ある時計台の運命

丑三とき

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旅路

ドキドキお風呂タイム②

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やっぱり1人で入りますなんて言い出せるはずもなく、あれよあれよと2人で入る空気が出来上がってしまった。
今ジルさんと一緒にお風呂に入って、心臓が保もつのかどうか危ういけど大丈夫?僕。


どうしようとそればかり考えているうちに脱衣所に到着し、もぞもぞ手間取りながら服を脱ぐ。

この状況ですら色々想像してしまって勝手に恥ずかしい。色々っていうのは例えばジルさんの裸とか。

・・・安心しろ、想像せずとも数分後には見れるから。あっ、そうだった。お風呂って裸にならないといけないんだった。

良く考えたらお風呂って、とても平常心では居られないシチュエーションだということに今更気が付く。むしろ何で今まで平気だったんだろう。

ツリーハウスでもずっとジルさんに入れてもらったり、こけたりしないか監視されながら入ったり、裸を見られるのなんてそんなに恥ずかしい事だと思わなかったけど、これから入浴をご一緒するに当たって見られる事になるあれやこれや、見る事になるあれやこれやを想像しただけで急に頭に熱が集まってくる。

もう、なんかあれもこれも全部メテさんのせいな気がする。


やっとのことで上の肌着まで脱いでジルさんの方をチラッと見ると、いつも通りバキバキのお腹に傷を見つけた。

旅の序盤も序盤に刺された傷。さすが精霊の力。あんなにグサッといったのにもう完璧に塞がってる。しかもほぼ治ってる。治ってるけど・・・


「ジルさんそれ、消毒ちゃんとしていますか?」

「消毒・・・ああ、傷か。こういうのはいつも風呂で洗い流すくらいだ」

「ガーゼや包帯は?」

「動き辛いからな」


なるほど、分かった。この人他人たにんには丁寧すぎるくらい丁寧だけど、自分にはめちゃくちゃズボラだ。
小さ過ぎる欠点だけど、ジルさんの意外な一面を発見できたことに体が浮くほど胸が舞い踊っているのを感じる。


その傷は、治っているとは言っても、せっかく傷を覆った皮膜が赤く腫れて化膿しそうな状態になっていた。

「いくら治りが早くても、消毒も包帯もしなかったら服に擦れて化膿しちゃって、治るのも遅くなるし跡も残ってしまいます。お風呂上がったら消毒しましょう。僕の傷はあんなに丁寧に治してくれたのに・・・」

なんで自分のはこんな雑に・・・などとぶつくさ言いながら脱ぎ進めていると、ジルさんが僕をその鋭い目で凝視していることに気がついた。

・・・あ、やってしまった。

こういうシーンドラマで見たことある。
寝る間も惜しんで働き、家に帰って疲労困憊の中大切な息子のために夕食を作る母親。思春期の息子は、母親の苦労など知らず「カレーが良かった」「これ味薄くね?」と小言を言うんだ。

完全に僕、今その息子だよ。
今まで優しさを一心に受けておきながら、手当の怠りを目ざとく見つけて小言を言うなんて、はぁ、最悪だ。また10秒前に戻りたい。

「えっと・・・ごめんなさい」

「アキオは優しいな」

・・・

「え?」

今のどこに優しい要素あった?

発言を後悔している最中に思ってもない言葉をかけられて動揺する。
フォローしてくれたのかな。

「優しいのはジルさんでしょう?」

「私か?」

嘘、無自覚?
そうだった。ジルさん天然なんだった。

優しいと自覚してない優しさって何?
もうそれ本物の優しいやつじゃん。知ってたけど。

本当に、人として完璧すぎて嫌になる。自分が嫌になる。
卑屈にならない様にしようと意気込んでも、実際相手がこんなに素晴らしすぎるんだから無理だよ。どうしたって自分と比べてしまう。どう頑張っても自分の嫌なところが剥き出しにされてしまう。
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