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家庭教師
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一週間後。
扉が開き、家庭教師を名乗る人が入ってくる。私は頼んでいない。私が一緒に居たい人ではない。そんな人は、居ないのと同じ。
誰にも弄られなくなったそれを、自分で弄る。
カチャ、カチャ──無音の空間に、その音だけが響く。
それに顔を寄せる、久し振りの人間。
手を掴み、それに誘導する。
「興味あるなら、触ってほしいです。我慢が、もう限界です……弄ってください」
左右のそれを摘まれて、気分が落ち着く。
「これでいい? お母様から、男狂いと聞いていたのだけれど……」
女の人の声──私が男狂いだから、女性を指定したそう。
「違う。私、男狂いじゃない。気持ち良くなりたいだけ」
先生の摘み方、気持ち良い。特にピアスが付いている方が。身体がびくん、びくんと反応する。
「噛んで」
服を捲り上げると、それを口に含む先生。
唇と舌、頬、歯を使い吸引しながら刺激する。他の誰よりも気持ち良い感覚。先生の頭を抱き寄せる。
私の左手が、先生の服の中へ誘導される。
カチャ──
ん? よく知っている感触。でも、あるはずがない──服を捲って見ると、ピアスが付いている。どうされると気持ち良いかを、知っている。口に含み、先生のそれを刺激する。私は、私と同じものを持つ先生の虜になる。
先生は、私が頑張るとご褒美として、それを弄ってくれる。私は、そのご褒美がどうしても欲しいから頑張る。
先生を観察した結果、好みが私に近いことがわかった。
私は知っている。私でなければいけない存在になれば、依存することを。
「弄って」
先生が自ら乞うようになった。
私は知っている。我慢させられた後の、ご褒美の至福を。
「これ、終わってからね」
すぐには弄ってあげない。
私は知っている。背徳感が与える高揚を。
「可哀想だから、ちょっとだけ弄ってあげる」
私がされて気持ち良かったことを、全力でする。
反応を観察し、改善を繰り返す。好みに合わせて調整する。
◇◆◇◆◇◆◇◆
先生と出会って三ヶ月。私は戸惑い始める。
離したくないし、離れてほしくないのは本心。
でも、離したくないことと、離さないことは別。
先生は今年大学を卒業し、就職する。
家庭教師のバイトは辞めるだろう。誰かと出会って、結婚するかもしれない。遠くへ行ってしまうかもしれない。先生は、私から離れていく。
仕方ない──どうにか出来ることではない。
私には、そんなことを考えている余裕は無い。先生との時間を満喫した。悔いは無い。
一月には入試がある。先生経由で、母親から、地元の中学校には通わせられないと伝えられた。志望校に合格するか、この部屋に閉じ込められ続けるかの二択。
ご褒美のために、勉強は頑張っている。でも、合格出来るか際どい。もしものことを考えると、頭が痛くなる。
「合格すれば、これからも会えるね」
何故『会える』のか、わからない。
ちょっとした時間も惜しい。先生のそれを、指で弄りながら考える。
会いに来てくれるという意味だと解釈する。
「部屋からは出られる。でも、制限が厳しいから、たくさんは会えないかも」
「あのね、志望校に就職が決まったの」
『志望校に就職』を理解できない。
はむっ──私は困ると、それを咥える。
はむはむ──全く理解出来ない。
「んっ……聖桜中学校の教師になるの。ずっと一緒に居られるように」
先生がご褒美──努力して、失わずに済むようになるのなら、全てを注ぎ込む。
「絶対に合格し……」
願望と不安が入り混じり、口が震えて続きを言えない。手も震え始めた。
先生が震える手を掴む。
「嫁に来るかい?」
先生は、よく私を揶揄う。普段なら、軽くあしらうけれど──
「行けるなら、行きたい……ずっと一緒に居たい。離れたくない。離したくない。ずっと、ずっと一緒に居たい」
私を制御できない。涙が溢れ出す。
「任せて」
私が落ち着くのを待って、部屋を出ていく先生。
母親と共に戻ってきた先生は、抑揚も感情も無い言葉を私に告げる。
「試験までの期間、あなたを私の家で合宿させることになりました。必要な物をすぐに準備しなさい」
◇◆◇◆◇◆◇◆
先生と二人きりの車内。ここでのことは、二人だけの秘密。言いたいことを言える。
