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旅路
ドキドキお風呂タイム③
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だから僕は、剥き出しの自分をぶつけることにした。
『思った事を素直に言う。』今出来る精一杯はこれだけだと思った。
「ジルさんは優しいです。助けてくれた時だって付きっきりで面倒を見てくれたし、僕が泣き言を言ってもずっと寄り添って話を聞いてくれた。ジルさんが完璧過ぎて、自分が小さい人間に思えちゃう事もあるんですよ?
こんなに素敵な人の近くにずっと居たらバチが当たってしまいそうです。
それに、男らしくて背も高くて力もあるから、僕がちんちくりんなのがすぐに分かっちゃうじゃないですか。並んだら完全に親子です。
この旅でも町の人に何度『親子か?』って聞かれた事か。そりゃ、僕がこの世界の人より小さいし幼く見えるから仕方無いですけど、30歳のジルさんと親子ですよ?これはもう完全に、ジルさんに貫禄と威厳がありすぎるせいです。その上優しいんですから。誰だって敵わないですよ」
話しているうちに全然関係無い話に脱線し、ただの八つ当たりみたいになった。
ぷんすかと頬を膨らませながら不満垂れる僕を、ジルさんは何故か楽しそうに見ている。
こっちはこんなに真剣なのに、何をそんなに楽しんでいるんだ。
ジルさんはそのいつにも増して愉快そうな顔で一通り僕の文句を受け止めると、再びきゅっと表情を引き締めてこう言った。
「私はただ、アキオの努力に恥じない生き方をしたいだけだ」
「・・・僕の?」
ジルさんの言う事は、こうやって時々難しい。
「何も分からず異世界に来て、酷い扱いを受けた。自棄になってもおかしくないような経験をしたんだ。それでも君は生きたいと言ってくれた。
なんて強い子だろうと思った。そして、自分が傷ついている中でも他人を思いやれる優しさも持っている。私はそんな君をとても尊敬している。
こちらへ来て苦悩を重ねた君に言う言葉としては適切ではないのかもしれない。だが、これだけは言わせて欲しい。
アキオ、この世界に来てくれてありがとう」
やっぱり難しい。
ジルさんに比べたら、仏様のようなイガさんとメテさんに比べたら、戦後を力強く生きるこの世界の住人に比べたら、僕の優しさや強さなんて有って無いようなものだ。
なのに、どうしてこんなに心の底から真っ直ぐな感謝をくれるのか。
それはやはり、僕とジルさんが『違う』からだ。
何かにつけては「ジルさんと比べたら」「この世界の人に比べたら」って、他と比べるしか自分を確立できなかった僕の弱さが、僕を卑屈にしていたのだ。
ジルさんは、僕をただ1人の『僕』として見てくれている。
だとしたら僕自身もたった1人の僕として、たった1人のジルさんに伝えたい。
「僕も、同じ気持ちです。
ここの人たちにとって僕の存在は大きな不安要素なのかもしれないけど、僕はこの世界に来ることができて本当に良かった。これから先何があっても、この気持ちだけは絶対に変わりません。
ジルさん、僕を助けてくれて、生きたいと思わせてくれてありがとうございます」
なんて事ない言葉だと思う。
でも僕にとってはやっとのことで振り絞った言葉だ。
きっとジルさんはいつもの優しい目で微笑んでくれる、そう思っていた。
思っていたけど、いつもきゅっと結んでいる唇は半開きにして、目は鋭さを失って、呆気に取られた不思議な顔をしている。
「・・・ジルさん?」
何かまずい事を言っただろうか。
もしかして、さっき遠回しに『ジルさん30歳に見えない発言』したのがまずかったか。
違うんです。そうじゃないんです。
確かにもっとベテランに見えるけど、怖めの顔とか人生3回目っぽい感じとか、ドスの効いた声とか、その雰囲気がそうさせているだけであって、肌はまだツルツルだし皺もまだ眉間にしか無いし、何よりゴッツゴツのお身体など、良く見ると見た目はとても若々しいんです!老けて見えるとかそう言う事を言っているのでは無いんです!
心の中であたふたする僕に、ジルさんが思いもよらない言葉を発す。
「ああ、いや・・・今日はアキオの素直な気持ちが沢山聞けると思ってな。すまない、感動していた」
感動って、また大袈裟なことを。
表情が分かるようになったと言っても、まだまだ仏頂面という表現が相応しいその顔で、とても感動しているようには見えない。
ジルさんの中に『感動』という感情があることに失礼ながら驚きつつ、怒らせてしまった訳ではないと分かり安堵する。
「それに、アキオの背丈も、幼い顔つきも素敵だと思うぞ」
そしてまたフォローをされた。
優しさに傷つくことだってあるんですよ?
