会って二度目の時に、アーロルが倒木をどかすことで日が当たるようになった小さな芽。
それが成長ししっかりとした一本の木になるまでアーロルはずっと気にかけていたのだ。
「おい、おいおい、ふざけんなよ、なんなんだよ! 何の恨みがあるんだよ! おかしいだろ!」
アーロルの目からは涙がこぼれ落ちる。
いつしか雨はやみ、彼の目から落ちる涙はすぐに乾くようになった。
アーロルの前には未だ小さな竜巻が回っていて、横にも、後ろにも至る所から火が上がっている。
山火事と何も変わらない悲惨な状況。
「おい、頼むからもうやめてくれ。別にお前は森を喰わなくたって生きていけるんだろ? 魔物を喰うのでも強くなれるんだろ? なあ、わざわざ森を相手にしなくてもいいじゃないか。」
アーロルが何を話してもフレイムトルネードはそれに答えず、次々に火球を放出する。
そして、再びフレイムトルネードは動き出した。
アーロルは急いで後退する。
しかしアーロルの行く手にもすでに火が回っているのだ。
「ははは、そうか、こいつ、俺を嵌めたんだな。まったく気づかなかったわ。」
さっきから無造作に火球を放出しているように見えたが、実際は違ったようだ。
完全にアーロルの周りだけに火が上がっている。
炎は赤いが、魔物がだす炎は温度がかなり高いのだ。
とても勢いで突っ込んで生き残れるような温度じゃない。
前から迫る竜巻。
後ろで囂々と燃え盛る炎の壁。
徐々に徐々にその内側が狭くなっていく。
熱線にやられて一寸先の枯れ木に火が付く。
その焼け焦げたにおいが彼の鼻に辿り着いた。
「ああ、ここで終わるんだな……」
もうほとんど魔力は残っていない。
しかもここまで広範囲に火を撒かれてしまっては、有効な魔法はほとんどない。
「あと少しでも魔力があったら――」
最後の手。
それを使うのにすらわずかに魔力が足りなかった。
何か、何かあと一つ。
魔力を得られる方法はないだろうか――
ふと、いつもライアからもらっている蜜を思い出した。
あの蜜はもともと森の命を凝縮したものだと言っていた。もちろん木々を生かすのに優先して使われるが、余りというのは案外あって、それをライアがアーロルにあげている、と。
あれには膨大な魔力が込められているが、しかし森の命だというのならこのあたりの木だって魔力を持っているはずだ。
そう考えて、何とかまだ緑色の葉っぱが残っている木のにぼって葉をむしり取って口に入れた。
(行けるーー!?)
わずかだが、確かに感じる魔力。
もはや味覚もなくなったアーロルは必死にその木の葉を食べ続けた。
「貴様! これですべては終わりだ!! 貴様を殺す償いとして俺の命もくれてやる!!!!!」
無我夢中に、彼は魔法を唱えた。
数分後、辺りに豪雨が降り出した。
しかし、その範囲は先ほどのものの比ではない。
森の半分もを覆う、絶大なもの。
これは人類が施した雨の中でも最も強いもののうちの一つだった。
「ははは、ほらみろ、もうほとんど火は消えかかっているぞ……俺の勝ちだ。」
史上最強の人工雨。
その代償は、本来彼の生命維持使われるはずの多大な魔力である。
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