「先生のお嫁さんになれて嬉しい」
冗談であることはわかってる。ごっこでいい。今だけでも、先生のお嫁さんで居られることが嬉しい。
「嫁のために頑張る!」
「勉強は頑張るから、ご褒美とは別に、気持ち良くなるためだけの時間がほしい」
「寝るまでを、その時間にあてようか」
「うん。いっぱい気持ち良くなりたい」
「可愛いなあ。襲いたくなっちゃう」
「うん、いっぱい襲って」
アパートの駐車場に車が停まる。車から降り、アパートを見上げる。
「ここが先生の家?」
「違うよ。今から二人の家、だよ」
言葉に何かを感じたことは無い。
「先生、胸がきゅーっとなる感覚は何? 『嫁に来るかい?』と聞かれたときにもなった」
「今も、なってるの?」
「うん。苦しい」
「とりあえず、中に入ろうか」
手を引かれ、足早に部屋に入る。私をベッドに押し倒し、服の上からそれをこね回す。
「今が一番感度が高いはず」
その通りだ。感覚が研ぎ澄まされているような、気持ち良さが増幅されている感じがする。頭がふわふわしてきた。
目を開けると、先生と目が合う。
「おはよ。よく寝てたね」
気持ち良い目覚め。先生は、私のそれを二個とも弄ってくれている。
「すごく気持ち良かった。次は私が責める」
先生のピアスを外し、吸って、噛み、舌で転がす。以前、外して弄ってみたときに気持ち良かった。されたことは無いけれど、多分、先生も気持ちいいと思う──予想通り、先生がピクッピクッと激しく反応する。唾液をたっぷり付けた手のひらで転がす。
「ピクピクして可愛い。もっと気持ち良くしてあげる」
再びそれを口に含み、舌で転がす。
先生の足がピーンとなり、脱力する。構わずに刺激を続けると、ピクッ、ピクッと反応はする。顔が痺れてると、こんな感じなんだ──この状態でも、意識があることは知っている。刺激を続けると、反応が無くなった。多分、寝た。外したピアスを嵌めて、弄るのを辞める。
寝顔を眺めていたいけれど、私にはすることがある。持ってきた勉強道具を広げ、黙々と設問を解き続ける。一人の時間の全てを勉強に費やす。
◇◆◇◆◇◆◇◆
一月。合格発表日。
合宿が終わり、私が家に閉じ込められる日。
「もっと一緒に居たい……」
「そうだね」
お互いのそれを、口と指で弄り合う。
結果を見には行かなかった。見なくてもわかるから、見る必要は無い。限りある時間をそんなことに費やすより、有意義に使いたい。
私の正面に座り、真顔になる先生。
先生は、私と先生のピアスを外し、投げ捨てる。
先生が新しいリングを横向きに嵌める。
「エンゲージリングと」
縦向きに嵌める。
「マリッジリング……変わらぬ愛を誓います」
先生の隣に、リングが二個用意されている。
でも、先生のピアスは横向きのみ。穴は一つしかない。
使い道がわからないリングが一個──
先生は、注射針のようなものを私に渡す。
先輩の家で見たビデオで使われていた物だから知っている。ニードルという、ピアス穴を開けるための物。
そういうことか──針先を見つめた後、片方のそれを差し出す。
「両方に開けると、奴隷の証になるんだよね……いいよ。私、先生の奴隷になる。私の全てを先生に捧げる」
「違うの。えーと……私に、開けてほしいな……と」
ニードルを引っ込める先生。
「私、覚悟して全てを捧げたんだけど……無かったことになる?」
「えっ……あ……んー……」
困ってる先生が可愛い──痛がる先生を想像すると、ゾクゾクする。
「先生が、自分で開けるところを見せてくれますか」
「渡しちゃえば、開けてくれるかなと、期待したけれど、甘かったね。頑張ってみる」
私はニードルの先端を見つめる。
先生が、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた──すごく愛らしい。
針先を当ててはいるけれど、躊躇っているから刺さってはいない。それでは、刺さらない──一思いに刺さないと、貫通させられない。
「手伝ってあげる」
先生の手を掴み、一気に押し込む。
スッ。
ピアッシング専用の道具だからか、スムーズに刺さる。貫通するまでに要した時間は一瞬。痛くないようにするため、ニードルの後ろ側にピアスを当て、抜くのと同時に通す。
「初めての共同作業だよね。マリッジリング、付けてもらっちゃった」
嬉しそうにする先生が、愛らしい。
嫌だと思っていた日が、二人の記念日に変わる。
