白薔薇騎士と小さな許嫁

yu-kie

文字の大きさ
3 / 26

しおりを挟む

 父リューイ・メディアンは深手を負って3週間は安静にするよう言われて、療養1週間ほど立つ頃、スティアは毎日庭の隅で隠れるようにして前世の力を発動させるために精神を集中させようと試行錯誤していた。

「どうして。記憶どうりにやってるのに、何もできないの…ひっく。えっぐ。ぐすん。」

 スティアが泣き崩れると、ルルとキキがどこからか駆け寄りスティアを挟み寝転がり、もふもふの毛で包みこむとスティアとそのまま眠り始めた。

「健気だな。」

 そこに現れたのはライカ・ビルタ。リューイと辺境の地を守る彼は、リューイの様子を見にメディアン邸に訪れていた。窓の外を見れば庭の植木の影に隠れるようにして魔法の練習をしている(そう見えている)スティアの姿が目に入り、思わず庭に足を向けた。

 ライカが近くにゆく頃にはスティアは疲れて狼の毛に埋まるようにすやすやと眠っており、ライカは気持ち良さそうに眠るスティアを間近でしゃがみこみ眺めていた。鉄壁無表情なライカは思わず手を伸ばし、恐る恐る人差し指でスティアの頬を優しく突いた。

 ワインレッドの長い髪を後ろに束ねた白い騎士服のライカは塀の外では気を抜けずに過ごしていたが、この時ばかりは緊張感もなく、スティアの頬の弾力に思わずくすりと笑みがこぼれる。

「塀の中は今日も平和だな。この平和を守るためにも…もっと強くならなくては…」

 ライカは小さくつぶやくと、スティアのまぶたがピクリと動き、ゆっくりと目を開けると、視界に入る鉄壁無表情に戻ったライカがしゃがんだままじっとスティアを見つめていた。

「ほへ?はっ!ライカ様」
「スティア嬢は何をしていたの?」
「見ていたのですか?」
「うん、なんだか魔法の練習をしているように見えたのだけど…?」
「はい。あ、えっと…前世の力を…発動できないかと…。」

 ライカは首を傾げ少し考えた後、夢の話かと解釈した。

「スティア嬢、夢の人…否、前世の人はどんな人か知らないけど、発動できないのは今のあなたの体と違うからじゃないかな?」
「あっ。そうかも!前世は人間じゃなかったし、邪悪な力を持っていたからかもしれませんわっ。」

 ライカは一瞬言葉を無くし目をぱちくりさせ、脳内では混乱中だった。

(小さくて皆に愛されて育ったお嬢様がどんな夢を見てるんだ?)

「ああ。今のスティア嬢は人間の子供だ。」
「はい、そうです。」

 スティアは狼ルルとキキのふわふわな毛から飛び出し立ち上がると目に涙をためうつむいた。

(それにしても、この狼達は本来警戒心が強く、飼うには難しい種類だよ?スティアにはとても懐いているし、屋敷の人間にも危害を加えてはなさそうだし。)

「スティア嬢、この狼達はどうやって懐かせた…?」
「ふぇ?あっ、キキとルルは塀を超えて侵入してお庭にいた私とお友達になってくれたんです!」
「それだけで友達に……?」
「う~ん、両手を広げて…おいでって言ったら私の両手が蒼く光ったきがしますけど…おっきくてもふもふな生き物が好きだからかも。」
「そう…。」

 ライカはそれ以上の追求はやめておくことにした。話を聞て解った事はスティアには魔力は感じなかったがそれとは別に…動物を惹き付ける能力があるのは確かだった。

「もう戻らないと…スティア嬢、きっと大丈夫だ…」

 ライカはスティアの頭を撫で、立ち上がるとスティアに背を向けてそのまま屋敷を後にしたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される

山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」  出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。  冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?  

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない

彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。 酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。 「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」 そんなことを、言い出した。

処理中です...