【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

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続編その②〜魔力練習編〜

29.側仕え交流会②

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「ハルオミ、上手だな……」

 イザベラの声が、だんだんとろんとしてくる。
「そうでしょ。あのね、奥のこのあたりが気持ちいいんだよね。……どうかな?」

「ぅわ……うん、きもち……」

 パネースさんがイザベラの顔を覗き込んだ。
「ふふふっ、目が蕩けてしまいそうですよイザベラ」

「だって、なんかふわふわして眠くなるんだよ、これ……」

「イザベラ、昨日もずっとお仕事してたんでしょ? ちょっとお昼寝したら? このまま寝ちゃっていいから」

「や……でも……」

 返事をし切る前に、イザベラは半分夢の中へ足を踏み入れてしまったようだ。パネースさんと目を合わせて、起こさないように——静かに施術を続ける。

 普段は口の悪さと悪戯っ子ぶりが目立つイザベラも、正義感が強く仕事熱心で、世界中の魔祓い師が求めるクオリティの爆弾を卸せるよう、日夜研究を続けているのを僕は知っている。

 パネースさんも同じことを思っているのか、寝顔を近くで見ながら

「寝てるとこんなに天使のようなのに」

と、静かな寝息を立てるイザベラの鼻をつついている。

「ふふっ、完全に寝ちゃったねイザベラ」

「ええ」

「よいしょ……」

 起こさないよう静かに、そっと枕へ寝かせる。

「ねえ、パネースさんもやってあげるからこっちに来て」

「私もいいんですか?」

「うん! 気持ちいいからやってみて欲しいんだ」

「本当ですか?では、失礼して……」

 お邪魔します——と言って、僕の膝に頭を預けるパネースさん。サラサラの水色の髪は、いつ触っても手触りがいい。

「じゃあ、危ないから動かないでね」

「はい。お願いします」

 パネースさんは素直に目を閉じた。
 
「じゃあ、始めるね」

 僕は耳かき棒をそっとパネースさんの耳に滑らせる。

「……っ」

 パネースさんが小さく息を呑む。

「大丈夫?」

「ええ……イザベラの言う通り、少しくすぐったいですねえ」

「慣れてくると気持ちよくなるから、我慢してね」

「はい……」

 パネースさんの耳をかいていくと、イザベラよりも敏感なのか、パネースさんは時々小さく体を震わせる。

「どう?ここ、気持ちいい?」

「ええ、思った以上に……。これはくせになりそうですね」

 パネースさんの頬が、少し赤く染まっている。

「良かった。耳のこの上のあたりとか揉むと、ちょっとスッキリするんだって」

「これは耳掃除というより、マッサージみたいな感じですね……ああ、とても気持ちいいです」

 僕たちの中では一番お兄さんで、いつも面倒を見てくれる彼が僕の膝の上で気持ちよさそうに目を瞑る姿がたまらなくかわいい。

「なんか、修学旅行みたい」

「しゅうがくりょこ?」

 聞き慣れない言葉を言うときはただでさえ舌っ足らずなのに、眠いからか、いつにも増して呂律が回ってないパネースさん。キュート。

「僕の世界ではね、学校のみんなで遠くに泊まりに行く行事があるんだ。あんまり楽しいとは思わなかったけど……もし二人みたいな友達がいたら、楽しかったのかも」

「学校ですか……私も、学校に行っているときは友達がいませんでした。イザベラが初めての友達です」

 睡魔に抗いながらゆっくりとそう紡ぐパネースさんは、とても穏やかな顔をしている。

「ハルオミ君、私と、友達になってくれて……ありがとう」

「パネースさん……」

 そう言って、パネースさんは呼吸を深くして、心地よい眠りへ沈んでいった。

「ふふふっ、パネースさんも寝ちゃった。二人とも天使だ……」

 日本人にはない顔立ちでいつもはちょっと大人っぽく見えるけど、すーすーと寝息を立てる二人は、なんだかとっても幼く見える。

 あ、いいこと思いついた。

 パネースさんをゆっくりと膝からおろし、枕へと寝かせる。

「両手に花って、このことだったんだ」

 すやすやと眠るイザベラとパネースさんの間に体を転がし、目を瞑る。

「僕もこのまま寝ちゃお」

ちょっとだけ。
三十分くらいしたら二人を起こせばいいや。

「あ、そうだ」

一度目を開けて、両脇からそれぞれの手を探し出し、ギュッと握る。

「手を握って寝たら、もっと幸せかも」


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