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✼••┈第3話┈••✼ 後半(戦地)
しおりを挟む「まさか、あっちから仕掛けて来るなんて……」
エレナ副団長は外の惨劇に独り言を呟いた。彼女は少し考え、敵の攻撃手段の推測を言い始めた。
「アレイラ軍で開発された、広範囲を吹き飛ばせる、遠距離兵器……、いいえ、この威力を出すには大掛かりな兵器が必要になるから、奇襲は不可能……」
「そうなると、複数の魔導士の魔力を合わせた”複合魔法”ですね」
周りは爆発の影響で、吹き飛ばされた木片が燃え広がり炎の海と化している。
「火事だ、皆逃げろ!」
カザーフ王国軍の兵士たちが待機している軍事施設を狙われたようだ。
「こっちは、爆風でやられてる」
兵士たちは、怪我を負った仲間を庇いながら、徐々に迫る火の手から逃れてく。
「敵は、おい!敵はどこだ!」
指令部にいた兵士は、私とエレナ副団長と共に奇襲を仕掛けたアレイラ帝国軍の捜索を始めた。
「魔法を受けた方角からして……」
エレナ副団長は炎が激しく巻き上がっている場所へ冥炎の杖を向けた。
「そこだっ」
エレナ副団長が黒炎魔法を唱えると、杖の魔石から黒い炎球が放たれ、遠くで爆炎が上がった。しかし、手ごたえが無かったらしい。彼女は舌打ちをしながら、複合魔法を使ったであろう魔導士たちの気配を探っていた。
私は目の前の惨劇に目を奪われていた。
どうして、傷ついているの。
どうして、反撃出来ないの。
私の頭に、昨日まで共に戦ってきたカザーフ王国軍の兵士や、宮廷警護団の団員の顔が浮かんだ。仲間を奪った帝国軍が許せない。
仲間を救いたい感情と、傷つけた帝国軍に対する怒りが混ざり合い、感情を抑えられなくなった。
「だめ、相手の場所を見つけられない。火の手がこっちに来るわ。ナオ、ナオ!撤退するわよ!」
「いや!アレイラ軍の思い通りにはさせない!」
「え、ちょっと、ナオ!」
エレナ副団長の判断は正しい。でも、このまま背を向けて逃げることは出来ない。
エレナ副団長が私を引き留めようと声を掛け続けている、でも構わない。
私は逃げ惑う兵士と逆らうように吹き飛ばされた軍事施設へ向かった。そして、私は爆心地に辿り着いた。
爆発に巻き込まれ、動けない兵士たちがそこら中に横たわっている。
「……」
私は致命傷を負った兵士たちの元へ駆け寄ると、癒しの杖を次々と押し当てていった。
ぼわっと青白い光を放ったままの癒しの杖を押し当てると、彼らは青白い光に包まれ瞬く間に傷が癒えてゆく。
「助かった!魔法はあっちから飛んできたぞ!」
「ああ、間違いねえ、あの奥の森だ」
「知ってるの!なら、奇襲した敵の討伐へ向かって!」
「了解! おい、行くぞ!」
「おおっ!!」
「皆殺しだぜ!」
回復した兵士は、手掛かりを頼りに討伐に向かっていった。
私たちのまわりには施設にあった剣や槍が散らばっている。なら、このまま倒れた兵士を癒していけば、彼らは武器を拾って、敵兵の討伐に行くはずだ。
(ここを護る、そして戦局を変える)
私は報復戦力を増やすため、致命傷を負った兵士を次々に癒していった。
いつもなら、魔力切れを起こす人数だというのに何故か何とも感じない。疲れて行くどころか、活力が湧いてくる。心持ち気分もいい。
「ナオ……、状況を説明して頂戴」
エレナ副団長の声が聞こえ、私は現実へと引き戻された。
周りを眺めると、水魔法が使える魔法兵たちが消火作業にあたってる。
「えっと」
高揚状態だった私は、現実に引き戻され、魔力がでない事に気が付いた。
急に目の前がぐらつき、杖を支えにその場に座り込んだ。
エレナ副団長が私の傍に寄り、持っていた魔力回復薬を私の口に無理矢理押し込んだ。
魔力回復薬が喉に入り、私は少しの間、咳き込んだ。
「治療した兵士たちが、攻撃が放たれた方角を目撃していたようで、彼らをそこへ向かわせました。私は戦力を増やそうと、周りの味方兵を無我夢中で――」
「……分かった。もう、勝負がついたみたい。後は私がやるから、あなたは休んでて」
「ありがとうござ――」
「上官の命令を無視した件は黙っといてあげる。でも、ちゃんと反省しなさいよ」
「わ、分かりました」
「よろしい。お疲れさま」
私が癒した兵士たちが戻って来た。
エレナ副団長が彼らと会話をしているところで、私は意識が途切れた。
目覚めた後、私は奇襲したアレイラ帝国軍について教えてもらった。奇襲を企てた帝国兵は上級魔導士のみで構成された精鋭、総数は十八名。全て味方の兵士が殲滅したそうだ。
奇襲したアレイラ帝国軍への報復は無事成功した。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼
アレイラ帝国軍の奇襲を受けてから十日後の朝、私とエレナ副団長は前線へは行かず、後方の地方司令部で待機している。
ザリウス団長が王都からやって来るからである。
彼が来る理由は、トナナ村の膠着状態を打破するため。そう、カザーフ国王軍が”トナナ村奪還作戦”を決行するためである。
「はあ、重い腰をようやくあげたか」
「ですね」
私とエレナ副団長はトナナ村奪還作戦に参加するザリウス団長を迎えるため、ここにいる。
「あ、団長きたわね」
エレナ副団長は双眼鏡を覗き、ザリウス団長の姿が見えたことを私に教えてくれた。
連絡兵によれば、ザリウス団長を率いた宮廷警護団の他に、補給兵もいるとか。
今回の来訪は補給物資の護衛も兼ねているらしい。
しばらくして、ザリウス団長の率いる宮廷警護団と補給物資が到着した。
「団長、お待ちしていました」
「うむ。戦況とナオの調子はどうだ?」
「はっ、戦況はいまだ膠着状態が続いています。ナオを入れてから、彼女を加えた前線部隊の死傷者は〇名。部隊からの評価は高く、信頼されております」
「あ、ありがとうございます」
「……ただの報告だから。照れてるんじゃないわよ」
エレナ副団長の言葉に私は頬を赤くし、身をよじらせた。
私の反応を見たエレナ副団長は、私を肘で小突き、小言を言った。
「ならば、本作戦に入れてもよさそうだな」
「はい。私もそう思います」
エレナ副団長の報告を聞いたザリウス団長は深く頷いた。
どうやら、私はトナナ村奪還作戦に加えて良い人材なのか試されていたようだ。
どうやら合格だったみたい。
「では、警護団の団員を一か所に集めよ。作戦内容を話す」
ザリウス団長は連絡兵の一人に命令した。
連絡兵はすぐに行動へ移した。
(この作戦が成功すれば、戦況は一気に変わる)
トナナ村を奪還できれば、アレイラ帝国軍は後方へ下がるしかなくなり侵攻も終わる。
戦況を大きく変えることのできる作戦に私が参加できるんだ。
アレイラ戦争を終わらせる、その目標に近づけたと感じた私は、拳を握り、両手を小さく掲げ、喜びの感情を体現した。
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