黒鷲騎士は魔女の孫に興味津々

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第1章・魔女の孫と黒鷲の騎士

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 翌日、サントのお披露目に…両親も王都に招かれ家族に見守られ、盛大に行われた。

 祖母から魔女を継承したサントは淡い水色のドレスを身に着け令嬢らしい装いでこの日ガチガチに緊張しながらも…必死に去勢を張りなんとかこのイベントをやりきった。

 この日の夜、王宮内の夕食の席にはサントの両親も加わり和やかに時間が過ぎた。

「今夜はこちらに泊まってゆくのだろ?シュア。」
「いや、今日は部下に無理を言ってこちらに来たから、この後帰るよ。陛下…娘の晴れ姿を見れたのは陛下のお陰です。ありがとうございました。」

 サントの父シュアは席を立ち深々と頭を下げた。

「すまない、私の力不足だね、いつもシュアには負担をかけている…」
「陛下はよくやってくださってます。私の任された領地が特殊なんです。そろそろよろしいですか?」
「ああ、気をつけてな。王都を出るまでの護衛をつけよう。また会おう。」
「はい陛下。」

 国王とサントの父シュアは握手を交わし再会を誓うと、サントの母ルアと共に部屋を後にした。

「国王陛下、見送りに…」

 国王夫妻を前にサントは席を立った。

「ああ、行ってきなさい。」

 国王に見送られ、サントは頭を下げると急ぐように部屋を後にした。

 部屋の外に控えていたシアンと子豹姿のルルが急ぐサントの後をおい、ルルがシアンの足元にしがみついて抱っこを要求し、シアンは仕方なくルルを抱っこし急ぎ足でサントをおった。

 王宮をでるシュア夫妻と扉の前で追いついたサントはようやく家族3人揃い顔を合わせた。

「お父様、お母様、私は陛下のお陰で国の魔女として受け入れていただきました。ですが…私はこのまま村に残ったほうが良いのか…魔女の役割はどこにいてもできます。もし戻ったほうが良いなら…」

 シュアはサントの肩にそっと手を置くと寂しげな表情を向けた。

「サント、国の魔女になったのなら、我々の領地に留めることはできないよ。だから…時々帰ってきて、元気な顔を見せておくれ。自分の身は守れるようになったのなら多少安心して迎えることができるだろう。」

 サントがコクリと頷くと、ルアかサントの手を握った。

「サント、辺境の地は未だ危険な事には変わりないの帰ってくるときは注意をしなさい。それに…お祖母様の残した家を守ることも大事なこと。私にはお祖母様…母の力を持たずに産まれてしまったから…私の子供たち…あなたの兄妹の中でも唯一あなたがその素質を持って生まれた…魔女の役割はあなたにしかできないの。その力は特別なのよ…離れて暮らすのはさみしいけれど…元気でね。」

 サントは目に涙をため、母ルアに抱きついた。

「少しだけこうさせてください。」
「ええ。愛しい私達の娘。」

 しばらくして夫婦は馬車に乗り、護衛の衛兵や王都の騎士達を従え出発した。

 サントはまだ16歳になったばかりの少女。故郷と両親…その地に残る兄妹を思いながら馬車が見えなくなるまで泣きながら見送った。

 その後ろには、子豹姿のルルとシアンがどう接したらよいかと…心配そうに見守っていた。

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