59 / 176
東の祓魔師と側仕えの少年
59.久しぶりの入浴にかける思い②
しおりを挟む「フレイヤ、さん……?」
「ハルオミも?」
「え?」
いつもより心なしが声の低いフレイヤさん。
「ハルオミも、そこへ行ったことがあるのかい? その『おんせん』とか『せんとー』だとかに、行ったことがあるのかい…?」
え、なんか僕……怒られてる?
彼はいつもの柔らかい笑顔じゃなくて、冷淡な無表情で僕に問うた。こめかみには薄らであるが青筋が立っているようないないような。
「僕は、無いよ……」
「本当かい?」
あ、ちょっと表情和らいだ。
「あ待って。でも小学校の時、修学旅行で入ったような気がする……泊まった旅館が大浴場だったから」
「ショーガッコー……?」
わ、また怖い顔になった。わからない単語が出て混乱しているのだろうか。いずれにせよちょっと怖い表情のフレイヤさんは珍しくて、みんながフレイヤさんを「冷淡」だと言う所以はこの表情なのだなと納得さえする。
「しょ、小学校っていうのはね、6歳から12歳くらいまでの子供が通う学校のことだよ」
説明すると、彼は数秒無表情のまま何かを考え込んで、はぁ、とひとつため息を吐いた。
「子供だから良いというわけではないが、そうか。子供の時か……まあ、それなら」
「フレイヤさん?」
彼は後ろから僕の肩に顔を埋めて、そのまままたため息を吐く。くすぐったい。
「ハルオミの美しい身体が公衆の面前に晒されたかと思うと、いくら子供であっても少し複雑な気分だ」
落ち込んでいるような、妬んでいる自分を責めているような声色で言うもんだから、僕は少しおかしくなってしまった。
「……ふふっ」
「ハルオミ……? 何かおかしかったかい?」
「だって、フレイヤさんいつも涼しい顔して余裕そうだから。ふふふっ、複雑な気分、とか、そんなこと言うんだと思って意外でっ」
後ろから思い切り抱きしめられ言葉が途切れてしまった。
しかし公衆の面前では無いにしろ、ウラーさんやイザベラやパネースさんの面前には裸体(どころじゃ無い失態)を晒してしまった。そのことに今更罪悪感が芽生える。
でも側仕え界隈ではそういうのもおそらく一般的なんだよね……。
そうういことを考え出したら、僕も少し複雑な気分になっていた。
「私が余裕そうに見えるかい?」
いつかの思い出に思考を巡らせていると、フレイヤさんが一層低い声でそう囁いた。
「み、みえる……」
「そうか。君の前では格好をつけたいから、無意識にそう振る舞っていたのかもしれないね」
「フレイヤさん、格好つけてるの?」
「ああ、そうだよ」
「どうして?」
「ハルオミにずっと愛してもらいたいからに決まっているじゃないか」
ドクッ——
彼が喋るたびに心臓が高鳴る。
余裕がないと言いながらも、やっぱりフレイヤさんの男前なお顔は爽やかだ。
お顔は爽やかだけど……
「フレイヤさん……当た、ってる……」
「………おや……」
53
あなたにおすすめの小説
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。
おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。
✻✻✻
2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる