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✼••┈第7話┈••✼ (秘薬)
しおりを挟むザリウス団長を蘇生できなかった。
その出来事は私を絶望に追いやった。
私が持ち帰った王命により、トナナ村の再建作業は遅れを取り戻していった。作業を妨害する村人はいなくなり、遠くから暴言を吐くだけとなった。
「私の白魔法の限界ということよね……」
私は一室で、自身を責めていた。
私の白魔法はアレイラ帝国軍の”奇襲”や”トナナ村奪還作戦”で大いに役立った。その功績を称えられ、国王から『ガルーダの羽根』という二つ名だって貰った。
ザリウス団長を蘇生出来なかった理由を自問している。答えは出てこない。
「……」
私は窓から外を眺めた。
外では宮廷警護団の先輩とカザーフ王国軍の兵士たちが協力して再建作業を行っている。
彼らはザリウス団長の蘇生が出来なかったことについて何も言及してこない。
私が宮廷警護団副団長としての役割を果たさず、部屋に引き籠っていても、陰口一つも言わず、復興作業に専念してくれている。
「外へ出よう」
皆、気を遣ってくれている。
私がここにふさぎ込んでから三日たつ。気持ちが追い付いていなくても、外へ出て副団長として市事をこなさなきゃ。
私は自室から出た。居間を抜け、外へ出ようとしたその時、誰かがこの家に入って来た。
「ナオ、いるじゃない」
「エレナ様! ナオ様は――」
「うっさい! 事情は王都でも流れてる。さっきも延々聞いたっての」
訪問者はエレナさんだった。
兵士の制止を振り切り、エレナさんは治療室へ入り、私に近づいた。
「なにやってんのよ」
「その……」
「団長を蘇生できなくって、部屋に引き籠ってたってわけ?」
「……はい」
エレナさんは怒っている。先輩や兵士を叱りつける声音だった。
私は素直に返事をした。
パチン。
直後、頬にジンと痛みが走った。
「なんで、あんたの白魔法で蘇生出来なかったのよ」
「それは――」
「理由はちゃんとあんのね? なら、なんで私達に報告しない、一人で抱えてるわけ」
「その……」
「はっきりと言うわ……、三日間くよくよして、目障りなのよ! 蘇生できなくても、宮廷警護団の副団長として仕事をしなさいよ! あんたがいないから、止まっている作業もあるのよ」
「なら――」
エレナさんは正論を私に次々とぶつけてきた。
間違ったことは言われていない。それは頭で理解できているのに、私は素直になれなかった。
「エレナさんが代わりにやってくださいよ」
私はそう言い捨て、外へ出た。
エレナさんはやけになった私を引き留める。
「わかった。ここの再建作業は私が引き継ぐ」
「……お願いします」
「なら、私が今日から宮廷警護団の団長よ! いいわね」
「ええ。エレナ団長、あとは頼みます」
エレナさんが団長になるのなら、宮廷警護団の人達は文句を言わないだろう。私よりもエレナ団長が指示を送ったほうが、トナナ村の再建作業のほうも進むだろう。
「ナオ、何処へ行くつもり?」
「……王都へ行きます。しばらく戻りません」
「あっそ」
私はエレナ団長に行き先を告げた。
エレナ団長は何も言わず、私を見送ってくれた。
いや、私の身勝手な行動に呆れているのか。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼
私はトナナ村の再建作業をエレナ団長に押し付け、王都へ戻って来た。
ここへやって来たのは私の白魔法を強化するためだ。
ザリウス団長は肉体が完全に炭化していたから蘇生することが出来なかった。トナナ村から王都へ移動する間に様々な蘇生方法を考えたが、あの状態から蘇生させる最適解は見つけられなかった。
(資料保管庫なら、手掛かりがあるかもしれない)
王都の資料保管庫、ここにはカーザフ王国の知恵が詰まっている。
一般人では立ち入ることが出来ない場所だが、宮廷警護団副団長の私は名前を告げるだけで資料保管庫に入ることが出来た。
「白魔法――、魔力を強化する道具――」
私は白魔法を強化する詠唱方法か、自身の魔力を強化する道具が書かれている本を探した。
王都の資料保管庫だけあって、めぼしい資料がいくつか見つかった。
「うん、ここなら私の白魔法を強化させる方法が見つかるはず」
そう確信した私は、宮廷警護団本部と資料保管庫を行き来する生活を続けた。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼
白魔法を強化する方法を探し始めてから、半月が経った。
私はようやく、手掛かりを見つけた。
「”いにしえの薬”」
いにしえの薬について書かれている本はボロボロだった。
紙はザラザラしていて、黄ばんでる。その上に書かれている文字はインクがかすれていて読みづらい。ちょっとでも乱暴に扱えば崩れてしまうだろう。
この本には、いにしえの薬には飲んだ魔術師の魔力を一時的に上げる効能がある、と書かれている。
初歩的な攻撃魔法しか唱えられなかった黒魔導士が、いにしえの薬を一口飲んだだけで、上位の攻撃魔法を唱えることが出来たとか。
これだ。
私が求めていたものは”いにしえの薬”だ。
ページをめくり、私はこの薬の製造方法を探した。
「え……」
私は本を読み終え、絶句した。
「使用禁止薬に……、認定!?」
最後のページに一文付け足されていた。
使用禁止薬。どうやら、いにしえの薬は効能ゆえに、カザーフ王国では使ってはいけない薬と認定されてしまったらしい。
破られたページが途中にあったが、そこに、いにしえの薬の製造方法が書かれていたのだろう。
私はチッと舌打ちした。
「この薬があれば、私の白魔法が強化されるのに。なんで、使用禁止薬に認定されてるの!」
手掛かりが見つかったのに、振り出しに戻された。
私は机を強く叩き、苛立ちを声にだした。
「……製造方法は処分されちゃったけど、本の中に手掛かりが――」
苛立ちを吐き出し、気持ちを落ち着ける。
製造方法は書かれていなかったけれど、文面の中に手掛かりがあるかもしれない。
私は、本を一ページ目から熟読し始めた。
半分まで読み終え、仮定が確信に変わった。
最後まで読み進めれば、調合の手掛かりが掴める。はずだったのに――。
「――ナオ様」
「っ!?」
「やっと気づかれましたか」
私の背後に中年の男性がいた。
男性は私を何度も呼んでいたらしく、私が振り返った際、ほっとしているように見えた。
「あなたは――」
「資料保管庫の管理人です。ナオ様、宮廷警護団エレナ団長からの伝言がございます」
「はい。お願いします」
今になって、エレナ団長が?
私は伝言の内容を聞く。
管理人は咳払いをして、声の調子を整えた後、私に伝言を告げた。
「ナオ副団長、早急にトナナ村へ帰還せよ」
「帰還……、命令」
私はエレナ団長の命により、トナナ村へ帰還することとなった。
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