ある時計台の運命

丑三とき

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旅路

プレゼント大作戦③

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「おうよ!ここ最近は王都に卸すための新作を考案中でな。毎日試作し続けてようやく納品できるものが完成したってわけだ。今日はその中でも特別自信作を揃えたから、どれも間違いないぜ!」

「全部美味しそう。…あ、お兄さん、親指のところあかぎれしています」

お兄さんの手は全体的に水分を失ったようにカサついていて、ひび割れて赤くなっているところもあり辛そうだ。
毎日忙しく調理とか水仕事していたらこんな風になっちゃうのかな。今までそういう類のことを避けてきた僕には分からない。
もしかしたら、毎日僕のご飯を作ってくれていたジルさんも水仕事辛かったのかもしれない。
そういえば今朝も手がかさかさだったな。

「そうなんだよ、水仕事には手荒れがつきものだ。地味に痛ぇんだよなこれが。おっと、そうだそうだ。息子にこれを貰ってたんだ」

そう言ってお兄さんが取り出だしたるは携帯用歯磨き粉サイズくらいのチューブ。

「それは何ですか?」

「練りって言ってな?コレを塗るとカサつきが治まるんだ。若者や女性の間じゃこういった手入れが普通らしいな。俺は別に興味無かったんだが、連日の試作続きで見かねた息子が買って寄越したんだ。コレを使ってからはだいぶ楽になってきた」

つまりハンドクリームか。
お兄さんはチューブを絞って乳白色のクリームを少量手の甲に出し、モミモミと手に塗り込む。

「ほれ、この通りよ」

ご主人の手には潤いが戻り、先程の痛々しい手が健康的な血色すら取り戻したように見える。

「薬草や花の油が使われてるから、傷口も保護できて血行も良くなるんだとよ」

これだ。

「イガさん、メテさん、僕これが良いです。ジルさんにあげるの」

隊員の方たちに食事を作ったりすることもあるって言ってたし、上の立場になると書類仕事だって増える。乾燥することも多いだろう。
傷口に塗れるってのがまたいい。今後も生傷多そうだから。

「素敵です、アキオ君。司令官、きっと喜ばれると思いますよ」

「本当ですか?良いと思いますか?」

「うん!良いチョイスだと思うよ!」

2人のお墨付きも頂いた。

「お兄さん、それどこで買いましたか?」

「1区画先の屋台だ。きっぷのいいおばちゃんがやってるからすぐ分かるさ」

1区画先。
ここから10メートルほどか、すぐそこだな。


「おい菓子屋の旦那、あんた自分の屋台で他所よその宣伝してどうすんだよ、はははっっ!おもしれーヤツだな」

お兄さんが指した方を見ていると、僕たちの後ろにいたお客さんが面白そうに叫んだ。

「ああしまったなんてこった、こんなとこ見られたら連れに怒鳴られちまうぜ」

お兄さんはやっちまったとばかりに頭を抱える。

僕も僕だ。
お菓子屋さんで練り油屋の情報を聞き出すなんて失礼だった。次からは気をつけよう。
でも、これでジルさんへの贈り物は決まった。
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