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旅路
生きる伝説
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「司令官、このことは他言無用で?」
イガさんがお仕事の顔に戻る。
『切り替え』って、こう、なんかカッコいい・・・。
「そうしてくれ。今後の事は王都に着き次第考える。
2人とも、どうかアキオを守ってやってくれ。よろしく頼む」
何も言わずにずっと見守ってくれていたジルさんが2人に頭を下げた。
「ジルさん・・・」
「もちろんです!俺たちがアキオ君を守ってみせます!」
「はい!でも、司令官が付いていらっしゃるのなら、僕達の出る幕は無さそうですけどね」
「それは言えてますね。何といっても司令官は、“生きる伝説”ですから・・・!!」
「伝説・・・?」
ジルさん、若干30歳にして伝説と称されるなんて、よっぽどの事をしたに違いない。
夜の城の窓ガラス割ってまわったり?
盗んだ馬車で走り出したり?
「そうだよ、アキオ君!
司令官はね、その腕っぷしと頭脳で、16歳で入隊後すぐに頭角を現し、どこの部隊も喉から手が出るほど欲しい人材だと引っ張りだこになって、配属された歩兵隊、騎馬隊、偵察部隊、宮廷護衛隊の全てで隊長を務めた後、その洞察力と観察力を買われ、28歳の若さで最高司令官に!すごいでしょ!」
良かった。僕の思い描く伝説と真逆のベクトルで、しかも桁違いに有能だった。
こんなに優秀な人って、普通他人のこと付きっきりで看病したり毎日欠かさず料理を作ったり、部下の栄養面を個人的にお世話したりする・・・?
偉い人なのに傲りってものが微塵も感じられないのは、やっぱり努力と鍛錬で掴んだ地位だからだろうか。それとも単純に『人柄』なんだろうか。
「戦後、軍が再編成されてからは軍事力の不安定な時期が続いたらしいですが、司令官の入隊後は様々な改革がなされ、今では自衛力と軍事力が拡大し、地方への厚い支援活動も可能になりました」
そうだったんだ。
またひとつ『軍』についての知識が増えた。
もちろん、ジルさんただ1人の力では無いんだろうけど、彼の持つ正義感の中には今まで出会った人にも、もちろん自分の中にも感じたことのない“一貫性”がひしひしと伝わってくるし、きっと彼無くしては成し遂げられなかったこともたくさんあるに違いない。
それに、自分を刺した人にも優しいんだもの。
人には柔軟なのに自分に対しては頭がかたいなんて、それこそ苦しくなったりしないのかな?
「だが、まだまだ理想には程遠い。昨日のご主人がそうだったように、苦痛に耐えながら生きている人間は山ほどいる」
・・・まあ、この人は根っからこういう人なんだろう。
「はい。皆が世界の事を知り、皆が政治に参加できる世の中にして行きましょう」
「王都には義務教育も導入されたし、新聞を買う人も増えてるし、少しずつですが確実に進んでますよ!」
イガさんもメテさんも僕とそんなに生きている年数は違わないのに、顔もわからない誰かの為に自分の命を燃やしている。
やっぱり、平和ぼけしている僕には考えられないような人生を歩んでいるのかもしれない。
「頼りにしている」
ジルさんに頼りにされる2人、なんか嬉しそうだな。
「アキオ、王都に到着したら、まず王に謁見してもらう」
王か。すごいなあ、王様に謁見。いいなあ。
・・・え、僕が?
王に・・・謁見!?
「大丈夫、私も一緒だ。宮廷も頼りになる人間ばかりだ。心配いらない」
そんな、さらっと。
ジルさん勘違いしてない?今のは幼児に対して「明日から幼稚園に通ってもらう。大丈夫、私も一緒だ。先生も頼りになる人ばかりだ。心配いらない」って言うテンションだったよ?
王とか宮廷とか厳かな単語を出すときはもっと厳かな顔をして言わないと。そんなに穏やかにこっちを見ないで。
「王様・・・宮廷・・・」
でも、よく考えたら当然のことなのかもしれない。
6000年以上異世界人が渡ってこなかったこの世界で、僕は異端中の異端だ。
134年前に研究者による召喚が失敗し、その時繋がった世界の人間である可能性の高い僕は、重要参考人的な、アレなんだろう。
「アキオ君!大丈夫だよ!司令官も一緒って言ってるでしょ?それに王様も良い人だから」
「メテさん、会ったことあるんですか?」
「俺はまだ遠くからしか見たこと無いけど、イガさんはあるよ」
ね?とメテさんが目をやると、イガさんは「ええ、まあ」と続けた。
「良い人、というよりも、いい意味で庶民的というか・・・。ま、アキオ君も会えば分かりますよ!」
どこか投げやりな感じもしないではないが、“生きる伝説”と名高いジルさんが一緒なら大丈夫だ。
それに僕の中の王様像は、ジルさんに似て正義感が強くて、ちょっと頭がかたいけど思いやりに溢れる感じ。庶民的な王様なんて最高じゃないか。元の世界でもそういう王族が人気あるし、きっと優しいはず。
「ジルさん、よろしくお願いします」
「ああ。何か不安がある時は遠慮なく言いなさい」
「はい」
いつまでものんびりしていられないので片付けを進めつつも美味しい空気を楽しんでいると、メテさんが普段大きい声をひそめてぼそぼそと耳打ちをしてきた。
「アキオ君、僕がこんなこというのもあれだけど、司令官はかなり優良物件だよ!」
と。
「はあ、」
間抜けな声を出して見上げると、なぜか華麗にウインクを決められた。
その顔立ちでウインクなんて、絵になるわ・・・。
人を建造物みたいに言うメテさんの言葉の意味が分かったのは、それからしばらく経ってからのことだった。
イガさんがお仕事の顔に戻る。
『切り替え』って、こう、なんかカッコいい・・・。
「そうしてくれ。今後の事は王都に着き次第考える。
2人とも、どうかアキオを守ってやってくれ。よろしく頼む」
何も言わずにずっと見守ってくれていたジルさんが2人に頭を下げた。
「ジルさん・・・」
「もちろんです!俺たちがアキオ君を守ってみせます!」
「はい!でも、司令官が付いていらっしゃるのなら、僕達の出る幕は無さそうですけどね」
「それは言えてますね。何といっても司令官は、“生きる伝説”ですから・・・!!」
「伝説・・・?」
ジルさん、若干30歳にして伝説と称されるなんて、よっぽどの事をしたに違いない。
夜の城の窓ガラス割ってまわったり?
