ある時計台の運命

丑三とき

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旅路

プレゼント大作戦②

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ノリ気になったメテさんが盛大な拍手を送ってくれる。
大作戦…。そこまでのつもりは無いけれど、せっかく贈るなら喜んでもらえるものがいい。

「この世界の方には、何を贈るのがいいでしょうか?」

元の世界でも誰かに贈り物なんてしたことがなかった。
職場のホワイトデーにも、退職する人への花束にも、全員分で割ったお金を出すだけ。
自分で選んだことなんて一度もないので、この世界のどころかプレゼントに対する常識的なもの自体が欠けているのだ。

もしかしたら人にあげては失礼になるものなどもあるかも知れない。そういったマナーも分からない。

「そうですねえ。好みも人それぞれですし…」

イガさんが頭を悩ませる。

「ジルさんは、何がお好きなんでしょう」

「好きなもの、かあ。司令官の私生活に関しては何も知らないからなあ」

「仕事一筋で謎めいているお方、という印象が強いので、正直なんとも…」

やはりジルさんのプライベートは軍内でも謎めいているのか。
そんな気はしていたけど。

「ぶっちゃけアキオ君が贈ったものなら何でも嬉しいと思うけどね」

「それは一理ありますね。とにかく市場に行きましょう。物色しているうちに何か見つかるかもしれません」




3つ目の町ともなると、ワープしても体に何の違和感も感じられないほどに慣れてきた。

市場はやっぱり塩漬けの屋台が多い。
その他には、「新鮮な野菜はいかが?」と八百屋さん、「焼きたてだよー!」とパン屋さん、「目玉商品が入ったぜ!」と家具屋さん、「坊主、甘いものはどうだい?」とお菓子屋さん。

お菓子か…。お菓子でも良いかも。
元の世界ではお歳暮とか手土産にお菓子は定番だったし、お世話になっています、いつもありがとう、といった感謝のメッセージがプリントされているのも見たことがある。
この世界にはそういう『ちょっとした贈り物』用みたいなのあるのかな?

「イガさん、メテさん、ここ見ても良いですか?」

「ええ、良いですよ」

「へぇ懐かしい~。ターツリーじゃん」

メテさんが懐かしいと言って手に取った袋には、薄茶色くて丸い、手のひらよりも少し大きい煎餅みたいなお菓子が入っている。

「ターツリー?」

「本当、懐かしいですね。昔は年祝いなどの特別な日に食べていました。今では普通に売られていますが、あの頃は贅沢品に感じたものです。甘くて、老若男女問わず人気があるんですよ」

ターツリーと呼ばれたそれは、よく見ると所々に気泡やひびがあって持ってみるととても軽い。
これは、日本のカルメ焼きだ。
理科の授業で作った事がある。

「ジルさん、これ好きかな」

「嫌いという人はあまり聞いた事が無いので、無難ではありますね」

うーんそうだよなあ。やっぱりそうなっちゃうんだよ。
差し障りのないものとか無難なものに落ち着きそうな予感はしていたけど、でもやっぱり贈るからにはその人のことを思って贈りたいしな…。

お菓子屋さんを物色すると、カルメ焼きやマフィンといった焼き菓子、ゼリーの様な生菓子、キャンディまで様々な種類が揃っている。

「新作もあるから好きに見てってくれよ」

屋台のご主人が威勢よく言う。

「これ、全部おじ…お兄さんが作ったのですか?」

危ない。この世界の人は見た目では年齢が分からないのだった。
青年に見えておじさん、中堅に見えて若者という事例は何度か見てきたので、言動は慎重に。
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