思い出と証を持って、二人の家を後にする──
扉が開き、家庭教師を名乗る人が入ってくる。私は頼んでいない。私が一緒に居たい人ではない。そんな人は、居ないのと同じ。
誰にも弄られなくなったそれを、自分で弄る。
カチャ、カチャ──無音の空間に、その音だけが響く。
それに顔を寄せる、久し振りの人間。
手を掴み、それに誘導する。
「興味あるなら、触ってほしいです。我慢が、もう限界です……弄ってください」
左右のそれを摘まれて、気分が落ち着く。
「これでいい? お母様から、男狂いと聞いていたのだけれど……」
女の人の声──私が男狂いだから、女性を指定したそう。
「違う。私、男狂いじゃない。気持ち良くなりたいだけ」
先生の摘み方、気持ち良い。特にピアスが付いている方が。身体がびくん、びくんと反応する。
「噛んで」
服を捲り上げると、それを口に含む先生。
唇と舌、頬、歯を使い吸引しながら刺激する。他の誰よりも気持ち良い感覚。先生の頭を抱き寄せる。
私の左手が、先生の服の中へ誘導される。
カチャ──
ん? よく知っている感触。でも、あるはずがない──服を捲って見ると、ピアスが付いている。どうされると気持ち良いかを、知っている。口に含み、先生のそれを刺激する。私は、私と同じものを持つ先生の虜になる。
先生は、私が頑張るとご褒美として、それを弄ってくれる。私は、そのご褒美がどうしても欲しいから頑張る。
先生を観察した結果、好みが私に近いことがわかった。
私は知っている。私でなければいけない存在になれば、依存することを。
「弄って」
先生が自ら乞うようになった。
私は知っている。我慢させられた後の、ご褒美の至福を。
「これ、終わってからね」
すぐには弄ってあげない。
私は知っている。背徳感が与える高揚を。
「可哀想だから、ちょっとだけ弄ってあげる」
私がされて気持ち良かったことを、全力でする。
反応を観察し、改善を繰り返す。好みに合わせて調整する。
◇◆◇◆◇◆◇◆
先生と出会って三ヶ月。私は戸惑い始める。
離したくないし、離れてほしくないのは本心。
でも、離したくないことと、離さないことは別。
先生は今年大学を卒業し、就職する。
家庭教師のバイトは辞めるだろう。誰かと出会って、結婚するかもしれない。遠くへ行ってしまうかもしれない。先生は、私から離れていく。
仕方ない──どうにか出来ることではない。
私には、そんなことを考えている余裕は無い。先生との時間を満喫した。悔いは無い。
一月には入試がある。先生経由で、母親から、地元の中学校には通わせられないと伝えられた。志望校に合格するか、この部屋に閉じ込められ続けるかの二択。
ご褒美のために、勉強は頑張っている。でも、合格出来るか際どい。もしものことを考えると、頭が痛くなる。
「合格すれば、これからも会えるね」
何故『会える』のか、わからない。
ちょっとした時間も惜しい。先生のそれを、指で弄りながら考える。
会いに来てくれるという意味だと解釈する。
「部屋からは出られる。でも、制限が厳しいから、たくさんは会えないかも」
「あのね、志望校に就職が決まったの」
『志望校に就職』を理解できない。
はむっ──私は困ると、それを咥える。
はむはむ──全く理解出来ない。
「んっ……聖桜中学校の教師になるの。ずっと一緒に居られるように」
先生がご褒美──努力して、失わずに済むようになるのなら、全てを注ぎ込む。
「絶対に合格し……」
願望と不安が入り混じり、口が震えて続きを言えない。手も震え始めた。
先生が震える手を掴む。
「嫁に来るかい?」
先生は、よく私を揶揄う。普段なら、軽くあしらうけれど──
「行けるなら、行きたい……ずっと一緒に居たい。離れたくない。離したくない。ずっと、ずっと一緒に居たい」
私を制御できない。涙が溢れ出す。
「任せて」
私が落ち着くのを待って、部屋を出ていく先生。
母親と共に戻ってきた先生は、抑揚も感情も無い言葉を私に告げる。
「試験までの期間、あなたを私の家で合宿させることになりました。必要な物をすぐに準備しなさい」
◇◆◇◆◇◆◇◆
先生と二人きりの車内。ここでのことは、二人だけの秘密。言いたいことを言える。
「先生のお嫁さんになれて嬉しい」
冗談であることはわかってる。ごっこでいい。今だけでも、先生のお嫁さんで居られることが嬉しい。
「嫁のために頑張る!」
