【完結】眠れぬ異界の少年、祓魔師の愛に微睡む

丑三とき

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東の祓魔師と側仕えの少年

59.久しぶりの入浴にかける思い②

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「フレイヤ、さん……?」

「ハルオミも?」

「え?」

いつもより心なしが声の低いフレイヤさん。

「ハルオミも、そこへ行ったことがあるのかい?  その『おんせん』とか『せんとー』だとかに、行ったことがあるのかい…?」

え、なんか僕……怒られてる?

彼はいつもの柔らかい笑顔じゃなくて、冷淡な無表情で僕に問うた。こめかみには薄らであるが青筋が立っているようないないような。

「僕は、無いよ……」

「本当かい?」

あ、ちょっと表情和らいだ。

「あ待って。でも小学校の時、修学旅行で入ったような気がする……泊まった旅館が大浴場だったから」

「ショーガッコー……?」

わ、また怖い顔になった。わからない単語が出て混乱しているのだろうか。いずれにせよちょっと怖い表情のフレイヤさんは珍しくて、みんながフレイヤさんを「冷淡」だと言う所以はこの表情なのだなと納得さえする。

「しょ、小学校っていうのはね、6歳から12歳くらいまでの子供が通う学校のことだよ」

説明すると、彼は数秒無表情のまま何かを考え込んで、はぁ、とひとつため息を吐いた。

「子供だから良いというわけではないが、そうか。子供の時か……まあ、それなら」

「フレイヤさん?」

彼は後ろから僕の肩に顔を埋めて、そのまままたため息を吐く。くすぐったい。

「ハルオミの美しい身体が公衆の面前に晒されたかと思うと、いくら子供であっても少し複雑な気分だ」

落ち込んでいるような、妬んでいる自分を責めているような声色で言うもんだから、僕は少しおかしくなってしまった。

「……ふふっ」

「ハルオミ……?  何かおかしかったかい?」

「だって、フレイヤさんいつも涼しい顔して余裕そうだから。ふふふっ、複雑な気分、とか、そんなこと言うんだと思って意外でっ」

後ろから思い切り抱きしめられ言葉が途切れてしまった。


しかし公衆の面前では無いにしろ、ウラーさんやイザベラやパネースさんの面前には裸体(どころじゃ無い失態)を晒してしまった。そのことに今更罪悪感が芽生える。
でも側仕え界隈ではもおそらく一般的なんだよね……。

そうういことを考え出したら、僕も少し複雑な気分になっていた。


「私が余裕そうに見えるかい?」

いつかの思い出に思考を巡らせていると、フレイヤさんが一層低い声でそう囁いた。

「み、みえる……」

「そうか。君の前では格好をつけたいから、無意識にそう振る舞っていたのかもしれないね」

「フレイヤさん、格好つけてるの?」

「ああ、そうだよ」

「どうして?」

「ハルオミにずっと愛してもらいたいからに決まっているじゃないか」

ドクッ——

彼が喋るたびに心臓が高鳴る。
余裕がないと言いながらも、やっぱりフレイヤさんの男前なお顔は爽やかだ。

お顔は爽やかだけど……

「フレイヤさん……当た、ってる……」

「………おや……」




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