元悪徳魔導士は白猫魔女の愛妻を持つ

yu-kie

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森に増えた愉快な家族の話

20 迷子の騎士

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 二人の魔女は猫の姿で森の遺跡の侵入者はいないか、木々に隠れ風にのり森の枝を飛び移り巡回した。

 森半分をグリアが、あとの半分をルイが偵察し、ルイは森の外から青年騎士が負傷したまま盗人を追い森へと迷い込むのを目撃した。

「こんな所に逃げ込むなんて…深追いしてしまったか、団長に叱られるな…」

 足を負傷している騎士は右足を少し引きずりながら迷いこんだ森の切り株に腰を掛け休息をとっていると傷から滲み出る赤い液体のにおいが漂い、騎士はあっという間に囲まれた。

森の狼に囲まれ、男は命の最後を悟るなか、その時森の木々がざわざわと揺れ始め、不気味な猫の声が森に響き渡ると、狼達は男から離れていった。声の主が木の枝から地上へと飛び降り、そこに現れたのは額に四つ葉の模様を持つ灰色グレーの猫だった。猫は背筋を伸ばし澄ましたように上品に歩いて男の前で立ち止まった。

「騎士さん、こんなところで寝ちゃ、ダメですよ。」
「あなたは?」
「私は森を守る魔女の1人です。ルイと言います。このままでは危険です。魔女の家で手当てをいたします。」

 灰色猫は風の渦に包まれ、猫は灰色の髪色の女性へと姿を変えた。

「立てますか?腕を私の肩にのせてください。今から転移します。」
「すみません…。」

 魔女を名乗る元魔導士のルイは騎士をつれその場から消え、無事に森の奥の家へと転移したのだった。

 ***

 こうしてグリア達と住む家に戻ったルイは騎士の介抱を始めた。

 この森では時々負傷した迷い人を保護し介抱したり、魔女を訪ねて治療の依頼があったりするため、医務室が作られた。

 消毒液の匂いがする部屋のベッドの端に座る騎士は足の治療で履いていたズボンを脱ぎ、足元に置かれた篭に入れ静かに、治療が終わるのを待っていた。足の怪我の治療をしている足元にしゃがむ少女を思わせる綺麗な容姿の魔女は礼儀正しく優しかった。

「ルイ。帰ったよ。」

 家の扉が開き、白猫とグリアと、捕まえた盗人の回収に出ていたジンが現れ、治療を終えたルイは立ち上がり、入り口へと駆け出した。

「ジンさんすいません。」
「いいよ、たまには奥さんの手伝いしないと。で、青年の傷の具合はどうだい?」
「少し深かったので、回復を早める薬草を塗って包帯を巻きました。」
「どれどれ?」

 ジンは医務室を覗くと、ベッドでズボンを履こうとしている青年騎士をみて、眉に皺を寄せた。

「足の治療ならそのズボンを破けば良かったんじゃないか?」
「いえ、大事な騎士様の服ですから。」
「すいません。」

 ルイが騎士の装いに当然のように平然とジンに答えれば、騎士の青年は痛みを我慢しながら慌ててズボンを履き、ジンの前に立ち深々と頭を下げた。

「ルイはなんとも感じないのかな?」
「え?」
「嫌なら僕が断れば良かったんです…すいませんでした。」

 ルイはどうやら異性を意識したことが無いようで、動揺しないルイと、あきらかに恥ずかしがっていたと思われる青年騎士は頬を火照るほどに紅く染めていた。

「なんか、すまなかったね。ルイ、あとは俺が青年といるから、駐在所まで行ってきてくれるかな?」
「はい!グリアさんのサポートですね?行ってきます!」

 ルイは慌ただしく家を駆け出し、扉がしまる音にジンは深いため息をついた。

「俺は、この森のもう1人の魔女、グリアの夫、ジン。君は?」
「はい!僕は森の外にある町を守る騎士です。バルト・ユアと言います!」
「そうか、若いね。」
「今年騎士の試験に受かって成り立てなんです。19歳でなりたてなんて…遅いくらいなんです。怪我くらいで盗人を逃すなんて…いいとこ見せたくて、挙げ句迷子になりました。」

 ジンは青年間近な若い騎士の頭をぐしゃりと撫でた。

「ルイは最年少魔導士から始まり今では魔女の称号を持つんだ。男の子は弱い子に惹かれるからね、その分異性との交流もないみたいでね…ルイは多分男性を同等に見ている節があるようだね。まあ、ルイなりに君を気遣ったつもりなんだ、悪く思わないでやってくれるかな?」
「はい…あのぉ~ジンさん、ルイさんは強くて、礼儀正しい魔女なんですね。」

 若い騎士バルトは少し恥ずかしそうにうつむき、顔を少し紅くしていた。

「ルイはいいこだよ。仲良くしてやってくれるかな?」
「はい!」

 若い騎士の無垢な笑顔にジンは何故だかとても癒されたのだった。

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