獅子騎士と小さな許嫁

yu-kie

文字の大きさ
28 / 58
獅子騎士の小さな花嫁へ編(2)

28.

しおりを挟む





そこは甘い臭いを漂わせるお菓子の工場。

 馬を外で出迎えた職員に預け…アルトは外で馬と待機し、ラパスとクランはもう1人の職員の案内で中へとはいった。

 工場は壁沿いに2階への通路はあるが2階の通路以外は吹き抜けになっていて天井はなくその遥か先にある屋根には煙突の口を思わせる穴がいくつも見え…
クランとラパスは2階の通路から一階の作業行程を見学した。

 長いテーブルで生地をこねる作業員。それを鉄板にのせて釜へと運ぶ作業員。釜の火加減を見る作業員。近くにある焼き菓子に使うだろう巨大な円形の入れ物の中にはクリームらしきものが入っていた。

「ふあ~すごいです!あのクリームにも興味があります!」

 クランは焼き菓子の作る過程を目を輝かせてみていた。それを暖かい眼差してラパスは見守り二人は一階の完成品の並ぶ部屋に通され…目にした完成品の数々。ジャムやクリームがサンドされた焼き菓子達。色合いと香りがクランの心を鷲掴みにした。

 客間に案内され席につくと、お茶とお菓子が出され…クランは工場長からもらった菓子をパクパクと食べた。

「はわあ~私の食べたことがない味です!甘さと辛さが~絶妙です!んくぅ~。隠し味は何を使ってるのですか?」

「王女様でもお教えできない企業秘密です。」

「そうですか~次のお茶会にはこちらのお菓子を候補にさせていただきます。」

「ありがとうございます。その際は最高のお菓子を提供いたします!」

「うふふ。ありがとう。」

「クラン…そろそろ行こう。工場長忙しいところ悪かったな。感謝する。」

ラパスの殺気にも思える視線に慌てた工場長は直立し深々とお辞儀をした。

「本日はお越しくださりありがとうございました!」

「ん。」

  ラパスはいたって冷静。獅子騎士と呼ばれる…由縁である厳つい風貌でたたずみ、小さなクランはラパスにてを引かれて工場をあとにした。

 外で待っていたアルトが入り口で出迎えるとクランは上機嫌にアルトの前にかけよった。

「アルトさん!工場ってすごいですね!感動しました。あ、口開けてください。」

「楽しかったのですね、良かったです…え、口をですか?こうですか?」

 アルトは前屈みになり、クランの手の届く位置になると、クランはお菓子の入った袋に手を入れ…焼き菓子を一つ取り出しアルトの口に挟ませた。

「はふ?もぐもぐ。ごっくん。んなぁ!うまい!」

「そうでしょ~ふふふ。」

 ラパスはその光景に…密かに嫉妬の炎を燃やしていた。

(アルトめ…同姓だからとクランに近づきすぎだ!少しは遠慮しろ!)

 クランはふと背後で固まるラパスの様子に気づき…

「ラパス様、先程はお菓子を食べてませんでしたね…はい。」

 クランはお菓子の入った袋をラパスに差しだし紙の口を開けてお菓子を取り出しやすいようにラパスに差し出した。

(私は口に運んでもらえないのか…)

  袋にてを伸ばさず…残念そうにするラパスにクランは待ちきれなかったのか袋から焼き菓子を取り出した。

「ラパス様…はい。」

 手にもつ焼き菓子をラパスの口に届くように背伸びし、差しだし…クランに届くように前屈みになったラパスは嬉しさから…思わずクランの指ごと焼き菓子を口に含んだ。

「ひゃっ。」

「パクっ!」

 クランの指がとっさに口から抜かれ…

「ムシャムシャ、ゴクン。」

 ラパスは菓子を噛み砕き呑みこみ…顔を紅くしたクランに謝罪した。

「すまない、嬉しくて飛び付いてしまった。」

「そうなんですね…ふふふ。私ごと食べられちゃうとおもいました。」

 ラパスがクランを馬にのせて後ろに乗った状態で…

 クランの言葉と…間近に座るクランの体温を感じ…思わず…理性を飛ばしそうになり、こらえたのだった。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

【完結】 大切な人と愛する人 〜結婚十年にして初めての恋を知る〜

紬あおい
恋愛
結婚十年、子どもも授かり、日々執務と子育ての毎日。 穏やかで平凡な日々を過ごしていたある日、夫が大切な人を離れに住まわせると言った。 偶然助けた私に一目惚れしたと言い、結婚し、可愛い子ども達まで授けてくれた夫を恨むことも憎むこともしなかった私。 初恋すら知らず、家族愛を与えてくれた夫だから。 でも、夫の大切な人が離れに移り住んで、私の生き方に変化が生まれた。 2025.11.30 完結しました。 スピンオフ『嫌われ悪女は俺の最愛〜グレイシアとサイファの恋物語〜』は不定期更新中です。 【2025.12.27追記】 エミリオンと先に出逢っていたら もしもの世界編は、諸事情により以下に移動しました 『今度は初恋から始めよう〜エミリオンとヴェリティのもう一つの恋物語〜』 よろしければ、ご訪問くださいませ いつもありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡

隠れた花嫁を迎えに

星乃和花
恋愛
(完結済:本編8話+後日談1話) 結婚式を控えた同居中の婚約者・リリィには、ひとつだけ困った癖がある。 それは、寝癖が直らないだけで、角砂糖を落としただけで、屋敷のどこかに“こっそり”隠れてしまうこと。 けれど、完璧超人と噂される婚約者・レオンは、彼女が隠れるたび必ず見つけ出し、叱らず、急かさず、甘く寄り添って迎えに来る。 「本当に私でいいのかな」——花嫁になる前夜、ベッドの下で震えるリリィに、レオンが差し出したのは“答え”ではなく、同じ目線と温かな手だった。 ほのぼの王都、屋敷内かくれんぼ溺愛ラブ。 「隠れてもいい。迎えに行くから。」

処理中です...