「勉強は頑張るから、ご褒美とは別に、気持ち良くなるためだけの時間がほしい」
「寝るまでを、その時間にあてようか」
「うん。いっぱい気持ち良くなりたい」
「可愛いなあ。襲いたくなっちゃう」
「うん、いっぱい襲って」
アパートの駐車場に車が停まる。車から降り、アパートを見上げる。
「ここが先生の家?」
「違うよ。今から二人の家、だよ」
言葉に何かを感じたことは無い。
「先生、胸がきゅーっとなる感覚は何? 『嫁に来るかい?』と聞かれたときにもなった」
「今も、なってるの?」
「うん。苦しい」
「とりあえず、中に入ろうか」
手を引かれ、足早に部屋に入る。私をベッドに押し倒し、服の上からそれをこね回す。
「今が一番感度が高いはず」
その通りだ。感覚が研ぎ澄まされているような、気持ち良さが増幅されている感じがする。頭がふわふわしてきた。
目を開けると、先生と目が合う。
「おはよ。よく寝てたね」
気持ち良い目覚め。先生は、私のそれを二個とも弄ってくれている。
「すごく気持ち良かった。次は私が責める」
先生のピアスを外し、吸って、噛み、舌で転がす。以前、外して弄ってみたときに気持ち良かった。されたことは無いけれど、多分、先生も気持ちいいと思う──予想通り、先生がピクッピクッと激しく反応する。唾液をたっぷり付けた手のひらで転がす。
「ピクピクして可愛い。もっと気持ち良くしてあげる」
再びそれを口に含み、舌で転がす。
先生の足がピーンとなり、脱力する。構わずに刺激を続けると、ピクッ、ピクッと反応はする。顔が痺れてると、こんな感じなんだ──この状態でも、意識があることは知っている。刺激を続けると、反応が無くなった。多分、寝た。外したピアスを嵌めて、弄るのを辞める。
寝顔を眺めていたいけれど、私にはすることがある。持ってきた勉強道具を広げ、黙々と設問を解き続ける。一人の時間の全てを勉強に費やす。
◇◆◇◆◇◆◇◆
一月。合格発表日。
合宿が終わり、私が家に閉じ込められる日。
「もっと一緒に居たい……」
「そうだね」
お互いのそれを、口と指で弄り合う。
結果を見には行かなかった。見なくてもわかるから、見る必要は無い。限りある時間をそんなことに費やすより、有意義に使いたい。
私の正面に座り、真顔になる先生。
先生は、私と先生のピアスを外し、投げ捨てる。
先生が新しいリングを横向きに嵌める。
「エンゲージリングと」
縦向きに嵌める。
「マリッジリング……変わらぬ愛を誓います」
先生の隣に、リングが二個用意されている。
でも、先生のピアスは横向きのみ。穴は一つしかない。
使い道がわからないリングが一個──
先生は、注射針のようなものを私に渡す。
先輩の家で見たビデオで使われていた物だから知っている。ニードルという、ピアス穴を開けるための物。
そういうことか──針先を見つめた後、片方のそれを差し出す。
「両方に開けると、奴隷の証になるんだよね……いいよ。私、先生の奴隷になる。私の全てを先生に捧げる」
「違うの。えーと……私に、開けてほしいな……と」
ニードルを引っ込める先生。
「私、覚悟して全てを捧げたんだけど……無かったことになる?」
「えっ……あ……んー……」
困ってる先生が可愛い──痛がる先生を想像すると、ゾクゾクする。
「先生が、自分で開けるところを見せてくれますか」
「渡しちゃえば、開けてくれるかなと、期待したけれど、甘かったね。頑張ってみる」
私はニードルの先端を見つめる。
先生が、ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた──すごく愛らしい。
針先を当ててはいるけれど、躊躇っているから刺さってはいない。それでは、刺さらない──一思いに刺さないと、貫通させられない。
「手伝ってあげる」
先生の手を掴み、一気に押し込む。
スッ。
ピアッシング専用の道具だからか、スムーズに刺さる。貫通するまでに要した時間は一瞬。痛くないようにするため、ニードルの後ろ側にピアスを当て、抜くのと同時に通す。
「初めての共同作業だよね。マリッジリング、付けてもらっちゃった」
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嫌だと思っていた日が、二人の記念日に変わる。
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