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しおりを挟む歳よりも幼く見える小柄なスティアは自室で家庭教師から勉強を教わっていた。
「ルシア先生。父様の管理している“とりで”はいくつあるんですか?」
現在地理の授業中、スティアの父が治める領地の勉強をしていた。成人の美人女教師ルシア・フラシアは地図を広げ丁寧にスティアに教えた。
「はわわあ~父様は国境の安全のために活躍されてるのですね。どんなことをされてるのかしらぁ。」
スティアは目を輝かせ、地図をくいるように眺めていた。
「スティアお嬢様、このお屋敷は塀に囲まれているから安全なのです。リューイ・メディアン様のお力でこの国は守られていると言っても過言ではないのです。さて、今日の授業はここまでといたします。」
「ルシア先生。ありがとうございました。」
スティアは席を立つとペコリと頭を下げ、すぐに顔を上げると満面の笑みをルシアに向けた。
ルシアは頬を緩ませながらスティアに頭を下げて部屋を出た。ルシアは敷地内の侍女達と同じ寮に暮らしているため、そこへと帰るのだが、屋敷を出て振り返るルシアはスティアの部屋の窓の辺りを見上げると、小さなスティアが窓から身を乗り出して手を振り、ルシアはそんなスティアを愛しく思いながら小さく手を振り返し、背中を向け、帰路についた。
スティアには誰にも話していない秘密がある。それは前世の記憶があることと、その前世は魔王だったとゆうこと。
スティアは窓から帰ってゆくルシアを見送りながら窓に肘をつき顔をのせ表情を崩したまま空を眺めた。
(お父様が守ってくださるから私はいつも平和に暮らせているのね。塀の外はそんなに危険なのかしら?)
スティアは前世の戦いばかりだった頃と平和にのんびりできる今の暮らしを比べながら、改めて父に感謝した。
(お父様に何かあるといけないから私も力を身に着けたほうが良いかしら?前世の能力の生み出し方を思い出せたら、少しは役にたてるかも。皆が見ていないところで少しずつ練習してみましょ!)
「よしっ!」
スティアは1人言い聞かすように言葉を発し、窓を閉め父を出迎えるために正面玄関へと向かった。
「旦那様!奥様旦那様が!」
「あなた!どうなさったの?」
帰宅したリューイは腰を負傷し服を赤くにじませ、ライカに支えられていた。駆けつけたスティアは背後にまわった母の両手で目を覆われ、父の姿が見えず、懸命に両手を剥がし父の姿を視界に入れようともがいた。
「やん!や~!離して、父様わぁ~!!ん~!」
母の手から解放されると、そこには父とライカの姿もなくなっていた。
「ぐすん…あれ?父様は?」
「殿下がお部屋に連れてゆかれたのよ、お部屋で治療しているの、良いと言われるまでは入ってはいけません。」
「そんなぁ~」
スティアは平和に暮らしていたため、塀の外がどれだけ危険な場所なのか、この日を境に少しずつ知ってゆくことになるのであった。
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