といいつつ、少し、いや、だいぶ嬉しかったのは誰にも言わないでおく。
ジルさんに「素敵」と言われた事は、僕だけの大事な思い出にしよう。
『思った事を素直に言う。』今出来る精一杯はこれだけだと思った。
「ジルさんは優しいです。助けてくれた時だって付きっきりで面倒を見てくれたし、僕が泣き言を言ってもずっと寄り添って話を聞いてくれた。ジルさんが完璧過ぎて、自分が小さい人間に思えちゃう事もあるんですよ?
こんなに素敵な人の近くにずっと居たらバチが当たってしまいそうです。
それに、男らしくて背も高くて力もあるから、僕がちんちくりんなのがすぐに分かっちゃうじゃないですか。並んだら完全に親子です。
この旅でも町の人に何度『親子か?』って聞かれた事か。そりゃ、僕がこの世界の人より小さいし幼く見えるから仕方無いですけど、30歳のジルさんと親子ですよ?これはもう完全に、ジルさんに貫禄と威厳がありすぎるせいです。その上優しいんですから。誰だって敵わないですよ」
話しているうちに全然関係無い話に脱線し、ただの八つ当たりみたいになった。
ぷんすかと頬を膨らませながら不満垂れる僕を、ジルさんは何故か楽しそうに見ている。
こっちはこんなに真剣なのに、何をそんなに楽しんでいるんだ。
ジルさんはそのいつにも増して愉快そうな顔で一通り僕の文句を受け止めると、再びきゅっと表情を引き締めてこう言った。
「私はただ、アキオの努力に恥じない生き方をしたいだけだ」
「・・・僕の?」
ジルさんの言う事は、こうやって時々難しい。
「何も分からず異世界に来て、酷い扱いを受けた。自棄になってもおかしくないような経験をしたんだ。それでも君は生きたいと言ってくれた。
なんて強い子だろうと思った。そして、自分が傷ついている中でも他人を思いやれる優しさも持っている。私はそんな君をとても尊敬している。
こちらへ来て苦悩を重ねた君に言う言葉としては適切ではないのかもしれない。だが、これだけは言わせて欲しい。
アキオ、この世界に来てくれてありがとう」
やっぱり難しい。
ジルさんに比べたら、仏様のようなイガさんとメテさんに比べたら、戦後を力強く生きるこの世界の住人に比べたら、僕の優しさや強さなんて有って無いようなものだ。
なのに、どうしてこんなに心の底から真っ直ぐな感謝をくれるのか。
それはやはり、僕とジルさんが『違う』からだ。
何かにつけては「ジルさんと比べたら」「この世界の人に比べたら」って、他と比べるしか自分を確立できなかった僕の弱さが、僕を卑屈にしていたのだ。
ジルさんは、僕をただ1人の『僕』として見てくれている。
だとしたら僕自身もたった1人の僕として、たった1人のジルさんに伝えたい。
「僕も、同じ気持ちです。
ここの人たちにとって僕の存在は大きな不安要素なのかもしれないけど、僕はこの世界に来ることができて本当に良かった。これから先何があっても、この気持ちだけは絶対に変わりません。
ジルさん、僕を助けてくれて、生きたいと思わせてくれてありがとうございます」
なんて事ない言葉だと思う。
でも僕にとってはやっとのことで振り絞った言葉だ。
きっとジルさんはいつもの優しい目で微笑んでくれる、そう思っていた。
思っていたけど、いつもきゅっと結んでいる唇は半開きにして、目は鋭さを失って、呆気に取られた不思議な顔をしている。
「・・・ジルさん?」
何かまずい事を言っただろうか。
もしかして、さっき遠回しに『ジルさん30歳に見えない発言』したのがまずかったか。
違うんです。そうじゃないんです。
確かにもっとベテランに見えるけど、怖めの顔とか人生3回目っぽい感じとか、ドスの効いた声とか、その雰囲気がそうさせているだけであって、肌はまだツルツルだし皺もまだ眉間にしか無いし、何よりゴッツゴツのお身体など、良く見ると見た目はとても若々しいんです!老けて見えるとかそう言う事を言っているのでは無いんです!
心の中であたふたする僕に、ジルさんが思いもよらない言葉を発す。
「ああ、いや・・・今日はアキオの素直な気持ちが沢山聞けると思ってな。すまない、感動していた」
感動って、また大袈裟なことを。
表情が分かるようになったと言っても、まだまだ仏頂面という表現が相応しいその顔で、とても感動しているようには見えない。
ジルさんの中に『感動』という感情があることに失礼ながら驚きつつ、怒らせてしまった訳ではないと分かり安堵する。
「それに、アキオの背丈も、幼い顔つきも素敵だと思うぞ」
そしてまたフォローをされた。
優しさに傷つくことだってあるんですよ?
といいつつ、少し、いや、だいぶ嬉しかったのは誰にも言わないでおく。
ジルさんに「素敵」と言われた事は、僕だけの大事な思い出にしよう。
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