159 / 176
続編その②〜魔力練習編〜
29.側仕え交流会②
しおりを挟む「ハルオミ、上手だな……」
イザベラの声が、だんだんとろんとしてくる。
「そうでしょ。あのね、奥のこのあたりが気持ちいいんだよね。……どうかな?」
「ぅわ……うん、きもち……」
パネースさんがイザベラの顔を覗き込んだ。
「ふふふっ、目が蕩けてしまいそうですよイザベラ」
「だって、なんかふわふわして眠くなるんだよ、これ……」
「イザベラ、昨日もずっとお仕事してたんでしょ? ちょっとお昼寝したら? このまま寝ちゃっていいから」
「や……でも……」
返事をし切る前に、イザベラは半分夢の中へ足を踏み入れてしまったようだ。パネースさんと目を合わせて、起こさないように——静かに施術を続ける。
普段は口の悪さと悪戯っ子ぶりが目立つイザベラも、正義感が強く仕事熱心で、世界中の魔祓い師が求めるクオリティの爆弾を卸せるよう、日夜研究を続けているのを僕は知っている。
パネースさんも同じことを思っているのか、寝顔を近くで見ながら
「寝てるとこんなに天使のようなのに」
と、静かな寝息を立てるイザベラの鼻をつついている。
「ふふっ、完全に寝ちゃったねイザベラ」
「ええ」
「よいしょ……」
起こさないよう静かに、そっと枕へ寝かせる。
「ねえ、パネースさんもやってあげるからこっちに来て」
「私もいいんですか?」
「うん! 気持ちいいからやってみて欲しいんだ」
「本当ですか?では、失礼して……」
お邪魔します——と言って、僕の膝に頭を預けるパネースさん。サラサラの水色の髪は、いつ触っても手触りがいい。
「じゃあ、危ないから動かないでね」
「はい。お願いします」
パネースさんは素直に目を閉じた。
「じゃあ、始めるね」
僕は耳かき棒をそっとパネースさんの耳に滑らせる。
「……っ」
パネースさんが小さく息を呑む。
「大丈夫?」
「ええ……イザベラの言う通り、少しくすぐったいですねえ」
「慣れてくると気持ちよくなるから、我慢してね」
「はい……」
パネースさんの耳をかいていくと、イザベラよりも敏感なのか、パネースさんは時々小さく体を震わせる。
「どう?ここ、気持ちいい?」
「ええ、思った以上に……。これはくせになりそうですね」
パネースさんの頬が、少し赤く染まっている。
「良かった。耳のこの上のあたりとか揉むと、ちょっとスッキリするんだって」
「これは耳掃除というより、マッサージみたいな感じですね……ああ、とても気持ちいいです」
僕たちの中では一番お兄さんで、いつも面倒を見てくれる彼が僕の膝の上で気持ちよさそうに目を瞑る姿がたまらなくかわいい。
「なんか、修学旅行みたい」
「しゅうがくりょこ?」
聞き慣れない言葉を言うときはただでさえ舌っ足らずなのに、眠いからか、いつにも増して呂律が回ってないパネースさん。キュート。
「僕の世界ではね、学校のみんなで遠くに泊まりに行く行事があるんだ。あんまり楽しいとは思わなかったけど……もし二人みたいな友達がいたら、楽しかったのかも」
「学校ですか……私も、学校に行っているときは友達がいませんでした。イザベラが初めての友達です」
睡魔に抗いながらゆっくりとそう紡ぐパネースさんは、とても穏やかな顔をしている。
「ハルオミ君、私と、友達になってくれて……ありがとう」
「パネースさん……」
そう言って、パネースさんは呼吸を深くして、心地よい眠りへ沈んでいった。
「ふふふっ、パネースさんも寝ちゃった。二人とも天使だ……」
日本人にはない顔立ちでいつもはちょっと大人っぽく見えるけど、すーすーと寝息を立てる二人は、なんだかとっても幼く見える。
あ、いいこと思いついた。
パネースさんをゆっくりと膝からおろし、枕へと寝かせる。
「両手に花って、このことだったんだ」
すやすやと眠るイザベラとパネースさんの間に体を転がし、目を瞑る。
「僕もこのまま寝ちゃお」
ちょっとだけ。
三十分くらいしたら二人を起こせばいいや。
「あ、そうだ」
一度目を開けて、両脇からそれぞれの手を探し出し、ギュッと握る。
「手を握って寝たら、もっと幸せかも」
32
あなたにおすすめの小説
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。
おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。
✻✻✻
2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる