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続編その②〜魔力練習編〜
27.キュートアグレッション
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「そうだ。あとね、今日嬉しいことがあったんだ」
「嬉しいこと?」
厚い胸から顔を上げて彼を見上げると、こてんと首を傾げながら聞いてきた。
「うん。夢の中にパネースさんとイザベラとウラーさんが出てきたんだ」
「おや、その三人が……」
「そう。なんか扉の隙間からこっちを覗いてて、それで僕、幸せな気持ちになって三人の笑顔を見ながら眠ったの。夢の中でも眠るなんて、本当に僕は寝坊助だよね」
フレイヤさんは微笑みながらも少し考える素振りを見せ、
「もしかすると、それは夢じゃなかったのかもしれないよ」
と言った。
「え?」
「あの三人のことだ。君のことが心配で、クールベ叔父上の言いつけを破ってこの部屋を覗きに来たんだろう」
「そうかなあ」
「ああ。おそらくイザベラあたりが発端で、パネースもああ見えて乗せられやすい性格だからね。ウラーはただの興味本位だろう」
微笑みながら三人の様子を脳内でシミュレーションするフレイヤさんは、穏やかで——。
「ふふっ」
僕は無意識に笑っていた。
「どうしたんだい、ハルオミ」
「だって、フレイヤさんはクールベさんが自分の叔父さんだって知らなかったり、ウラーさんがクールベさんの伴侶だって知らなかったり、あまり周りに興味がない感じもあったけど……やっぱり一人ひとりのことはちゃんと見てるんだなって思って」
僕は彼の胸に顔を埋めた。
「最近は特に、イザベラとパネースさんにも僕の様子を話してくれてるみたいだし」
「あの二人が君に会いたがっている様子は見ただけでわかるからね」
フレイヤさんは僕の髪を撫でた。
「イザベラには『ハルオミにあまり無理をさせないように』と釘を刺されたよ」
「そうなの?」
フレイヤさんが側仕えたちと話しているところを頻繁に見るわけじゃないけれど、こういう僕の外出禁止期間には、イザベラとパネースさんに僕の体調や様子を伝えてくれているようだ。
それは嬉しいけれど——。
「どうしたんだい、ハルオミ?」
「ううん、今すごく変なこと考えちゃったから、言わないでおく……」
脳裏に浮かんだことを振り払うように首を振ると、フレイヤさんの手が僕の両頬を包んだ。
「思ったことがあるなら言った方がいい。それに、どんなに変なことだって、君が思ったことなら聞きたい」
「………いや、違うんだ」
僕は視線を逸らした。
「フレイヤさんがイザベラとパネースさんと仲良くなればなるほど、僕は嬉しいんだけどね——なんか、前みたいな、ぼ、僕だけ、みたいなフレイヤさんも良かったなーって……思ったり、思わなかったり」
我ながら子供みたいなことを言っている。弟が生まれた長男のような、幼稚なヤキモチの焼き方。情けない。
「やっぱり、聞かなかったことにして」
「いいや、もっと言ってくれ」
彼は僕の顔を包んだまま、もっと顔を近づけてきた。
「ん? イザベラたちと話す私に、なんだい? 何と思うことがあると言ったんだい?」
「む……意地悪」
「仕方がないじゃないか。君があまりにもいじらしく口を尖らせるから、つい追求したくなるんだ」
鋭く、それでいて優しい目に見つめられたら、僕はもう彼の思う壺だ。
「やきもち、焼いたの……別にいいでしょ?」
観念して小さく呟くと、フレイヤさんの目が一瞬見開かれ——次の瞬間、彼は僕を強く抱きしめた。
「……っ、フレイヤさん?」
「ああ、ごめん」
彼の声が、少し震えていた。
「素直に認める姿が想像を遥かに超えるほど可愛くて」
「え……」
「それに嬉しいんだ」
フレイヤさんは僕の耳元で囁いた。
「君が、私に嫉妬してくれるなんて」
「だ、だって……」
僕は恥ずかしくて、彼の胸に顔を埋めた。
胸の振動から、彼の言葉が伝わってきた。
「それに、私だって小さな嫉妬をよくしているよ」
「え、そうなの?」
「ああ。例えば、君の夢に出てきたのがその三人だったこととかね」
「え……」
わ、フレイヤさんちょっと悲しそうな顔してる。
えっ、ここまで僕の話を聞いておいて、まさかの序盤に嫉妬してたの?
「えっ、かわい……」
むりむりむり、可愛すぎる。
僕の夢に出てきたのがフレイヤさんじゃなかったからやきもち妬いたの?やきもち妬きながら僕の話を聞いてたの?
……かわいいちゅーしたい。
僕が実践するよりも先に、彼は僕の顔を持ち上げて、額にキスをした。
「もう……僕がしようと思ってたのに」
「君の目が蕩けてしまいそうだったから、思わず」
「だってフレイヤさんが可愛すぎるんだもん。ねえ、約束してね?」
「約束?」
「うん。そんな可愛い感じになるの、僕の前だけにしてね。イザベラとかパネースさんとか、ウラーさんにも見せちゃダメだよ」
「私を可愛いなどと言ってくれるのはハルオミくらいだから、心配はいらないよ」
「違うよ!フレイヤさんは可愛いの!とっても!だからここの屋敷の人たちだけじゃなくて、他の地域の魔祓い師様たちとかにもダメだからね?」
「問題ないよ、他の地の魔祓い師たちとは、そうそう一緒にはならない。かなりステージの高い魔物が出た時に協力するくらいだ」
「だから、その時に可愛くならないでねって言ってるの。フレイヤさんがこんなに可愛いの知られたら、他の人にとられちゃう……」
一応言っておくと、発情期で感情がいつもより昂っている。それが故の言動であることを今一度わかってほしい。
僕だって、フレイヤさんがホイホイ誰かについていくとは全く思ってない。
でもやっぱり、こんなにかっこよくてこんなに可愛いから、最悪の中の最悪の場合も想像してしまうというものだ。
それを彼も察してくれたようで、僕が何度も何度も釘をさすと、「わかった、わかった」と言って何度も顔にキスをしてくれた。
「約束だからね?可愛くなるのは僕の前だけだからね?」
「はい。約束しますよハルオミ君」
「ふふん、よろしい」
なにごっこなのかもよく分からない遊びを終えると、僕は意気揚々と日課のマッサージの体勢に移った。
どこかのお姫様にでもなったつもりで、フレイヤさんの膝に頭をのせ、心地よい時間を楽しむのだ。
ちなみに発情期が終わって正気を取り戻すと、毎回毎回、このような言動についての羞恥と後悔から1日を始めることになるのである。
「嬉しいこと?」
厚い胸から顔を上げて彼を見上げると、こてんと首を傾げながら聞いてきた。
「うん。夢の中にパネースさんとイザベラとウラーさんが出てきたんだ」
「おや、その三人が……」
「そう。なんか扉の隙間からこっちを覗いてて、それで僕、幸せな気持ちになって三人の笑顔を見ながら眠ったの。夢の中でも眠るなんて、本当に僕は寝坊助だよね」
フレイヤさんは微笑みながらも少し考える素振りを見せ、
「もしかすると、それは夢じゃなかったのかもしれないよ」
と言った。
「え?」
「あの三人のことだ。君のことが心配で、クールベ叔父上の言いつけを破ってこの部屋を覗きに来たんだろう」
「そうかなあ」
「ああ。おそらくイザベラあたりが発端で、パネースもああ見えて乗せられやすい性格だからね。ウラーはただの興味本位だろう」
微笑みながら三人の様子を脳内でシミュレーションするフレイヤさんは、穏やかで——。
「ふふっ」
僕は無意識に笑っていた。
「どうしたんだい、ハルオミ」
「だって、フレイヤさんはクールベさんが自分の叔父さんだって知らなかったり、ウラーさんがクールベさんの伴侶だって知らなかったり、あまり周りに興味がない感じもあったけど……やっぱり一人ひとりのことはちゃんと見てるんだなって思って」
僕は彼の胸に顔を埋めた。
「最近は特に、イザベラとパネースさんにも僕の様子を話してくれてるみたいだし」
「あの二人が君に会いたがっている様子は見ただけでわかるからね」
フレイヤさんは僕の髪を撫でた。
「イザベラには『ハルオミにあまり無理をさせないように』と釘を刺されたよ」
「そうなの?」
フレイヤさんが側仕えたちと話しているところを頻繁に見るわけじゃないけれど、こういう僕の外出禁止期間には、イザベラとパネースさんに僕の体調や様子を伝えてくれているようだ。
それは嬉しいけれど——。
「どうしたんだい、ハルオミ?」
