羊の王は悪魔を装い子羊を溺愛する

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5 <会食と提案>

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 ラーズの母、皇太后は、夫を亡くしてしばらくすると、辺境の地にある皇太后の兄が治める領地の屋敷で余生を送っていたのだが…この度、息子である現国王のラーズの婚約が順調に進んでいることを聞き、ラーズに手紙を送った。

『国王陛下と婚約者の令嬢が順調に愛を育んでいるか確かめるため、二人に会いに王都へ行く』と。

 リアシア邸では、リアシアの父が顔を青くして帰宅した。出迎えたサリアと妻を前にし、リアシアの父は二人の前に開かれた手紙を差し出した。

「お父様?」
「あなた…あらやだ。サリア、国王陛下の会食の招待ですわね。」

 サリアの父の手にはラーズが書かれたと思われる手紙が広げられ、明日の夜の会食に宮殿に招待すると書かれていたのを目にし、サリアは驚き、興奮して思わず二人の前で子羊に変身してしまったのだった。

     *     *

 翌日、昼過ぎに迎えの馬車がリアシア邸に到着し、目一杯お洒落をしたサリアは馬車に乗り込んだ。

 馬車はお城の近くにある宮殿前に止まり、ラーズの秘書がサリアを迎えた。

「サリア様ようこそお越しくださいました。国王陛下はまだ公務の途中のため少し遅れるそうです。中をご案内いたします。今日は皇太后陛下がお見えですので、お二人でお話でもしてお待ちください。」
「ラーズ様のお母様…わかりました。」

 サリアは何度も深呼吸をし、心を落ち着かせながら、秘書のあとをついて行くと、途中、侍女長が直立して出迎えた。

「ご案内ご苦労様です。これよりわたくしがリアシア様をご案内いたします。お部屋はすぐそこです。さあ。」

 秘書は一礼するともと来た道を戻ってゆき、サリアは侍女長の案内で皇太后の待つ部屋へと入ったのだった。

     *

 サリアは案内されるまま部屋にはいるとテーブルを前に席につく女性が1人、優雅に侍女が用意したティーカップに口をつけ読書中、侍女長の挨拶で、ようやくカップをテーブルに置きこちらに振り返った。

「皇太后陛下様、国王陛下の婚約者サリア様をお連れしました。」
「サリア・リアシアです。」

 サリアが挨拶をしたのち深々と頭を下げると、皇太后が立ち上がった。

  栗色の髪の高価なドレスを着た50代の女性がサリアの前に来ると栗色の瞳を細めて微笑んだ。

「まあ、側近の皆さんが推薦されただけありますね。息子と同じ髪色だなんて…それにとっても可愛らしいわね。」

「あ、ありがとうございます!あの…皇太后様は、この国の方なのですか?」
「ええ。ですが羊の獣人の血はとっても薄いのです。人間が多くすむ辺境の地から嫁いできたのです。」
「そうなんですね。」
「まあ、一緒に座りましょ?初めてですから私の事を知って欲しいですわ。」
「はい!教えてください。」

 二人は隣り合わせで座り、気さくに話しかける皇太后は、ラーズが国王になり、仮面を被るようになった経緯を話始めたのだった。

    *

 皇太后の名はリリシア。彼女は羊の獣人の血筋としてはとても薄く、人間の血を濃く持つため、獣化できない娘だった。この国で浮かないよう、必死に勉学に励み、その努力が認められ城に使えるようになり最終的には司書を勤めるようになっていた。

 ラーズの父ビクトが王子の頃リリシアと恋に落ち回りの反対を押しきり結婚した。ビクトは羊の獣人の王の後継者だが体が弱かった。国王になる頃には病気がちになり、体の弱い国王と、羊の獣人の血の薄い、ほぼ人間の王妃に側近達を始めとするミュリ国の民は行く末を心配していた。

 生れた王子はここ100年近く見なかった乳白色の髪を持つ羊の獣人の本来の髪色を持つ男の子だった。

 しかし、人間と弱い国王の子供だと、不安がる民達を見てきた王妃は学園に通い始めた角が生えはじめた少年ラーズを強く見せるために、彼に見た目から入るようまずは仮面をつけることを勧めたのだった。

このころから見た目を邪悪化させて見せる事を覚えた。

 冷たい言葉遣いと、黒い角を生やした王の被る羊の仮面。それにより悪魔と呼ばれるようになり、恐れられ始めたのだった。

     *

 サリアは思った。
(そんな、ラーズ様のお母様は悪くない!お父様だって。二人からもらった姿をそんな風に隠さなきゃならないなんて…ラーズ様は仮面がなくても素敵で自分の羊の分身だって出せるんだから!あっ。)

「皇太后様…ラーズ様が仮面がなくても強く見せる方法あるかもしれません。勿論お強いことは知っていますが、それを国民にも伝わるように表現できればいいですよね。」
「本当に?」
「はい。実は…」

 サリアはリリシアの耳元に顔を寄せごにょごにょと話始めた。

「まあ、分身をそばにおくのね?」
「はい。ラーズ様に相談してみようかと。」
「あの子はそろそろ帰って来る頃かしら?戻ってきたら早速、聞いてみましょ?」

 ラーズは宮殿に待つサリアを思いながら会議を終え、慌ただしく帰路についた。

     *

 ラーズは母親が帰って来ていることを思いだし、宮殿に入って部屋の前で一度立ち止まり深呼吸して中へと入った。

 二人がどんな様子か…サリアが居づらくないかそんな心配をしながら入った部屋には二人は本来座る席ではない隣に並んで座り和やかにお茶をしていた。

「ラーズ様、おかえりなさいませ。あっ、皇太后様にお話しした案があるんです!」
「まあまあ、サリアさん、食事をしながらにしましょう。国王陛下もよろしいかしら?」
「…はい。」

 リリシアは席をたつとサリアと向かい合わせの席に座り直した。

テーブルには夕食の準備が整い、静かに食事が始まり、侍女達は一旦部屋をあとにし、リリシアとサリアとラーズの三人だけになり、ラーズは仮面をはずしテーブルの端に置くと、食事をしながらサリアの提案に耳を傾けたのだった。

 その日のサリアの提案に、今まで思いつかなかったことに苦笑いした。

 そうして数日後のラーズの誕生日に行われる行事でラーズは実践することになるのだった。

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