白薔薇騎士と小さな許嫁

yu-kie

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 隣国の侵入者に常に警戒しているこの辺境の地はいつも何処かで獣の出没、盗賊の出没が絶えずにいた。

 スティアが産まれてからもそれは変わらず、国境沿いに伸びる辺境の領主リューイの指揮のもとに国への侵入を領地内で阻止し国は護られてきた。

 話は少し戻り、スティアの卒業式の少し前の事。

 スティアが学園を卒業し、辺境の地へと帰還するにあたり、白薔薇の騎士ライカは急遽王都に呼び出され王都へとやって来た。

 国王は内密に…ライカと幼い頃から仲良くしている王太子づてにライカへの手紙を託した。ライカは王都にやって来ると城に入り謁見の間へ。そこで王太子に迎えられ、王太子は国王の手紙を代読した。

《メディアン家との関係を深めようと企む貴族がいることは調べがついている。スティア・メディアンの卒業式でよからぬ者が接触する可能性がある。必ずスティア嬢を守り正式な婚約を早めるよう。スティア嬢を一人にしてはならない。》

「…と言う事だ。」
「どうしてまた…」
「どうしてだと?辺境伯の後継者となれば国王と匹敵する権力を手に入れられる可能性が高くなるからね、ついでに言えば、スティア嬢は誰にでも好かれる、愛嬌のあるお嬢様、容姿も良いとなれば、集まるものも増えると言うものさ。まあ、ライカがイヤリングも渡しているから彼女のハートがよそに行く心配はないだろうけどね。」
「まあ、そうですね。」
「明後日はそのスティア嬢の卒業式、もう一人客人を呼んであるんだ…グメル・メディアンをここへ。」

 王太子が隣に佇む兵に囁くと、兵は敬礼し、部屋の外にいつからか控えていたスティアの祖父を呼んだ。

 杖をつくグメルが部屋に入り、スティアのサプライズのための、ちょっとした打ち合わせが始まった。

    ††††

 当日、『王太子の護衛を務めるために学園に同行した』と言う設定で学園にやって来た。王都に居ないはずのライカだが、王太子の学園内での護衛の務め後に保護者の代役として現れても不自然ではなくなる。

 王太子と国王は、国の内乱を阻止するために、是が非でもライカとスティアの《婚約~結婚》を成立させるために、スティアが王都にいる最後の日を警戒していたのだった。

 卒業式当日、目をギラつかせる保護者数名、スティアを意識している卒業する令息数名。

 スティアには常に友人ミシュン・スイラートが張り付きスティアに近寄る令息の接近を阻んでスティアを独占していた。

 保護者席についたライカは数名の国に仕えているだろう保護者数名の会話を耳にした。

「可哀想に、スティア嬢は保護者が来られなくなったみたいだ。」
「今日は息子たちがアプローチをするチャンス。ご家族に媚を売るよりも直接彼女とお近づきになれたなら…」
「目をつけたのは私が先だ、邪魔をする気か?」
「何を!」

 閉会式の直後一部の保護者達が揉めている中、途中から保護者席についていたライカが席をたてば、揉めている大人たちは息を呑んだ。

 殺意のこもる鋭い視線をスティアの話をする大人たちに一瞬向け、何もなかったように視線をそらし、スティアの元へと向かった。

 ライカは堂々とスティアを独り占めし、誰にも渡さないと主張するようにスティアの額にキスをした。

 ライカは国王と王太子に今回ばかりは感謝した。

(父と兄が僕を王都に呼んでいなかったら、卒業式にスティアに群がる人間がいたかもしれない…人懐っこいスティアのことだから…そう思うと何が起きてもおかしくない…お陰で、未然に悪い虫たちからスティアを遠ざけれたんだ。父と兄に感謝だな。)

 ライカはそんな事を考えながら、スティアを抱きしめる腕に僅かに力を込めたのだった。

     ††††

 辺境の地へ向かう馬上、馬車を先導するよう少し先を進む中、ライカはふと王都でのことを振り返り、鉄壁無表情の頬を緩ませ苦笑いした。

 狼キラルはそのライカの表情を挑発と判断し威嚇するが、ライカは気づくことなく、軽快に馬を走らせ、キラルは、張り合うようにライカと距離を縮め並走した。

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