158 / 176
続編その②〜魔力練習編〜
28.側仕え交流会①
しおりを挟む「側仕え交流会」と題したお茶会は、週に一度の恒例行事になっている。
毎日顔を合わせているのだから、わざわざ名前をつけなくてもいいじゃないか——そんな意見もごもっともだ。
けれど、僕が定期的に外出禁止(発情期のため)になるものだから、「ハルオミとの一秒一秒を有意義なものにするために」とイザベラが提案したことから始まった。
それに、一応それぞれ側仕え以外の仕事もしているから、全員で長時間集まってだらだらゴロゴロできるのは、考えてみれば限られた時間なのだ。
「イザベラにしては良いこと言いますよね~」
「おい、『にしては』ってなんだ」
「そのままの意味です」
パネースさんとイザベラのお決まりのやり取りを受け流しつつ、僕はイザベラの部屋のテーブルに並んだ香りの良いお茶を一口すすった。
今日の「テーマ」でパネースさんが持ち寄った北の地のお茶は、スーッとスッキリしていて気分が良くなる。
今日のテーマというのは、「側仕え交流会」で話すネタのこと。ちなみに今日は「マイブーム」だ。つまり、各々今ハマっているものを持ち寄る会である。
「んじゃ、次俺行くぜ」
イザベラが得意げに取り出したのは、野球ボールくらいの大きさの黒い球だった。
「これ、先週開発したばっかの新しい爆弾!」
「ば、爆弾!?」
僕は思わず身を引いた。
「そう! これを魔物の前で爆発させると、その魔物と同じ形になるんだ。魔物が怯んでる間の数秒、隙を作ることができる。昨日これをビェラさんが使ってくれて、めちゃくちゃ好評だった!」
嬉しそうに話すイザベラは、いつも通り天使のようにきらきらしている。けれど、内容が物騒だ。
「……また爆弾の話、ですか」
パネースさんが呆れたように言った。
「だって爆弾作りは俺のマイブームだし」
「マイブームというのは、自分の中で一時的にブームになっていることを言うんですよ? イザベラの爆弾作りは今に始まったことじゃないでしょう」
「なんだよ文句あんのかよ」
唇を尖らせて拗ねてしまったイザベラを、パネースさんはため息をついて面倒くさそうにあやし出す。
「はいはいよしよし、文句などありませんよ。あなたの爆弾作りの腕前は、世界中の魔祓い師が絶賛していますからね~」
「おいやめろ撫でるなっ」
わしゃわしゃとイザベラの金髪を掻き乱すパネースさんの手を、イザベラが必死に払いのけようとする。
「唇なんか尖らせちゃって、可愛いですねえ~」
二人の様子があまりに可愛くて、つい僕も参加してしまった。案の定、イザベラの怒りレベルが上がる。
「おいっ、ハルオミまでやめろって」
プンプンしながらも半分は楽しそうにしているところが、また可愛らしい。素直じゃないなあ、イザベラは。
「そんな可愛い可愛いイザベラに、僕のマイブームを施してあげよう」
「ハルオミのマイブーム?」
「そう、これ!」
僕は細長い木の棒を取り出した。
「これは、何でしょうか?」
パネースさんが興味深げに見つめる。
「これはね、耳掃除をする棒だよ。今、フレイヤさんと寝る前の耳マッサージにハマってて。フレイヤさんが西の地から、僕の世界で使ってるやつに似た形のを見つけてきてくれたんだ」
「……耳掃除?」
二人が首を傾げる。
「浄化魔法で全身まとめて綺麗にするから、わざわざ耳だけ掃除なんてする必要ないけど」
イザベラも不思議そうに覗き込んでくる。
「そう思うでしょう? 騙されたと思って、ほら、ここに寝転がって」
僕はベッドに腰掛けて、膝をポンポンと叩いた。すると、イザベラの顔が少し赤く染まった。
「膝枕とかそんな子供っぽいこと……! まぁ、でも、ハルオミがそこまで言うならしょうがねえけど」
ぶつぶつ呟きながら大人しく膝枕されるイザベラに、僕もパネースさんもほっこりとした気持ちで目を合わせる。
ふわふわの金髪をかき分けると、白くて形の良い耳がちょこんと現れた。
「じゃあ、動かないでね」
「わ、わかった」
緊張しているのか、僕のズボンをギュッと握ってくる手が可愛い。
まずは耳かきの匙で耳の縁をなぞってみる。
「ふふっ、ハルオミ、これくすぐったいぞ」
「動いちゃダメだってイザベラ、大人しくしてて」
「わかってるけど……」
なるべく優しく、イザベラの耳に差し込んだ。中の壁をゆっくり掻くと、イザベラが小さく声を上げた。
「おぉ……」
「どう?」
「これ、気持ちいい……」
僕は丁寧に、イザベラの耳をかいていく。
西の地の職人が作ったというこの耳かき棒は、先端が絶妙なカーブを描いていて、何とも言えない心地よさがある。
19
あなたにおすすめの小説
拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。
おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。
✻✻✻
2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる