【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

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続編その②〜魔力練習編〜

28.側仕え交流会①

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「側仕え交流会」と題したお茶会は、週に一度の恒例行事になっている。

 毎日顔を合わせているのだから、わざわざ名前をつけなくてもいいじゃないか——そんな意見もごもっともだ。

 けれど、僕が定期的に外出禁止(発情期のため)になるものだから、「ハルオミとの一秒一秒を有意義なものにするために」とイザベラが提案したことから始まった。

 それに、一応それぞれ側仕え以外の仕事もしているから、全員で長時間集まってだらだらゴロゴロできるのは、考えてみれば限られた時間なのだ。

「イザベラにしては良いこと言いますよね~」
「おい、『にしては』ってなんだ」

「そのままの意味です」

 パネースさんとイザベラのお決まりのやり取りを受け流しつつ、僕はイザベラの部屋のテーブルに並んだ香りの良いお茶を一口すすった。

 今日の「テーマ」でパネースさんが持ち寄った北の地セヴェラーのお茶は、スーッとスッキリしていて気分が良くなる。

 今日のテーマというのは、「側仕え交流会」で話すネタのこと。ちなみに今日は「マイブーム」だ。つまり、各々今ハマっているものを持ち寄る会である。

「んじゃ、次俺行くぜ」

 イザベラが得意げに取り出したのは、野球ボールくらいの大きさの黒い球だった。

「これ、先週開発したばっかの新しい爆弾!」
「ば、爆弾!?」

 僕は思わず身を引いた。

「そう! これを魔物の前で爆発させると、その魔物と同じ形になるんだ。魔物が怯んでる間の数秒、隙を作ることができる。昨日これをビェラさんが使ってくれて、めちゃくちゃ好評だった!」

 嬉しそうに話すイザベラは、いつも通り天使のようにきらきらしている。けれど、内容が物騒だ。

「……また爆弾の話、ですか」

 パネースさんが呆れたように言った。

「だって爆弾作りは俺のマイブームだし」

「マイブームというのは、自分の中でブームになっていることを言うんですよ? イザベラの爆弾作りは今に始まったことじゃないでしょう」

「なんだよ文句あんのかよ」

 唇を尖らせて拗ねてしまったイザベラを、パネースさんはため息をついて面倒くさそうにあやし出す。

「はいはいよしよし、文句などありませんよ。あなたの爆弾作りの腕前は、世界中の魔祓い師が絶賛していますからね~」

「おいやめろ撫でるなっ」

 わしゃわしゃとイザベラの金髪を掻き乱すパネースさんの手を、イザベラが必死に払いのけようとする。

「唇なんか尖らせちゃって、可愛いですねえ~」

 二人の様子があまりに可愛くて、つい僕も参加してしまった。案の定、イザベラの怒りレベルが上がる。

「おいっ、ハルオミまでやめろって」

 プンプンしながらも半分は楽しそうにしているところが、また可愛らしい。素直じゃないなあ、イザベラは。

「そんな可愛い可愛いイザベラに、僕のマイブームを施してあげよう」

「ハルオミのマイブーム?」

「そう、これ!」

 僕は細長い木の棒を取り出した。

「これは、何でしょうか?」

 パネースさんが興味深げに見つめる。

「これはね、耳掃除をする棒だよ。今、フレイヤさんと寝る前の耳マッサージにハマってて。フレイヤさんが西の地ザパットから、僕の世界で使ってるやつに似た形のを見つけてきてくれたんだ」

「……耳掃除?」

 二人が首を傾げる。

「浄化魔法で全身まとめて綺麗にするから、わざわざ耳だけ掃除なんてする必要ないけど」

 イザベラも不思議そうに覗き込んでくる。

「そう思うでしょう? 騙されたと思って、ほら、ここに寝転がって」

 僕はベッドに腰掛けて、膝をポンポンと叩いた。すると、イザベラの顔が少し赤く染まった。

「膝枕とかそんな子供っぽいこと……! まぁ、でも、ハルオミがそこまで言うならしょうがねえけど」

 ぶつぶつ呟きながら大人しく膝枕されるイザベラに、僕もパネースさんもほっこりとした気持ちで目を合わせる。

 ふわふわの金髪をかき分けると、白くて形の良い耳がちょこんと現れた。

「じゃあ、動かないでね」

「わ、わかった」

 緊張しているのか、僕のズボンをギュッと握ってくる手が可愛い。

 まずは耳かきの匙で耳の縁をなぞってみる。

「ふふっ、ハルオミ、これくすぐったいぞ」

「動いちゃダメだってイザベラ、大人しくしてて」

「わかってるけど……」

 なるべく優しく、イザベラの耳に差し込んだ。中の壁をゆっくり掻くと、イザベラが小さく声を上げた。

「おぉ……」

「どう?」

「これ、気持ちいい……」

 僕は丁寧に、イザベラの耳をかいていく。
 西の地の職人が作ったというこの耳かき棒は、先端が絶妙なカーブを描いていて、何とも言えない心地よさがある。

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