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東の祓魔師と側仕えの少年
4.危険な香り
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「おや、もう準備が済んでいたんだね」
さっきの銀髪の人が部屋に入ってきた。おそらくこれがフレイヤ様だろう。
寝転んだままでは失礼なので、ひとまず急いで起き上がってベッドの上で正座をしてみる。
「こんにちは。先程はお膝の上で失礼しました。えっと……フレイヤ、様?」
「こらこら。"様" なんてやめなさい。あと敬語もね」
布団に入っていないと風邪をひいてしまうだろう、と言って再び僕を寝かせる。フレイヤさんはベッドに腰掛け、僕の髪の毛を指で梳かした。
「でも……ウラーさんが、"フレイヤ様"って呼んでて」
「彼はこの屋敷の執事だ。そしてハルオミは私の側仕え。君が私を "様" などと敬う必要は無いよ。そうだ、申し遅れたね。私はフレイヤ・ヴィーホット。よろしく」
「じゃあ……うん、わかった。よろしく。
ねえフレイヤさん、執事と側仕えって、どう違う…」
「そんな事より、君あの後眠れなかったのかい? ここが消えていないままだ」
フレイヤさんは親指で僕の目の下をなぞる。
「えっと、まあ」
色々あったし。
そんなこと言えるはずもなく口篭る。
フレイヤさんは布団の端をめくってその大きな体を僕の隣へ滑り込ませた。暖かいのが体全体に広がる。
ごにょごにょとはっきりしない僕の頭を持ち上げて腕を差し込んできた。これって俗に言う腕まくらというやつかな。初めてされた。
ああ……この匂い、さっき嗅いだのと同じ匂いだ。
気持ちの良い香りにまどろんだところで、初めてフレイヤさんにぎゅっと抱き込まれていることに気がついた。
布団の中で、彼は僕の手を緩く撫でる。次第に指と指が絡み合い、肘や腰にもほんのりと温もりを感じる。
少し体が離れたかと思うと、目の前には切れ長の深い目とスッと通った鼻筋、形のいい眉、薄い唇があった。それぞれが正しい場所を自覚したように並んでひとつの美しい顔を生み出している。格式の高い美術館にでも迷い込んだようだ。
頬にいくつか小さな傷がある。勿体無い。こんなにきれいな顔を傷つけたのは誰だろう。勿体無いから撫でておこう。
目の下のクマもまだ消えてない。ここも撫でておこう……
「もっと、触れておくれハルオミ」
フレイヤさんは僕の手に擦り寄る。
「こう?」
頬を撫で、鼻や瞼も指でなぞってみた。
「ああ、とても心地いい」
フレイヤさんはまた近づいて来て、次は僕を撫でる。頭のてっぺんから、おでこ、眉、耳。
触れられた場所からまた甘い匂いが溶け出る。
「人を寝かしつけたことなど無いから、どうすればいいのか分からないな。ハルオミはどこを撫でられるのが気持ち良いんだい?」
寝かしつけなんてされなくても、充分眠い。すでに言葉を発することすら億劫なくらい気持ちいい。
「んー、どこ……あたま、?」
おぼつかない呂律を自覚しつつも伝えると、大きな手で頭を包まれる。
「こうかい?」
「んー、ほっぺも……」
「ハルオミの肌はなめらかだね。こんなに白くて美しいのに、目の下だけ可哀想だ」
優しい指。触れられたところがぴりぴりと敏感になって更なる熱を欲している。
だめだ。この匂いは。
心地良過ぎて、
「ハルオミ、君は一体どうしてここに来たんだい?」
最後にフレイヤさんが放った言葉を最後に、僕の記憶は途切れた。
さっきの銀髪の人が部屋に入ってきた。おそらくこれがフレイヤ様だろう。
寝転んだままでは失礼なので、ひとまず急いで起き上がってベッドの上で正座をしてみる。
「こんにちは。先程はお膝の上で失礼しました。えっと……フレイヤ、様?」
「こらこら。"様" なんてやめなさい。あと敬語もね」
布団に入っていないと風邪をひいてしまうだろう、と言って再び僕を寝かせる。フレイヤさんはベッドに腰掛け、僕の髪の毛を指で梳かした。
「でも……ウラーさんが、"フレイヤ様"って呼んでて」
「彼はこの屋敷の執事だ。そしてハルオミは私の側仕え。君が私を "様" などと敬う必要は無いよ。そうだ、申し遅れたね。私はフレイヤ・ヴィーホット。よろしく」
「じゃあ……うん、わかった。よろしく。
ねえフレイヤさん、執事と側仕えって、どう違う…」
「そんな事より、君あの後眠れなかったのかい? ここが消えていないままだ」
フレイヤさんは親指で僕の目の下をなぞる。
「えっと、まあ」
色々あったし。
そんなこと言えるはずもなく口篭る。
フレイヤさんは布団の端をめくってその大きな体を僕の隣へ滑り込ませた。暖かいのが体全体に広がる。
ごにょごにょとはっきりしない僕の頭を持ち上げて腕を差し込んできた。これって俗に言う腕まくらというやつかな。初めてされた。
ああ……この匂い、さっき嗅いだのと同じ匂いだ。
気持ちの良い香りにまどろんだところで、初めてフレイヤさんにぎゅっと抱き込まれていることに気がついた。
布団の中で、彼は僕の手を緩く撫でる。次第に指と指が絡み合い、肘や腰にもほんのりと温もりを感じる。
少し体が離れたかと思うと、目の前には切れ長の深い目とスッと通った鼻筋、形のいい眉、薄い唇があった。それぞれが正しい場所を自覚したように並んでひとつの美しい顔を生み出している。格式の高い美術館にでも迷い込んだようだ。
頬にいくつか小さな傷がある。勿体無い。こんなにきれいな顔を傷つけたのは誰だろう。勿体無いから撫でておこう。
目の下のクマもまだ消えてない。ここも撫でておこう……
「もっと、触れておくれハルオミ」
フレイヤさんは僕の手に擦り寄る。
「こう?」
頬を撫で、鼻や瞼も指でなぞってみた。
「ああ、とても心地いい」
フレイヤさんはまた近づいて来て、次は僕を撫でる。頭のてっぺんから、おでこ、眉、耳。
触れられた場所からまた甘い匂いが溶け出る。
「人を寝かしつけたことなど無いから、どうすればいいのか分からないな。ハルオミはどこを撫でられるのが気持ち良いんだい?」
寝かしつけなんてされなくても、充分眠い。すでに言葉を発することすら億劫なくらい気持ちいい。
「んー、どこ……あたま、?」
おぼつかない呂律を自覚しつつも伝えると、大きな手で頭を包まれる。
「こうかい?」
「んー、ほっぺも……」
「ハルオミの肌はなめらかだね。こんなに白くて美しいのに、目の下だけ可哀想だ」
優しい指。触れられたところがぴりぴりと敏感になって更なる熱を欲している。
だめだ。この匂いは。
心地良過ぎて、
「ハルオミ、君は一体どうしてここに来たんだい?」
最後にフレイヤさんが放った言葉を最後に、僕の記憶は途切れた。
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