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序章・騎士との出逢いと継承
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しおりを挟む「シアン・リューク、只今戻りました。」
「はいりたまえ。」
シアン・リュークは今、国王の執務室の扉の前で声をかけ、王の返事で扉を開けゆっくりと足を踏み入れた。
執務中の国王は机に山積みになる書類に判子を押し側に控える側近に手渡すと、側近達は書類を振り分け、束になった資料を手にすると次々に部屋を後にした。
室内には国王とシアン・リュークだけになり、シアン・リュークは空いた執務机の上に木箱を置いた。
「ご依頼の品を受け取ってきました。」
「うむ。ご苦労であった。そうだ…村はどうだった?」
「あ、魔女殿が他界されたと聞きました。変わりに少女から薬を買ったのですが…陛下はご存知でしたか?」
「勿論…この5年なるべく村には近づかないようにしていたんだが、そうもいかない、君にはまた頼みたいこともあるから誰にも話さない約束をしてくれるなら教えよう。」
「この命、国王陛下に預けています。ご命令に背きません。」
「うむ、ならば教えよう。彼女は第2王子の子だ…」
×××
――15年ほど昔に遡る――
剣の腕と賢い頭脳を持つ第2王子シュアは次期宰相になるか辺境地の老いた領主の跡を継ぐかと当時選択を迫られ結果…辺境の広大な領地を第2王子が治めることに決まった。
魔力が無しに産まれた魔女の娘ルアは髪色も瞳も国民特有の栗色。ルアは第2王子の妻になると何度も命を狙われた。『王子の妻が亡くなれば次はわが娘を後妻に…』そんな理由から一部の貴族が暗殺者を雇い罪を犯した。
命を狙われなくなり、やがてルアが子を産んだ。子が育つにつれ…目立つようになって来た…この国では珍しい鮮やかに色を桃色に染めてゆく髪と瞳…先々代の森の魔女と同じである事と…サントの魔女の才能と思われる出来事があり…
一部の者達が…サントに興味を抱き、魔女の孫サントが狙われるようになったのだった…。
×××
「…と言った経緯で5年前から森の魔女のもとに預けた。村には王都から寄越した強者達を置いている。あそこは1番安全な場所なんだよ。」
シアンは国で極秘にされている第2王子の娘の話を知り、ゴクリと唾を飲み込んだ。
(あの少女に魔女の才能が…)
国王の後半の話にあった言葉を思い出し、初めて見る綺麗な少女を脳裏に浮かべ、じわじわと少女に好奇心を抱いたのだった。
「そんなわけだから、サントと仲良くしてやってほしい。頼んだよ。さて話はこれで終わりだ。仕事がまだ残っているから始める。君はもう戻りなさい。」
「はい。」
シアンは深々と頭を下げ、部屋を去った。
(次はいつ村に行くのだろうか…)
シアンは表情は変わらず険しい顔をしたまま、殺気を放ち、すれ違う兵士や城に働く者達を怯えさせ…気持ちはそれとは正反対にサントの事で楽しみができ、ワクワクしていた。
そして二人は近く再び会うことになるのだった。
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