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東の祓魔師と側仕えの少年
79.苦痛からの解放
しおりを挟む寝る準備を終えてベッドに潜り込み、明かりを消してフレイヤさんとの時間を楽しむ。この眠るまでの微睡んだ空間が好きだ。
ちなみに、彼を癒すための夜伽は2週に一度、多くても1週間に一度という制限が設けられてしまった。なぜなら魔力制御の練習中は疲労が溜まるからだ。疲れてもフレイヤさんから魔力を貰ったら元気になるのだけど、彼もまた討伐の影響で疲れているため安易にそれはできない。
魔祓い師は魔物を討伐する過程において「取り込む」という作業が必要で、一時的にでも魔物を取り込んだことによりその副作用として悪夢や幻覚や憎悪感や全身の痛みなど、あらゆる苦痛を受ける。これを癒す唯一の術が「側仕えとの性的接触」だ。
けれど僕たちには「番パワー」が存在するので、性行為をしなくてもお互いに触れているだけでフレイヤさんの討伐の影響はきちんと癒えるし、僕も精神的にすごく落ち着く。
彼は今まで人よりも感受性が低かったためか、魔物討伐の影響は受けづらかったと聞く。
しかし、討伐に復帰してからの彼は見るからに顔色が悪かったり、調子がすぐれなかったりするのを気合いで誤魔化して、僕には柔らかく穏やかに振る舞っている。
彼に心や感性が芽生えた証拠だから嬉しくはあるけど、でも辛そうな顔は痛々しい。
だから僕は帰ってきた彼になるべくすぐに触れて少しでも癒すのだ。
でもそれだけじゃフレイヤさんの全ての苦痛は除けない。だからこの寝る前の時間というのは、僕たちにとってとても大切な時間だった。
ちなみに今日のフレイヤさんは甘えん坊モード。
いつもは僕を腕の中に収めて色んなところを撫でてきたり色んなところに口付けしたりするけれど、今日は僕の腰に手を回して首元に顔を埋めてきて、吐息がちょっとくすぐったい。
僕はフレイヤさんの背中や頭をポンポン叩いて、彼の苦痛が和らぎますようにと祈りを込める。こうしているだけで眠たくなって、僕はいつも先に夜へと堕ちるのだ。
「フレイヤさんの髪の毛、今日もさらさらだね……」
「…………スゥ……」
「………あ、寝てる」
何と珍しい。今日は彼が先に眠ってしまった。
フレイヤさんの眠っているところなんてあまり見ないので嬉しくなって、少し身を離して彼の寝顔を観察する。
閉じられたまぶたを縁取る長いまつ毛は、暗闇でも銀色に輝いているのがかすかにわかる。綺麗な肌に這わせた指は吸い付いて離れたがらない。
この穏やかな顔、ずっと見ていられる。
すべすべ触っていると、眉間に皺が寄って美しい顔が歪んだ。息も少し詰まっている。
僕はすぐに彼を腕の中に抱きしめて頭をゆっくりと優しく撫でる。彼が今悪夢を見ているのだと分かる。
少しでも和らぐように、ゆっくりと優しく落ち着けるように撫でる。
しばらくそうしていると、呼吸も落ち着き安らかな表情に戻った。彼の瞼、頬、そして最後に唇に口付けをして、僕も夢の中に旅立った。
◆◆おまけ◆◆
翌朝、パチっと目を覚ますと、目の前に既に目覚めたフレイヤさんのアップがあった。
「わわわっ、…ん、おはよ、フレイヤさん」
眠い目を擦りながら挨拶をする。
フレイヤさんはもうしっかりと眠りから覚めきっているようだった。
「おはようハルオミ」
「ん~~、もうおきてたの。まだいつもより早いんじゃない?」
よく辺りを見ると、まだ朝日が登り切っていなかった。
「今日は私は目覚めが良くてね。1時間ほど前に起きてずっと君の寝顔を見ていた」
「な"っ、1時間も!? よく飽きないね」
「君の顔を見て飽きるなんてあり得ないよ。ところでハルオミ、君は昨日、眠っている私に口付けをしたかい?」
「!? は、え、な、なんで?」
一気に目が覚めた。
バレた? やだ、なんか恥ずかしいし何より後ろめたい……
「とても心地よい夢を見たんだ。君に優しく包み込まれて、口付けを施される夢をね。しかし、あれはもしや夢ではなかったのでは無いかと今…」
「ゆ、夢じゃない? 僕、ぐっすり眠ってたもの」
「そうか、なら私はとても良い夢を見れたのだね。実は昨日は調子がすぐれなかったのか、すぐに眠ってしまったんだ。それからしばらくは胸糞の悪い悪夢を見ていたような気がするのだけど、君の夢を見たら途端に幸せな気持ちになった」
「そっか…良かった」
「さて、朝はまだ早い。もう少しだけ眠ろうハルオミ」
「うん、そうだね」
彼はいつものようにぎゅっと僕を腕に抱き込み、僕たちは気持ちの良い二度寝の世界に誘われた。
それにしてもフレイヤさん、完全に夢だと信じ込んでたな。ふふふ。こりゃあいい。夢と称してこれからフレイヤさんにいろんなことできるやもしれん。
僕の妄想はふくふくと膨らむのであった。
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