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しおりを挟むカイトは午前の鍛錬の後、夕方まで予定が空いていることもあり急ぐように客殿に向かった。
「昼食の時間までまだ少し余裕がありそうだ。昼食前に様子を見に行けば、長居しなくて済むだろう…」
カイトは女性の扱いに詳しくないため、長居しなくて済むにはどうすれば良いか考えた末の結論だった。
客殿の庭に着けばミアが慌ただしく護衛の騎士と何処かへ向かう様子。
「なんだ…様子がおかしい、向こうにもいなかったか?…はっ!」
カイトは通り過ぎた場所に警備していたミアの護衛の騎士と同じ人物がミアと揉めているのを見ると…それが偽物であると察した…気がつけば、その手は腰に下げた剣の柄を握りしめていた。
それは一瞬の出来事。
カイトは目に見えぬ速さで駆け出し、ミアを囲むように出現した黒い影にザッ!と抜いた剣を右へ左へ、風を切るように振り下ろしていた。
カイトの存在に気がつけなかった影たちはカイトの振り下ろした剣の刃を受け次々に悲鳴を上げ地面に崩れ倒れていった。
地面に描かれた魔法陣は赤く染まった地面に黒く光る。次の瞬間倒れた黒い影たちは魔法陣に吸い込まれてゆき…ミアもまた、あしもとが歪み吸い込まれはじめていた。
「ミア王女!自分に魔法をかけろ!」
「その声はカイト殿下!そんな事…」
ミアが目を開けた先にカイトが映り込む。
「ミア王女!君の魔法は鳥の羽根を生み出す。なら翼だってうみだせるんじゃないか!」
「まあっ。カイト殿下凄いです!やってみます。」
危機感の無いミアの声にカイトは苦笑いしながら両手を広げた。
「ここまで飛んできたら俺が受け止める!飛ぶんだ!」
ミアは体内に魔力を集中させた。
白い光がミアを包み、ミアの背中から大きな翼が2枚、左右対称に出現した。翼が力強く羽ばたくと、ミアを空へと押し上げ魔法陣に飲み込まれていた足元も抜け出した。
ミアの周りをふわふわと…綿毛が雪のように舞いだし、それはとても幻想的な光景だった。
ミアは、なれない翼を羽ばたかせ、カイトの元へたどり着くと、翼は消え…カイトの腕の中へと包み込まれるように抱きしめられた。
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