狂暴騎士と小さな許嫁

yu-kie

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 この日ミアは客殿の私室のベッドで眠り続けており、専属侍女はミアの様子を見に度々部屋を訪れていた。

コンコン
「よろしいかしら。」
「これはこれは公爵夫人様。姫様は、体調を崩されて今は薬で眠っております。」
「まあ。お見舞いにこれを。ミア様はかわいいものが好きだと聞いたので、この子をミア様に差し上げたくて参りましたの。渡してくださるかしら?」

 メリーの手に持つ大きな篭から現れたのは、大きなくまのぬいぐるみで、全身淡いピンク色の短い巻毛。

 専属侍女アンナはそれを受け取ると深々と頭を下げ、去ってゆくメリーを見えなくなるまで見送った。

 アンナは、部屋に入りミアの枕元に受け取ったぬいぐるみをそっと置くと、スヤスヤ眠るミアの側で椅子に座り祈っていた。

「どうか厄介なことが起きていませんように!」

 そう祈る中、通路から接近する力強い足音に、アンナは驚き立ち上がると同時に部屋の前で、足音は止まった。

「ミア王女!俺だカイト・シア・テイマスだ。」

 扉の外の大きな声に、アンナは、恐る恐る扉を開けた。

「姫様はお薬で…」
「そこにいるのか?王女に一言話がしたいのだが…。」
「あのぉ…小鳥を連れてきてくださりありがとうございます、す、少しだけお待ちくださいませませっ!!」

 カイトはその手に乗った小鳥をアンナに差出しアンナに詰め寄れば、アンナは、今にも泣きそうな顔をしながらも小鳥をそっと自分の手に乗せカイトを待たせたまま部屋へと駆け込んだ。小鳥をベッドに眠るミアの胸元へと置けば、小鳥は囀りながら無数の光の粒となりミアの体の中へと消えた。

「姫様、起きてください。」
「んんん…」
「カイト様にご挨拶を。さあお着替えをっ。」

 ベッドから起きたミアは、あれよあれよとアンナの手によりくるくると回されるように着替が済み、薄いレモン色のシンプルなドレス姿に。治らなかった寝癖が触覚のように1ヶ所クルンと巻き上がり、アンナは両手で顔を覆った。

「姫様、これ以上は殿方を待たせられません。」
「ええ。」

 ミアは鏡を見ながら笑顔で答えると、アンナは部屋の扉を開けた。

「お待たせいたしました。準備ができましたので中へお入りください。」

 迎えたミアの1ヶ所気になる寝癖に、カイトは見てはいけないものを見てしまったかのように、思わず視線を反らせば、ミアはカイトの間近に接近し、パッチリした大きなオレンジ色の瞳を輝かせて見上げるように笑顔を向けた。

 (頼むから俺に構わないでくれ…なぜ俺に懐く。)

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