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10<子羊の嫁入り>②
しおりを挟む国立美術館。ミュリ国に初めてできた美術館ができた経緯は、500年前の羊の獣人の王族の隠した秘宝が発掘されたことから始まった。
宰相を始めとする、臣下達は正統な一族の血筋を重んじる。
古くなった神殿の立て直しをすると地下から秘宝がザクザクと出現した。彼等まず最初に貴重な品々を安全に保管することを考えた。そして話は、王の偉大さを…昔を知らない若者たちに知ってもらうためにも、展示してはどうかと言うことになり、今に至ったのであった。
サリアは馬車から先に降りたラーズに手をひかれて続いて馬車を降り、美術館の全開になった扉の中へと足を踏み入れた。
赤いジュータンが長く続く通路の両サイドには館の職員が並び二人を出迎えた。この日ラーズは美術館を貸し切りにして、サリアと館内を見てまわった。しかし、ミュリ国の歴史学者が館内の発掘されたものを紹介してゆき、サリアは目を輝かせて聞き入った。
広い館内を見て回り、ホールに出ると、置かれているソファーに二人は座り、職員の用意したお茶で喉を潤すと、一人の職員が奥の部屋から現れ、ラーズの前に立ち止まると深々と頭を下げた。
「館長のリベ・ラダナと申します。国王陛下様、羊の間を準備しておりますので、ご案内いたします。」
サリアは不思議そうに首を傾げると、ラーズは席を立ち、サリアの手を取ると立ち上がるように促した。
「サリア、国王専用の休憩室だよ、そこで少し話をしない?」
「はい。」
サリアは立ち上がりラーズと共に羊の間へと足をむけた。
壁と床には白地に黒い花柄が一面に広がる。床は灰色のもふもふなラグマット、天井は黒く光沢のある色。そこにシャンデリアが吊るされていた。
室内には3人くらい座れそうなソファーがテーブルを挟んで向かい合いで置かれ、二人はそこに並んで座っていた。
室内には二人きり、ラーズは服のポケットから小さな箱を取り出した。
「サリアにプレゼントだよ。」
「何かしら?婚約指輪は嵌めていますよ?」
「開けてみて。」
サリアは渡された小さな箱を恐る恐る開けると、中から青い羽の蝶を模した髪留めが収まっていた。
「可愛い。」
サリアは目を輝かせると、ラーズはそれを取り出しサリアの右側、頬にかかる少し癖のある髪を耳にかきあげるようにし、パチンと髪留めをつけると、サリアは、目を潤ませて喜んだのだった。
「思ったとうり似合ってる。まるで妖精みたいだ…とても綺麗だよ。」
顔と顔が至近距離となりどちらからともなく二人はキスをした。
サリアは、びっくりし、長いキスにドキドキが最高潮になるといつものようにポンッ!と子羊に変身。
ラーズに抱きしめられたサリア。先程プレゼントされた髪留めは、今は子羊の姿のサリアの右側の耳にイヤリングのように留まっていた。
※
この日を境に二人の親密度は増して行った。
しかし、キスの数が増えはしたが、サリアの体質は中々手強く、ラーズはその先の行為に進みたくとも子羊になってしまうサリアの体質を愛しくは思いながらも、将来のことを考えると心配になっていた。
(このままだと、周りの者たちが私とサリアの結婚を反対し、別の花嫁候補を探し始めるかもしれない。)
執務室、仕事の合間に休憩に入ったラーズは、椅子に腰掛けたまま、腕を組み難しい顔をしてうつむいた。
「まずいな…そのうち彼女自身も心配しだすかもしれない。なんとかしなくては…」
思い浮かぶ宰相は、婚約に乗り気ではなかったのを周りからの推薦もありやむを得ず娘の婚約の話に乗ったまで、この機に婚約破棄なんてなっては…
ラーズはどうにかしなければと真剣に考え始めていたのだった。
※
その頃サリアは。
ある日の夜の食事の後、宰相で、父であるリュシャはサリアに将来に向けての家族会議を始めていた。
「サリア、お前は興奮すると変身していることは自覚しているかい?」
「はい。」
サリアは、うつむき、母は心配そうに二人のやり取りを見守っていた。
「正直に言おう。このまま嫁いでも、陛下と夜を過ごすことは難しいだろう。サリア…過去の話になるが、昔多くいた羊に変身できた人々は、訓練により自在に姿を変えれたそうだ。精神のコントロール。それができれば、サリアが陛下の妻になっても、誰にも文句など言われないだろい。」
「えっ!コントロールできるのですか?」
「ああ。明日から訓練だ。婚礼の儀式の日程と準備も着々と進んでいる。猶予はあまりないからな、魔導師長のイリザ殿が協力してくれる。忙しい方だから、明日まず、しばらくの間のカリキュラムを組むそうだから心して行うよう。」
「わ、わかりました。」
サリアは、顔を上げると、ラーズの執務室前で出会ったときのことが思い浮かび、顔を紅くしてしまったのだった。
(イリザ・ベルクさんは女性なのに…なんだか恥ずかしい。でもまたお会いできるなんて…嬉しいかも。頑張らなきゃ。)
「サリア?」
宰相は、サリアの様子に、女性に興味を抱いてはいないかと、少し心配していたのだった。
<③に続く>
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