盗んだ馬車で走り出したり?
「そうだよ、アキオ君!
司令官はね、その腕っぷしと頭脳で、16歳で入隊後すぐに頭角を現し、どこの部隊も喉から手が出るほど欲しい人材だと引っ張りだこになって、配属された歩兵隊、騎馬隊、偵察部隊、宮廷護衛隊の全てで隊長を務めた後、その洞察力と観察力を買われ、28歳の若さで最高司令官に!すごいでしょ!」
良かった。僕の思い描く伝説と真逆のベクトルで、しかも桁違いに有能だった。
こんなに優秀な人って、普通他人のこと付きっきりで看病したり毎日欠かさず料理を作ったり、部下の栄養面を個人的にお世話したりする・・・?
偉い人なのに傲りってものが微塵も感じられないのは、やっぱり努力と鍛錬で掴んだ地位だからだろうか。それとも単純に『人柄』なんだろうか。
「戦後、軍が再編成されてからは軍事力の不安定な時期が続いたらしいですが、司令官の入隊後は様々な改革がなされ、今では自衛力と軍事力が拡大し、地方への厚い支援活動も可能になりました」
そうだったんだ。
またひとつ『軍』についての知識が増えた。
もちろん、ジルさんただ1人の力では無いんだろうけど、彼の持つ正義感の中には今まで出会った人にも、もちろん自分の中にも感じたことのない“一貫性”がひしひしと伝わってくるし、きっと彼無くしては成し遂げられなかったこともたくさんあるに違いない。
それに、自分を刺した人にも優しいんだもの。
人には柔軟なのに自分に対しては頭がかたいなんて、それこそ苦しくなったりしないのかな?
「だが、まだまだ理想には程遠い。昨日のご主人がそうだったように、苦痛に耐えながら生きている人間は山ほどいる」
・・・まあ、この人は根っからこういう人なんだろう。
「はい。皆が世界の事を知り、皆が政治に参加できる世の中にして行きましょう」
「王都には義務教育も導入されたし、新聞を買う人も増えてるし、少しずつですが確実に進んでますよ!」
イガさんもメテさんも僕とそんなに生きている年数は違わないのに、顔もわからない誰かの為に自分の命を燃やしている。
やっぱり、平和ぼけしている僕には考えられないような人生を歩んでいるのかもしれない。
「頼りにしている」
ジルさんに頼りにされる2人、なんか嬉しそうだな。
「アキオ、王都に到着したら、まず王に謁見してもらう」
王か。すごいなあ、王様に謁見。いいなあ。
・・・え、僕が?
王に・・・謁見!?
「大丈夫、私も一緒だ。宮廷も頼りになる人間ばかりだ。心配いらない」
そんな、さらっと。
ジルさん勘違いしてない?今のは幼児に対して「明日から幼稚園に通ってもらう。大丈夫、私も一緒だ。先生も頼りになる人ばかりだ。心配いらない」って言うテンションだったよ?
王とか宮廷とか厳かな単語を出すときはもっと厳かな顔をして言わないと。そんなに穏やかにこっちを見ないで。
「王様・・・宮廷・・・」
でも、よく考えたら当然のことなのかもしれない。
6000年以上異世界人が渡ってこなかったこの世界で、僕は異端中の異端だ。
134年前に研究者による召喚が失敗し、その時繋がった世界の人間である可能性の高い僕は、重要参考人的な、アレなんだろう。
「アキオ君!大丈夫だよ!司令官も一緒って言ってるでしょ?それに王様も良い人だから」
「メテさん、会ったことあるんですか?」
「俺はまだ遠くからしか見たこと無いけど、イガさんはあるよ」
ね?とメテさんが目をやると、イガさんは「ええ、まあ」と続けた。
「良い人、というよりも、いい意味で庶民的というか・・・。ま、アキオ君も会えば分かりますよ!」
どこか投げやりな感じもしないではないが、“生きる伝説”と名高いジルさんが一緒なら大丈夫だ。
それに僕の中の王様像は、ジルさんに似て正義感が強くて、ちょっと頭がかたいけど思いやりに溢れる感じ。庶民的な王様なんて最高じゃないか。元の世界でもそういう王族が人気あるし、きっと優しいはず。
「ジルさん、よろしくお願いします」
「ああ。何か不安がある時は遠慮なく言いなさい」
「はい」
いつまでものんびりしていられないので片付けを進めつつも美味しい空気を楽しんでいると、メテさんが普段大きい声をひそめてぼそぼそと耳打ちをしてきた。
「アキオ君、僕がこんなこというのもあれだけど、司令官はかなり優良物件だよ!」
と。
「はあ、」
間抜けな声を出して見上げると、なぜか華麗にウインクを決められた。
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