【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

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東の祓魔師と側仕えの少年

36.問題をはらむ希望の光

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「驚いっ、え、驚いた驚いた……! ハルオミ君、やっぱり…!! ハル、はっ? やば!!」

クールベさんは異常なまでの興奮を見せつつ僕を観察する。先ほどフレイヤさんの傷を凝視した時みたいに穴が開くほど見つめられるので、舐められちゃう前にフレイヤさんに助けを求めた。

「フレイヤさん……」

「叔父上、ハルオミが警戒しています」

「おおっとすまんすまん。いやあ、半身はんしんが魔祓い師を癒しているところを一瞬たりとも逃さず目に焼き付けようと思ってな。すげえぜハルオミ君。君はやっぱりフレイヤの半身で間違いねえみてえだ」

「ほんとですか!」

うんうん、頷くクールベさんに何度も確認する。

本当に僕はフレイヤさんの半身ですか? 本当に彼を癒せているという事ですか? 間違いありませんか? 絶対ですか? 

 クールベさんの興奮が移ったみたいに気持ちが高揚したので、フレイヤさんに「落ち着きなさい」と嗜められた。

「俺が言うんだ間違いねえよ。長年祓魔ふつま業をサボりながら兄弟たちに迷惑をかけまくって研究に没頭し続けた俺が言うんだからな」

心配だ。だが説得力はある。

「体を交えずにその治癒力、恐ろしいな。良いもん見せてもらったぜ」

「でもクールベさん、お家壊れちゃいましたけど、どうしましょう……」

「あんなん半日ありゃまた建てられっから心配すんな。それよりよかったなお前ら、呪いを解ける可能性ってのが見えて来たぜ」

言いながらグッドサインを寄越す。

聞き間違えたのではないかと思い、クールベさんを再び質問責めにしてしまう。

「え……本当ですか? なんでですか? フレイヤさん助かるんですか? どうしたら良いですか!?」

「こらこらハルオミ、興奮するとまた気分がすぐれなくなってしまうよ」

「フレイヤさんは何でそんなに落ち着いていられるの!」

「君に怪我がなくて安心したからだ」

「そんなことより……」

「まあまあまあまあ落ち着け。喜ぶのはまだ早い。方法はあるが、問題もある」

クールベさんがいきなり真剣な顔になるので、僕もフレイヤさんも身構えた。

「端的に話す。ステージ5を取り込んだ副作用を解呪するにはそもそも、半身とつがうしか方法は無えんだ」

つがう……それはどういうことですか?」

「つまり契りを交わして生涯を共にするということだ」

「じゃあ僕それします、フレイヤさんと番う」

「待て待て待て早まるな。問題もあると言っただろ」

「確かに、番うには体を重ねる必要があるのでしたね。そして体の交わりは魔力の交わりでもある。私の魔力は呪いで…」

「それなら大丈夫だ。半身同士ならたとえどっちかの魔力が穢れててもセックスできる」

「……それは本当ですか」

フレイヤさんはびっくりした声をあげる。

一番びっくりしてんのは僕だ。

え、"番う" って、何、セックスするの? よく分からないまま「番います」なんて返事しちゃった。そりゃ元々フレイヤさんを癒すために性的な接触はするつもりだったけどさ。

いかんせん展開が突然すぎて。


「問題はそこじゃねえ、いいかよく聞け。まず前提として、異世界の半身とつがいになろうとした者はこの世界の長い歴史の中でも数例しか存在しない。そもそも半身と出会える確率がクッソ低いからな。そしてそのほんの数例のうち、俺の知る限り5割の確率で番うことに失敗している」

「失敗……」

自分の声が震えているのがわかった。
クールベさんは続ける。

「……もしかしたら、なんかこう上手くやる方法とか確率上げる方法とか存在するのかも知れねえけど、それを調べているうちに手遅れになる。フレイヤにはいつまで猶予があるかわかったもんじゃねえ。もたもたしている間に自我を失い魔物になるか、死ぬか、どっちかだ」

ぶっきらぼうながらも言葉を選んでゆっくり説明してくれる。

「考え方を変えてみりゃお前らラッキーだぜ? 半身と出会えなきゃ選択の余地なく魔物に侵されるしかねえんだ。けどすでに可能性を持っているじゃねえか」

クールベさんの言う通りだった。
考えている暇はなかった。もし番つがえなかったら、なんて考えるくらいだったら、フレイヤさんと楽しいお話をしたり一緒に美味しいものを食べたりしたい。

けど、どうしても不安に目を向けてしまう。



「とりあえず一旦屋敷に戻ったほうがいい。ハルオミ君がいるとどんどん魔物を引き寄せちまう。まあ俺としては願ったり叶ったりだけどな」 


そう話すクールベさんは少し元気が無いように見えた。

かと思えばいきなりハグをされて、「ハルオミ君! 今日はいいものを見せてくれてありがとう!!」とお礼を言われてしまった。

「こちらこそありがとうございます。少し希望が見えました」




クールベさんに言われた通りに、僕たちは屋敷に戻った。

立て続けの転移魔法で酷い気分だ。頭がぐらっとする。

イザベラとパネースさんが心配してくれたけど今はゆっくり話せそうに無い。ひとまず体調を少しでも回復しなくちゃ。

フレイヤさんがギュスター様に報告に行っている間、僕はひと足先に部屋に戻ってベッドに潜り込んだ。


——くしゃ


「……? こんな紙、ポケットに入ってたかな……」

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