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序章・騎士との出逢いと継承
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しおりを挟むルクシー国の王都から離れた山奥の小さな村に住む老いた魔女が1人、幼い子供を世話しながらひっそりと薬屋を営んでいた。
少女の名はサント。首には王家の印である百合の紋章が描かれた青い石のペンダントが輝いていた。
***
何代も前から王族のお墨付きを受けている魔女が住む山奥の村に何年かぶりに王都から馬を走らせてやってきた騎士がいた。
村のはずれに、広い庭のある一軒の家があり、屋根にある煙突からは薬草の匂いをさせた白い煙が絶えず吹き出し、騎士は馬を降り、庭に生えた立派な木に馬をつなぐと鼻を抑えながら家の前へと向かった。
「魔女殿はご在宅か?国王陛下の使いで依頼した物を受け取りに参った。」
「は~い。今開けます。」
家の扉が開き、現れたのは肩まで伸びた桃色の髪と瞳の、黒いワンピースの上に白いエプロンを身に着けた少女が現れた。
歳は15位いのぱっちりした目をした可愛らしい少女は扉を全開にし騎士を中へと迎えた。
「魔女殿は外出中か?」
「いえ、1年前に他界しました。」
「魔女がいないのに薬が作れるのか?」
「お婆ちゃんのレシピはちゃんと教え込まれましたから大丈夫です。国王様にはご報告済みです…」
少女の前に佇むグレーの長い髪を束ねた黒い吊り目の青年は首に黒い鷲の模様が描かれていた。
「黒鷲…彫ったんですか?」
少女は不思議そうに見上げて首を傾げると、青年は鋭い眼差しで少女を見下ろした。
「王の勅命で動く騎士は憧れる生き物を体に刻む。私は黒鷲を選んだ…それだけだ。君は…5年前には居なかったよな?」
「はい。両親は事情があって今は一緒にはいません。4年前にお婆ちゃんが私を引き取って、面倒を見てくれていました。」
「そうか…大丈夫なんだろうな?」
「はい、お婆ちゃんと1度王都の薬師協会で認定もいただきましたから。」
物怖じしない少女は満面の笑みを向けた。
「どうぞお座りください。今用意します。」
近くの椅子に青年を案内し、少女は地下の階段を降りていった。
*
少女は地下から上がってくると木箱を抱えて青年の前のテーブルに置くと、少女は何かを思い出したような様子で、木箱を開けながら青年に話しかけた。
「私の名はサントです。あなたの事は黒鷲さんで良いですか?」
「名ならある。シアン・リュークだ。」
「わかりましたリュークさん、これからもよろしくお願いしますね。」
その後、サントは木箱から取り出した液体の入る薬瓶、粉末の入った小袋をいくつか取り出した。
「納品書と確認お願いします。秘薬5瓶、魔獣避けの粉3つ、あとは…」
細かな説明のあと、木箱を閉じサントはリュークにその箱を手渡すと、リュークは代金を支払い、サントは代金を手にするとエプロンのポケットにしまい、ワンピースの裾をつまみお辞儀した。
「リュークさん、国王陛下様にもよろしくお伝えください。」
リュークは一瞬サントの所作に貴族の令嬢達と重なり、目を丸くするが、少女は不思議そうに首を傾げた。
「…わかりました。それではまた。」
リュークは謎多き少女に動揺しながら背を向けると、魔女の家を後にした。
王都へと急ぎ戻り、国王に木箱を届けに執務室に赴くと…サントの素性を知ることになるのだった。
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