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3 <孤児院の獣人>
しおりを挟むサリア・リアシアは慰問先の教会から併設された孤児院に移動した。
院長の名はジルコ・アリト、綺麗な顔立ちの背の高い、ラーズと歳の近そうに見える白銀の髪に赤い瞳の青年である。
子供達の列の先頭を歩く青年は白いローブを身に付け、優しく微笑む表情はどこか冷たさがあり、列の後を追うように歩くサリアは少しだけ『怖い』そう思った。
ジルコのローブの端を少女の小さな手が引っ張り、ジルコは少女の手をとり、少しだけ強く握り見下ろした。
「せんせい、お姫様綺麗ね。」
「そうだね。シアくん…さあ、サリア・リアシア様に僕たちのおもてなしをしようね。着いたら皆で歓迎会の準備だ。」
「「わあ~い」」
孤児院に着くと子供達は駆け出して、施設内へとおいかけっこをするように一斉に入って行った。
すると少女シアは飛び込んでいった施設から飛び出し、まだ入り口にいたジルコに泣きながらすがりついた。
「せんせい、ルカが部屋にいません。」
「どうされました?」
すがりつく少女の姿に、ジルコは困惑していると、心配そうにサリアが声をかけジルコに近づくと、ジルコはすぐに表情を変え小さく微笑んだ。
「あのこは人見知りが激しくて、シアくんには心を許していますが、普段と少しでも変わったことがおきるとよく隠れてしまうんです。シアくん、お部屋の歓迎会のお手伝いしてきてくれるかな?今から探してみるよ。」
「せんせい、ルカ連れてきてね?」
「わかったよ。リアシア様は子供達とお部屋で待っていただけますか?」
ジルコは少しサリアの様子を伺うように声をかけると優しいサリアは首を横に振りジルコを見上げてにっこり笑いかけた。
「探すなら多い方がよいでしょ?私も探します。特徴を教えてください。」
「僕と同じ白銀の髪と金色の瞳をしています。珍しい色ですからすぐにわかりますよ。」
「まあ、お二人は同族ですの?」
「ええ。そんなところです。探していただけるなら助かります。このまま見つからなければ子供達が歓迎会の準備をしていますのでそちらに戻りましょう。」
「そうですね。迎えの時間もありますから、今はお嬢さんを探しましょ?」
中央階段を上がったジルコとサリア。侍従をつれたサリアは子供達の部屋のある2階の右側へゆき、ジルコは左側へと向かった。
通路を覗きこむように顔をだした四つん這いの白銀の髪の少女は、知らない顔に驚き通路を駆け出し別の部屋へ。
「あそこに!」
「リアシア様、ここはわたくしどもが参ります!」
「ありがとう。」
サリアの足では追い付かず、侍従二人が捕獲へ向かった。
その時数秒サリアは一人になった。侍従二人が二人がかりで暴れて引っ掻く少女を捕獲し、サリアのもとへ戻ると…サリアは忽然と姿を消した。
「大変だ!リアシア様が!」
「うにゃ。はなせぇー!」
侍従一人は少女を抱えて歓迎会の会場へ少女を連れて行き、残った一人の侍従は服に潜めていた黒い球体を取り出し何やら話しかけ始めた。
「国王陛下、大変です。」
球体は突然煙に包まれ、膨れあがった煙から現れたのは黒い騎士を思わせる服を着、グレーのマントを羽織る羊の仮面を被る悪魔降臨的な出現をしたラーズがいた。
「何があった。」
「陛下、リアシア様とを訳あって少女を探して、我々が少女を捕まえて数秒、こちらに待っていたリアシア様が消えてしまいました。」
「その娘は?」
「はい。もう一人の侍従に子供達の待つ場所に連れて行かせました。」
「院長はどこにいる?」
「我々と反対側を探すと…」
「騒ぎに現れてもおかしくないが…出てこないな。」
「そう言えば、少女は獣人でしょうか、四つん這いになって足も早く…ジルコ院長と同じ白銀の髪をしていました。あと、リアシア様が同族かとの問いにその様なものだと…」
「わかった。お前達は子供達のもとへ。私は…サリアを迎えに行く。」
ラーズはサリアの場所を感じとり風を切るようにサリアがいると思われる場所へと向かった。
◆
サリアは突然背後から伸びた手に口を抑えられ、軽々と抱えられ、サリアを抱えた誰かが屋根裏部屋へと姿を消した。
パタン。
屋根裏部屋、サリアは床に下ろされ座り込み、目の前に立つ相手をゆっくりと見上げた。
「やっと二人きりになれましたね。」
サリアが見上げた先には、白銀の髪に赤い瞳の息を荒げたジルコの姿があった。
ジルコは先ほどまではなかった獣の耳と、ふわふわと揺れる尻尾を生やしていた。
「ジルコさん…狼の獣人だったのですか?」
「ええ。この国で可愛い草食系獣人を見つけたので…食べてみたくなったんです。」
「え?」
「雄は角で攻撃されて厄介だが、雌は華奢で虐めがいがあるでしょ?」
「ジルコさん、どうしたんですか?」
「あなたは可愛い子羊になるそうですね。噂に聞いていますよ。人間の姿も可愛らしくていらっしゃる。国王陛下の『贄』と噂されるだけある。」
危機的状況に顔を強ばらせたサリアはふと、悪魔ぶるラーズを思いだし、表情を緩ませた。
「ラーズ様。ふふふ。そうですね、私は贄のせっ…(設定)」
サリアはラーズの演じる悪魔の国王の設定を滑らせかけて両手で慌てて口を覆った。
「ラーズ様、隠れてないで来てください。」
サリアは屋根裏部屋の扉が少し開いていることに気がつき、優しく声をかけると、扉は勢いよく開かれた。
バン!
「サリア!ここは悪魔的な登場を考えていたのに。いや、無事で良かった。」
「ははは、国王陛下様、お早い登場ですね。」
「貴様、何をしたかわかっているだろうな。」
床に座り込むサリアの姿を目にしたラーズは怒りマックスになり、頭が完全に狼と化したジルコと対峙した。
「命なんて惜しくないんで。どーぞ遠慮なくきてください。本気で行きます。」
「生意気だな、私が悪魔と呼ばれる理由をしっかり味あわせてやろう。」
サリアは対峙した二人に思わず興奮するとポンっと子羊に変化してしまい、邪魔にならないように隅により何もできない自分を悔しく思った。
(私が油断さえしなければ…ジルコさんもこんなことしなかっのよ。ラーズ様だってお仕事忙しいのに来ることもなかったのよね。ごめんなさいラーズ様。どうしよう、どうしよう。これからどうなるの?二人とも怪我なんてしたら…)
子羊は隅で小さくなり悲しくて泣くばかりだった。
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