「ううん、今すごく変なこと考えちゃったから、言わないでおく……」
脳裏に浮かんだことを振り払うように首を振ると、フレイヤさんの手が僕の両頬を包んだ。
「思ったことがあるなら言った方がいい。それに、どんなに変なことだって、君が思ったことなら聞きたい」
「………いや、違うんだ」
僕は視線を逸らした。
「フレイヤさんがイザベラとパネースさんと仲良くなればなるほど、僕は嬉しいんだけどね——なんか、前みたいな、ぼ、僕だけ、みたいなフレイヤさんも良かったなーって……思ったり、思わなかったり」
我ながら子供みたいなことを言っている。弟が生まれた長男のような、幼稚なヤキモチの焼き方。情けない。
「やっぱり、聞かなかったことにして」
「いいや、もっと言ってくれ」
彼は僕の顔を包んだまま、もっと顔を近づけてきた。
「ん? イザベラたちと話す私に、なんだい? 何と思うことがあると言ったんだい?」
「む……意地悪」
「仕方がないじゃないか。君があまりにもいじらしく口を尖らせるから、つい追求したくなるんだ」
鋭く、それでいて優しい目に見つめられたら、僕はもう彼の思う壺だ。
「やきもち、焼いたの……別にいいでしょ?」
観念して小さく呟くと、フレイヤさんの目が一瞬見開かれ——次の瞬間、彼は僕を強く抱きしめた。
「……っ、フレイヤさん?」
「ああ、ごめん」
彼の声が、少し震えていた。
「素直に認める姿が想像を遥かに超えるほど可愛くて」
「え……」
「それに嬉しいんだ」
フレイヤさんは僕の耳元で囁いた。
「君が、私に嫉妬してくれるなんて」
「だ、だって……」
僕は恥ずかしくて、彼の胸に顔を埋めた。
胸の振動から、彼の言葉が伝わってきた。
「それに、私だって小さな嫉妬をよくしているよ」
「え、そうなの?」
「ああ。例えば、君の夢に出てきたのがその三人だったこととかね」
「え……」
わ、フレイヤさんちょっと悲しそうな顔してる。
えっ、ここまで僕の話を聞いておいて、まさかの序盤に嫉妬してたの?
「えっ、かわい……」
むりむりむり、可愛すぎる。
僕の夢に出てきたのがフレイヤさんじゃなかったからやきもち妬いたの?やきもち妬きながら僕の話を聞いてたの?
……かわいいちゅーしたい。
僕が実践するよりも先に、彼は僕の顔を持ち上げて、額にキスをした。
「もう……僕がしようと思ってたのに」
「君の目が蕩けてしまいそうだったから、思わず」
「だってフレイヤさんが可愛すぎるんだもん。ねえ、約束してね?」
「約束?」
「うん。そんな可愛い感じになるの、僕の前だけにしてね。イザベラとかパネースさんとか、ウラーさんにも見せちゃダメだよ」
「私を可愛いなどと言ってくれるのはハルオミくらいだから、心配はいらないよ」
「違うよ!フレイヤさんは可愛いの!とっても!だからここの屋敷の人たちだけじゃなくて、他の地域の魔祓い師様たちとかにもダメだからね?」
「問題ないよ、他の地の魔祓い師たちとは、そうそう一緒にはならない。かなりステージの高い魔物が出た時に協力するくらいだ」
「だから、その時に可愛くならないでねって言ってるの。フレイヤさんがこんなに可愛いの知られたら、他の人にとられちゃう……」
一応言っておくと、発情期で感情がいつもより昂っている。それが故の言動であることを今一度わかってほしい。
僕だって、フレイヤさんがホイホイ誰かについていくとは全く思ってない。
でもやっぱり、こんなにかっこよくてこんなに可愛いから、最悪の中の最悪の場合も想像してしまうというものだ。
それを彼も察してくれたようで、僕が何度も何度も釘をさすと、「わかった、わかった」と言って何度も顔にキスをしてくれた。
「約束だからね?可愛くなるのは僕の前だけだからね?」
「はい。約束しますよハルオミ君」
「ふふん、よろしい」
なにごっこなのかもよく分からない遊びを終えると、僕は意気揚々と日課のマッサージの体勢に移った。
どこかのお姫様にでもなったつもりで、フレイヤさんの膝に頭をのせ、心地よい時間を楽しむのだ。
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