誇りと傷痕

yu-kie

文字の大きさ
23 / 25

誇りと傷痕 1

しおりを挟む
「服は妹の使って…あとは気に入らないかもしれないけど。」
「ありがとう。」

 私は健太くんとすれ違い、浴室に入った。

 私は他所様のお風呂に入り、しっかり温まると新しい服に着替えて浴室を出てサトちゃんたちのまつリビングに向かうと途中通路で健太くんが待っていた。

「坂梨さん…妹の我儘に突き合わせたせいで…こんな形で家に来てもらうことになって、昔迷惑かけたのにまた……ごめん。」
「ううん。大丈夫です。」
「坂梨さん…妹わ悪気はないんだ。」
「はい、わかってます。」

 私は笑顔で返すと、健太くんがうつむいて…拳をつくったその手は震えていた。

「健太くん?」
「坂梨さん…妹は僕の恋の応援しているつもりのようで、今日の水族館も、妹が気を利かせての事で…」
「ん?恋?」
「その…僕と付きあってくれないかな?」
「えっ?」
「だから、好きです!付き合ってください!」

 私は思わず口を両手で覆った。

 なぜなら心臓がバクバクで、嬉しくて泣きそうになっていて…声が震えてうまく言葉が出せないから、私は「はい」の代わりに縦に強く頷いた。

 でも、直後私の頭は冴えてきた。

 何故なら私の背中には、両親が悲しんだほどに、長く伸びる傷痕が今もしっかりのこっているのだ。

「健太くん、1つ大切な事があるの。」
「うん。」

 私は頭が冴えた分、途端にスムーズに言葉が出てきた。

「付き合えば…いつか私の背中を見る事があると思うの。」
「はっ?何いってんの?」

 健太くんは途端に赤面。だけど私は真剣だから話を続けた。

「もしも気持ち悪いと思うなら、その時は私を振ってくれていいから。理由はなんとでもつくってくれたらいいし。」

 私はついに言ってしまった。

 付き合う前に破局か?

 だって同情で無理して付き合わせるわけにはいかないもの。

 私が付き合えるなんて奇跡だと思うし。

 私にとってこの傷痕は誇りだから、それも含めて受け入れてくれる人なんて…期待してない。

「坂梨さん…僕は君の背おってるものをまだ何もわかってないけど、やっぱり坂梨さんは凄いな。言いにくいことちゃんと話してくれるんだもんな。びっくりしたよ何言い出すかと思って恥ずかしくなっちゃった。でも、そんな事気にしなくていいんじゃないかな?それ含めての坂梨さんでしょ?」
「いいの?」
「うん。」

 私はびっくりしてしまうと、健太くんは手を差し出して笑顔を私に向けた。

「よろしく」
「うん、よろしくね。」

 私はその手を取り握手を交わした。

 その背後にはサトちゃん母とサトちゃんがいるとも知らずに…。

 その後サトちゃんに喜ばれ、歓迎を受けた私は夕飯をいただく事となったのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

✿ 私は彼のことが好きなのに、彼は私なんかよりずっと若くてきれいでスタイルの良い女が好きらしい 

設楽理沙
ライト文芸
累計ポイント110万ポイント超えました。皆さま、ありがとうございます。❀ 結婚後、2か月足らずで夫の心変わりを知ることに。 結婚前から他の女性と付き合っていたんだって。 それならそうと、ちゃんと話してくれていれば、結婚なんて しなかった。 呆れた私はすぐに家を出て自立の道を探すことにした。 それなのに、私と別れたくないなんて信じられない 世迷言を言ってくる夫。 だめだめ、信用できないからね~。 さようなら。 *******.✿..✿.******* ◇|日比野滉星《ひびのこうせい》32才   会社員 ◇ 日比野ひまり 32才 ◇ 石田唯    29才          滉星の同僚 ◇新堂冬也    25才 ひまりの転職先の先輩(鉄道会社) 2025.4.11 完結 25649字 

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
 ☘ 累計ポイント/ 190万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

処理中です...